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レイチェルは、編集者と原稿のチェックをしていた。 「今回は、このお話は出版するのは難しいんじゃないかと・・」 「あら、どうして?」 レイチェルの眉尻が上がった。 今回の話は、孤独だった王子様が幾多の困難を乗り越えて愛する人と結ばれるというロマンチックなラブストーリーなのだが。 「それが・・この作品に登場する“王子様”は、あのマイヤーリンクでお亡くなりになられた方では・・」 レイチェルの若い頃から懇意にしている編集者はそう言って唸った。 「ええ、そうよ。それがどうかして?」 「今、サラエボであの事件が起きてから、皆いつ戦争が起こるのではないだろうかとピリピリしています。 レイチェルは彼の言いたいことがわかった。 「・・そうね。この作品の出版は見送りましょう。残念だけど。」 「私もです。」 編集者が帰ると、レイチェルは深いため息をついた。 その時、エントランスホールに来客を知らせる鈴の音が鳴り響いた。 「どなた?」 メイドのエミリーがそう言ってドアを開けると、そこには息を切らしたボリニュイが立っていた。 「あの、レディ・レイチェルはご在宅でしょうか?」 「レイチェル様はご気分がすぐれないとおっしゃられて、休んでおります。」 「エミリー、誰なの?」 レイチェルはそう言って、エントランスホールに行った。 「ボリニュイさん、またいらしたのね。今日はどんなご用かしら?」 「実は、あなたに確かめたいことがありまして・・」 Novel&Message by 千菊丸さん |