Promise you

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作:翠さん


 とくん、とくん、とくん。

 あたしを呼ぶ声が聞こえる。

 とくん、とくん、とくん。

 耳の中で響く鼓動。それと同じ数だけ、誰かがあたしを呼んでいる。
 歌うように、言葉を紡いでいる。

『自由になりたい?』

 声は囁く――あたしを誘うように。

『自由になりたい?
 何もかも、捨てて。自由になりたい?』

 言われて、気付く。
 体が重いことに。瞼が開かないことに。手足が動かないことに。
 だから、あたしは。
 ええ、と頷いた。

『そう――じゃあ、叶えてあげる』

 声は言った。

『自由を返してあげる。
 だから、選んで――貴方の道を』

 言葉の最後は、突然溢れた光の中に消えた。










 初めに見えたのは、真っ白な天井だった。
 次第に、霞んでいた視界がクリアになる。あたしは、ゆっくりと瞳を巡らせた。
 どうやら広い部屋のようだ。天井だけでなく壁も真っ白で、眩しいくらい。大きな窓からは降り注 ぐ陽光と爽やかな風が入って、薄いレースのカーテンを揺らしている。
「……リナ、さん?」
 傍らから、控えめに声を掛けられて、ハッとする。
 首を巡らせると、何人かの男女が、心配そうにあたしを覗き込んでいた。
「……あ……?」
「あ、まだ無理しないで下さい。
 リナさん、突然意識を失って――目を覚まさないから、心配していたんです」
 少女がにこりと微笑む。愛らしい笑顔だった。
「どこか、痛むところはありますか? 倒れる寸前にガウリイさんが受け止めてくれたから、怪我は ない筈なんですが……」
 言われて、まだぼんやりしたまま、それでも自分の様子を探る。
 痛むところ……ない。気持ち悪くも……ない。お腹も減ってない。
 それどころか、妙にスッキリしているような気がする。
 頭を起こすと、彼女はするりと手を差し伸べてきた。それをやんわりと仕草だけで断りながら。
 あたしは、あたしを取り囲む三人の人間を、ゆっくりと見渡し。
「……貴方達……、誰?」
 あたしにとっては至極当然の問いかけは、彼らを酷く狼狽させた。






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