陰陽師・土御門有輝

第7話:運命の夜


作:千菊丸さん
ある日の夜。
土御門邸は、膳を囲みながら、一家団らんの時を過ごしていた。
有匡は、職場の帰り道から、不穏な雰囲気を感じていたが、気にしなかった。
食後、有匡は有輝を呼び出した。
「お前に話がある。」
「何のこと?」
「もし、これから家族がバラバラになったら・・お前が母さんと妹たちを守るんだ。たとえ私がいなくなっても・・」
「何言ってるの父さん!縁起の悪いこと言わないで!!」
有輝が叫ぶと、有匡は自分の口に人差し指を立てた。
「仕事の帰りに、人の気配を感じた。多分足利の手の者だ。」
「足利?なんで父さんが足利に?」
有匡は、目を閉じて、真実をうち明けた。
「有輝・・実は私はかつて、鎌倉幕府専属の陰陽師だったんだ。」
これまで有匡は貴族などのお抱え陰陽師だと思っていた有輝は、目を丸くした。
「父さんが・・鎌倉幕府専属の陰陽師・・」
「ああ、私は今は亡き北条高時執権の専属の陰陽師だった・・私は鎌倉幕府の内密な事を知っている・・これまで表沙汰にしなかった、陰謀のことまで・・。足利は、私を殺そうとしている。幕府側の人間を狩ろうと躍起になっている今、やつらを揺るがす存在である私の居所を掴んだ・・じき、やつらがここに来るだろう・・私を捕らえに・・」
「父さん・・」
有匡は、懐から死返球(まかるがえしのたま)を取り出し、有輝に手渡した。
「これは土御門家の当主の証・・お前の祖父も、これを受け継いだ。これを私と思って・・」
「嫌だ、そんなこと言わないで!やめてってば!」
「有輝!」
有匡は逃げようとする有輝を抱きしめた。
「いままでお前に厳しく接してきたのは、私亡き後、お前が母さんと妹たちを守れるように、強くなれるようにするためだった・・けれど、お前には随分寂しい思いをさせた・・悪かった・・」
「父さん・・」
有輝は涙を流した。
「僕、父さんのこと大好きだよ。この前、ひどいこと言ってごめん・・」
「いや、いいよ。」
有輝は有匡から死返球を受け取った。
「有輝、私はお前のことを誰よりも思って、愛してる。どんなに離れていても、お前のことだけを考えているから・・」
その時、足利の兵がやって来た。何人かは土御門家に雇われた僧兵だ。
「土御門有匡だな。」
足利の兵は、そう言うと有匡を連行した。
「父さん!」
有輝は有匡の手を強く握った。
「有輝!母さん達を守るんだ!琥龍には知らせておいたから、早く母さん達を連れて唐土へ逃げろ!」
有匡と有輝は無理矢理引き離された。
やがて有匡と足利の兵は見えなくなった。
「父さん、父さんー!!」
有輝の叫びが、闇の中に空しく響いた。









運命の夜が訪れ、有匡と有輝は引き離される。
有匡は胸の内を、有輝にうち明ける。
父の自分に対する深い愛を知る有輝・・だが父子には悲しい別れが待っていた。
幸せな日々から、悲しい別れが、一家に訪れる・・。
泰成と有匡さんが再会する場面を書いてみたいと思います。

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