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ある日の夜。 土御門邸は、膳を囲みながら、一家団らんの時を過ごしていた。 有匡は、職場の帰り道から、不穏な雰囲気を感じていたが、気にしなかった。 食後、有匡は有輝を呼び出した。 「お前に話がある。」 「何のこと?」 「もし、これから家族がバラバラになったら・・お前が母さんと妹たちを守るんだ。たとえ私がいなくなっても・・」 「何言ってるの父さん!縁起の悪いこと言わないで!!」 有輝が叫ぶと、有匡は自分の口に人差し指を立てた。 「仕事の帰りに、人の気配を感じた。多分足利の手の者だ。」 「足利?なんで父さんが足利に?」 有匡は、目を閉じて、真実をうち明けた。 「有輝・・実は私はかつて、鎌倉幕府専属の陰陽師だったんだ。」 これまで有匡は貴族などのお抱え陰陽師だと思っていた有輝は、目を丸くした。 「父さんが・・鎌倉幕府専属の陰陽師・・」 「ああ、私は今は亡き北条高時執権の専属の陰陽師だった・・私は鎌倉幕府の内密な事を知っている・・これまで表沙汰にしなかった、陰謀のことまで・・。足利は、私を殺そうとしている。幕府側の人間を狩ろうと躍起になっている今、やつらを揺るがす存在である私の居所を掴んだ・・じき、やつらがここに来るだろう・・私を捕らえに・・」 「父さん・・」 有匡は、懐から死返球(まかるがえしのたま)を取り出し、有輝に手渡した。 「これは土御門家の当主の証・・お前の祖父も、これを受け継いだ。これを私と思って・・」 「嫌だ、そんなこと言わないで!やめてってば!」 「有輝!」 有匡は逃げようとする有輝を抱きしめた。 「いままでお前に厳しく接してきたのは、私亡き後、お前が母さんと妹たちを守れるように、強くなれるようにするためだった・・けれど、お前には随分寂しい思いをさせた・・悪かった・・」 「父さん・・」 有輝は涙を流した。 「僕、父さんのこと大好きだよ。この前、ひどいこと言ってごめん・・」 「いや、いいよ。」 有輝は有匡から死返球を受け取った。 「有輝、私はお前のことを誰よりも思って、愛してる。どんなに離れていても、お前のことだけを考えているから・・」 その時、足利の兵がやって来た。何人かは土御門家に雇われた僧兵だ。 「土御門有匡だな。」 足利の兵は、そう言うと有匡を連行した。 「父さん!」 有輝は有匡の手を強く握った。 「有輝!母さん達を守るんだ!琥龍には知らせておいたから、早く母さん達を連れて唐土へ逃げろ!」 有匡と有輝は無理矢理引き離された。 やがて有匡と足利の兵は見えなくなった。 「父さん、父さんー!!」 有輝の叫びが、闇の中に空しく響いた。 運命の夜が訪れ、有匡と有輝は引き離される。 有匡は胸の内を、有輝にうち明ける。 父の自分に対する深い愛を知る有輝・・だが父子には悲しい別れが待っていた。 幸せな日々から、悲しい別れが、一家に訪れる・・。 泰成と有匡さんが再会する場面を書いてみたいと思います。 |