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有輝は文観父子に憐れみを持っていることを恥じていた。 悪人に同情するなど。 あいつらが今まで自分にしてきた仕打ちを思い出せ。 母の死。 子どもを流産し、自分たちを守ろうとして胸に数本の矢を受けた優しい母。 雅和の死。 路頭に迷っていた自分たちを我が子と分け隔てなく育て、父のように慕っていた雅和。 自分の背中で徐々に呼吸がなくなっていく師の温もりを感じながら、涙した。 琴弥。 自分の従兄弟達であり、望まれぬ子として育った琴弥。 だが、悪人。 有輝は眠れぬ夜を幾日も過ごした。 琴弥に同情なんかしない。 「眠れないのか?」 ある夜、有匡が有輝の様子を見に来た。 「有輝、琴弥に同情しているのか。」 「どうして知ってるの?」 有匡は有輝の心を見透かしていた。 「悪人に同情なんかしちゃいけないのに、おかしいよね・・」 そう言うと、有輝は身を丸めた。 「琴弥は、陰謀のためだけに生まれ、陰謀のためだけに死んだ・・哀れな人生だ。」 有匡はそう言うと、考え込んだ顔をした。 「琴弥が我が家に来ていたら、あいつの運命は変わっていただろうな。」 琴弥は憎しみの中でしか育たなかった。 愛や家族の団らんなど、知らずに育ち、憎しみに満ちた人間に成長してしまった。 「母さんと雅和様はあいつらに殺された。あんな奴等、地獄に堕ちればいい、て思ってた。」 「有輝。」 そう言うと、有匡は手を握った。 「よく頑張ったな・・私がいない間、お前達にどれほどの苦労をかけたことか・・」 有匡は涙ぐんで有輝を抱きしめた。 「父さん、僕は信じてたよ。いつか父さんが助けてくれると。」 幼い日。 有輝は父がいつか自分を助けてくれると。 Novel&Message by 千菊丸さん |