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有輝の証言が始まった。 「お前は1年前、中宮様を呪殺をした容疑で、そなたの師である安倍雅和とともに伊豆に流された。 だがお前達の罪は先の者の証言により、中宮を呪殺したのは文観親子だという。お前の口から全ての真相を聞かせろ。」 「はい。先に証言した者は私の従兄に当たる者であり、文観親子の手足となり私と雅和様を陥れた土御門倫成でございます。倫成は私への嫉妬心ゆえに、私の文机に呪詛の札を隠し、私に罪を被せました。文観親子は、私の父である土御門有匡と敵対関係にあり、鎌倉幕府崩壊のおりに鎌倉にある我が家を襲撃し、母を殺し、父を監禁しました。琴弥は私に対して激しい憎悪を抱き、私と雅和様を陥れたのです。」 有輝はそう言うと、琴弥をにらんだ。 「恐れながら、私は有輝を憎んだりしておりません。私はただ宮中という伏魔殿において生き残りたかっただけです。中宮様を殺したのは有輝と雅和様の他にはございません。私は何もやっておりません。父も私と同意見です。」 琴弥はしらを切った。 (負けるもんか・・) 有輝の脳裏に、雅和の死が浮かんだ。 『琴弥を頼む・・』 そう言って自分の背中で息絶えた雅和。 徐々に温もりがなくなってゆく師を、肌に感じながら、有輝は涙を堪えて雅和を背負った。 「琴弥の言うことは全くのでたらめでございます、大臣様。琴弥は権謀術数に長けた文観と私の失脚を企み、私を宮中から追い出したのでございます。」 「証拠がないのに、僕を疑うなんて、いい根性してるじゃないか!!」 「証拠なら私が持っております。」 有輝が振り向くと、哉友が文を持って現れた。 「この文は、文観様が中宮様の呪詛をかけ、有輝と雅和様に罪を被せるよう指示した文でざいます。大臣様、とくとお目をお通しくだされませ。」 哉友は、文を大臣に差し出した。 文を見た大臣の表情が変わっていった。 「1時間後に結論を出す。」 哉友は、有輝に向き直った。 「ごめんよ、今まで意地悪して。俺達、正直言ってお前が羨ましかった。天性の才能に恵まれて、宮中でも帝にかわいがられて・・仲良くなりたかったのに、お前を嫉妬して、怨んでばかりいた。 雅和様にひどいことをしたから・・」 「いいよ。」 有輝はそう言うと、哉友に微笑んだ。 「倫成も、同じ気持ちなんだと思う・・」 哉友の出現により、陰謀が暴露される文観親子。 琴弥、動き出します。 Novel&Message by 千菊丸さん |