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有輝は、突然京への帰還を、朝廷から言い渡された。 理由は、伊豆の村を長年悩ませてきた井戸の異変を解決したことと、無実を着せられ死んだ彼の師・安倍雅和の名誉回復のため、証人として有輝にあの呪詛事件のことで出廷するようにとのことだった。 有輝は京に帰れることが嬉しかった。 伊豆に流されてから1年も経った。 寂れた漁村で人生を終わらすのかと毎日陰鬱な気持ちを抱えていたが、京に戻れば、父と親友、そして兄弟達と会えるのだ。 伊豆を出る日が来た。 有輝は世話になった村長に礼を言い、京へと旅立った。 京が見えてきたころ、懐かしさと嬉しさが有輝の胸に溢れた。 街道には、謀反人が京に帰還したという知らせを聞き、人々が見物に来ていた。 見物人の中に、親友の姿があった。 「おかえり。」 「ただいま。」 一瞬であったが、有輝と狼英は、そう言って互いに微笑んだ。 だが、親友の他に有輝を陥れた琴弥と文観がいるのを見て、有輝は顔をしかめた。 琴弥は有輝の前に立ちはだかった。 「良く帰ってこれたね・・」 「俺は何もしてない。」 「雅和様をあんな目に遭わせておいて、よくもそんなことが言えるね。」 琴弥はそう言って、有輝を睨んだ。 有輝は負けじとにらみ返した。 「お前こそ、ネチネチと裏工作するより、堂々と俺と勝負すればいいだろ?お前はプライドだけで成り立っているただの愚か者だ。」 「そのセリフ、誰に向かって言っているのさ!」 「俺は負けない。お前みたいなクズに、屈しない。」 「それが朝廷で通ると思っているの?」 「真実はひとつ。嘘で塗り固めたお前の化けの皮をひっぺがしてやるよ。じゃぁな。」 去ってゆく有輝を、琴弥は憎しみの籠もった目で見た。 ―追放編 完― 有輝、京に帰還する。 琴弥とのバトルがこれから始まります。 真実が明らかにされるのか? 文観親子の末路は、決して楽には終わらせませんので。 Novel&Message by 千菊丸さん |