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有輝は、検非違使に激しい拷問を加えられた。 中宮殺害をしていないと主張する有輝の言葉に、誰も耳を貸さなかった。 雅和は、有輝を救おうと奔走した。 それを知った文観は、帝に雅和が有輝と共謀し中宮崇子を殺害したと嘘を言った。 雅和邸に検非違使が来た。 「安倍雅和、謀反を企てたとして、逮捕する。」 「お前達、離せ!」 検非違使達に太刀を振るう玉響。 「玉響、これは文観の仕業だ。あいつは目障りな私たちを宮中から追い出そうとしているんだ!いいか玉響、文観に気をつけろ!」 雅和と有輝の訴えに、誰も耳を貸さなかった。 「これからお前達の処分を言い渡す。」 そう言うと役人が紙を開いた。 「安倍雅和、土御門有輝は、伊豆へ追放し、土御門有輝は、陰陽生としての資格を剥奪し、安倍雅和は、家屋敷を取り上げ、その妻玉響は、政野将成(まさなり)へと降嫁させる。」 政野将成は、中宮史子側についていた大臣の1人だ。 (おのれ文観・・どこまで汚い手を!) 伊豆へと雅和と有輝が追放される朝、狼英と華月、匡喜、そして有匡と玉響が、街道に立っていた。 雅和と有輝の姿を見ると、狼英達が飛び出していった。 「父さん、僕やってないよ!」 「わかってる、わかってる・・」 有匡はそう言うと有輝を抱きしめ、涙を流した。 「雅和、私はいつでも待っている。だから私より先に死なないで生きて・・」 そう言うと玉響は、雅和を抱きしめ、涙を流した。 「玉響、私は帰ってくる。だから文観の罪を、暴いてくれ。」 検非違使に連行された雅和と有輝は、あっという間に見えなくなった。 雅和は、ここのところ身体の調子がよくなかった。そして拷問のせいで、身体が弱って、歩く気力も残っていなかった。 「お師匠様、僕が・・」 そう言って有輝は、雅和をおぶった。 「有輝、すまない・・あのとき私が琴弥を諭していれば、今頃お前はこんな目にあわなかったはず・・」 「いいえ、僕が琴弥の様子に気づいてやれなかったんです。彼の心の闇を、僕が気づいてやれば・・」 雅和は弱々しく微笑んだ。 「有輝、玉響と、狼英を頼む・・私がいなくなっても、2人を支えてやってくれ・・そして琴弥を許してやってくれ・・あの子は根はいい子なのに、文観のせいで歪んでしまった。琴弥の目を覚ましてやってくれ、頼んだぞ・・」 そう言うと雅和はそのまま息を引き取った。 35歳だった。 「お師匠様、お師匠様!」 自分の背で息をしない雅和を見て、有輝は悲痛な叫びを上げた。 陰陽寮編 完
雅和さん、文観の陰謀によって捕らえられ、有輝君とともに伊豆へと追放される途中で亡くなる。 琴弥君のことを、もっと見てあげれば、こんなことにはならなかったと悔やんだ雅和さん。 あのとき追放よりも、もっと別の道を考えていればと。 でももう戻ることはできないから、有輝君に琴弥君のことを託したのでしょうね。 惜しい人物を亡くしてしまいました。 第2の父を亡くしてしまった有輝君、一体どうなるんでしょうか? これで陰陽寮編終わりです。 次回からは追放編です。宮中を追い出され、伊豆での生活を始めた有輝君でしたが、辛い現実が彼の前に立ちはだかっていた。 一方、文観の策により政野将成へと嫁いだ玉響は、雅和の子を宿していることに気づく。 追放編は41〜50話です。 Novel&Message by 千菊丸さん |