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有輝は今日も、仕事に励んでいた。 琴弥は有輝が持ち場を離れたのを見計らって、呪詛の札を有輝の文箱の中にしまった。 「おい、聞いたか?崇子様が帝の御子を宿したって。」 「うん、聞いてる・・お師匠様はどちら側につくの?」 「父上はどちら側にもつかない。派閥とか嫌うんだ。」 「そっか、それじゃ父さんと同じだ。」 有輝と狼英がたわいのない話をしていたところに、哉友が駆け込んできた。 「大変だ!崇子様がたった今、お亡くなりになった!」 「なんだって!」 忠之が血相を変えて崇子の居室へと走っていった。有輝と狼英、そして陰陽生達もそれに従う。 中宮崇子は、全身火膨れに苦しみながら息絶えていた。 「姫様は、朝のお食事を召し上がられるとすぐに苦しまれてそのまま・・」 そう言うと女房が泣き出した。 遺体は正視できないほど、むごたらしかった。 忠之は遺体を調べた。 「崇子様は、呪い殺されたのやも。」 中宮史子側の大臣達が帝の御子を宿した崇子を目障りに思っていることを耳に入れている忠之は、女房達に言った。 「そんな、一体誰が・・」 「かなり強力な呪詛がかけられている。これはかなりの腕前の者・・呪詛に長年携わってきた者だ。」 その時、倫成が駆け込んできた。 「陰陽頭様!有輝の文箱に、こんなものが!」 倫成の手には、崇子殺害に使った呪詛の札が握られていた。 「あなた、よくも姫様を!」 激昂した女房達が有輝に詰め寄る。 「知りません、僕は何も!」 やがて検非違使がやって来た。 「忠之様、知りません!僕は何も知りません!」 冷たい牢獄の中で、有輝はひたすら無罪を叫び続けた。 息子が中宮崇子殺害の容疑で捕まったという知らせは、有匡の耳にすぐ届いた。 「大変ですねぇ。あなた達親子は2代に渡って罪人になろうとしている・・いや、3代に渡っての間違いだったかな?」 せせら笑いながら言う文観。 「お前だな・・琴弥を使って有輝を宮中から追い出そうと・・」 「だったらどうだというんです?」 文観は、琴弥が充分に働いてくれたことに嬉しく笑い、酒を呑んだ。 有輝君が濡れ衣を。 どこまで汚い手を使うのでしょうかね、文観父子。 有輝君の運命は如何に。 |