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帝に書類を渡し、有輝は陰陽寮に戻った。 「どうした、顔色悪いぞ。」 狼英は有輝の様子がおかしいことに気づいた。 「うん、ちょっとな・・」 そう言うと、有輝は雅和の元へと行った。 「どうした?お前が仕事中に抜け出すとは・・」 有輝は雅和を見据えた。 「お師匠様、お願いがございます。」 深呼吸して、有輝は雅和に言った。 「私に、呪詛を教えてください。」 「何故、いまさらになって?」 そう言うと、雅和は扇を取り出した。 「さっき、あの男に会いました。母を殺し、父を監禁したあの男を・・私は、母の無念を晴らしたいのです。」 「馬鹿者!」 雅和はそう言うと、有輝を殴った。 「私怨で呪詛をすると、どうなるか、お前もこの世界に入って10年、それくらいわかるだろう!」 雅和は、私怨で呪詛をし、身も心も壊れていった者達を目の当たりにしてきた。 「お前があの男に復讐したい気持ちはよくわかる!お前は目の前で母を殺され、父と妹たちと引き裂かれ、どれほど辛い思いをしてきたのか、わかっている。だがな、呪詛をして全てが終わるなんて考え、今すぐに捨てろ!」 有輝は、師匠の一言で目を覚ました。そして、有匡のことを思った。 目の前で父を殺され、一族に虐げられてきた有匡は、一度も一族に、呪詛などしなかった。 それよりも、母との生活を楽しんでいた。 呪詛なんて一度も、考えていなかった。 「お師匠様・・私は、あの男とまた会うと、憎しみがわき上がるんです。母と生まれてくる妹か弟を私たちの目の前で奪ったあの男が、たまらなく憎いんです!」 そう言うと有輝は頭を抱えた。 「憎しみで壊れるな・・お前の母君は、そんなことは望んでいない・・」 雅和に呪詛を教えてくれと頼む有輝。 母を殺した文観を憎む彼に、雅和が諭す。 憎しみで心が支配されたら、やっていることが間違っていることでも、それがわからなくなるかもしれません。 最近、殺人事件が少し多いですが、原因は私怨とかが多かったり。 憎しみが心を支配したら、あとは暴走するだけです。 人の心って、恐いですね。 |