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有匡は文観の自宅に連行された。文観の自宅は贅を尽くした寝殿造りの邸で、まるで有匡に自分の裕福さを見せつけるかのようで、有匡は胃がムカムカしてきた。 「どうです、我が邸は?この庭はあなたの邸の庭を参考にしたものですよ。」 文観の気色の悪い猫撫で声を聞き、有匡は胃がさらにムカムカしてきた。邸の庭は風情や趣は何も感じられず、ただけばけばしい花々だけが植えられ、悪趣味で毒々しいものである。有匡の邸の庭は、シンプルで美のバランスが取れている、大変美しいものであった。それをこんな悪趣味な庭を見せ、お宅の邸の庭を参考に致しました、なんて言う人がいたら、誰だって気分が悪くなるだろう。 邸の中のインテリアも、けばけばしい原色の几帳、屏風などが飾ってあり、最悪だった。成金趣味もいいところだ。有匡はますます胃がムカムカし、吐く寸前であった。 「まあ、こちらにお座り下さい。」 文観はそう言うと、奥の部屋へと向かった。しばらくして、有輝と同じ年頃の男児の手を引いて現れた。 「紹介しましょう。有匡殿、あなたの甥で、琴弥ですよ。」 「はじめまして、おじうえ」 琴弥の顔を、有匡は見た。どことなしか妹の神官に似ていた。 「母親はあなたの妹御ですよ。あなたを苦しませるために、私が無理矢理彼女に産ませた。」 そう言うと文観は、琴弥を殴り始めた。琴弥は泣き叫んだ。 「おい、何をしている!」 「ストレス解消ですよ。」 そう言いながら文観は息子を殴り続ける。 「私はこの子に愛情なんか持っていない。神官殿もそうでした。あてつけにこの子の前で自害したんですから。この子は私の陰謀のために生まれた。要らない存在なんですよ。」 琴弥は父に取りすがって、泣きじゃくっている。だが、文観は息子を蹴り飛ばした。 「だからって、子どもを邪険に扱うのか?陰謀のためとはいえ、お前の血を分けた息子だろう!」 父に虐待される甥が哀れで、有匡は叫んだ。 「息子、ね。」 文観はそう言うと笑った。 「子煩悩な親となったものだ、あなたも。有輝君はあなたにとって特別な存在ー火月との間にやっとできた、待望の我が子ですものね。」 「自分の血を分けた子どもは他人の子よりもかわいい。それが親なら誰しも思うことだろう。」 「わたしにとって、琴弥は陰謀の中の一つで、この子はわたしにとって足枷しかない。」 そう言うと文観は琴弥を置いて奥の部屋へと引っ込んでいった。 「ことやはいらない子・・ことやはいらない子・・」 琴弥は部屋の隅でぶつぶつとそう繰り返した。 有匡は甥を優しく抱きしめてあげた。 このとき、琴弥は有匡を、「伯父」としててではなく、「男」として意識するようになった。 文観邸の悪趣味なインテリアを見せびらかされ、気分が悪くなった有匡さん。そして我が子を虐待して平然としている文観に、怒り心頭の有匡さん。 最近、児童虐待が相次いでいますね。「ミルクを飲まなかった」「泣きやまなかった」・・些細な理由で我が子を平然と殺す親が増えているような。ゾッとします。 私はまだ独身で子育て経験ゼロなんで、生意気なこと言えないですが。 文観はただ、有匡さんへの復讐の手段の為だけに神官との間に子どもを作った。琴弥君が可哀想ですね。いつも要らない存在だと親に毎日言われて、殴られて・・子どもは親を選べないのに・・。 琴弥君は、有匡さんに恋心を抱いてしまいましたが、それは、親にないがしろにされ、愛情に飢えてしまったからなんですね。 |