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「ねえ、ゼルガディスさん。」 「何だ。」 それは夕食後のお茶を飲んでいる時。唐突に始まった。 「男の人って、女遊びに飽きると育てる方へいくって聞いた事があるんですけど・・・。」 「・・ああ、よく言うな。」 「あれってあたし、小さい子を引き取って、小さいうちから自分好みに育てていく事だと思っていたんです。」 「それは違うな。」 ゆっくりとお茶を飲みながら、お互い淡々とした調子で話す。いつものアメリアらしくないな、と思い当たり、ゼルガディスはアメリアに顔を向けた。 「ええ、よく分かりました。別に小さい子でなくても、自分好みに染め上げていく事を『育てる』って言うんですね。」 「・・・まあ、そうだが・・・。」 どこか遠くに、ぼんやりと視線を向けたまま、アメリアは続けた。 「ガウリイさんて、実はくらげなのって、リナの前だけなんですね。」 「??」 これ又唐突に変わる話題。そろそろゼルガディスの頭の中は、クエスチョンマークだらけになってきている。 「育ちは良いし、頭の回転も悪くないし、行動力もあるし・・・。」 「・・・アメリア、何が言いたいんだ。」 我慢出来ずに聞き返すゼルガディスに、アメリアはパッと瞳を輝かせて見つめ返した。キラキラして、妙に真剣でもある。 「ゼルガディスさんは今日、合流したからまだ見てないでしょうけど、リナ、変わったんですよ!」 昨日の昼食の時、ガウリイさんがデザートの苺を食べていたら、リナってばジーっと見ているんです。前のリナだったら、無理矢理奪ったはずなのに、只ジーっと・・・。気付いたガウリイさんが、フォークに刺したままリナの口元へ差し出したら、リナったらパクッと食べたんですよ。そして、お互いを見てニッコリしたんです! これって『はい、アーン?』ですよね! それに、人ごみを歩く時、手を繋ぐんです。それもすっごく自然に! 街道や人通りの少ない道では普通に歩いているんですけど、ちょっと人ごみに入ると、すっと繋ぐんです! それから夜! 部屋の前で別れる時、ガウリイさんってば、リナのおでこにチュッ?って、お休みのキスするんです〜! なのにリナってば、ちょこっと赤くなるだけで、スリッパも呪文もなしなんですよ〜! ・・・あまりの変わりように頭の中真っ白になっちゃって、夕べは何も聞けなかったんで、今朝、ご飯の後に聞いてやろうと思ったにですよ。そしたら、食堂へ降りたらガウリイさんしかいなくて、聞いても『何もない』だけで・・・。でも、その後降りてきたリナってば、あたしとガウリイさんのほっぺにチュッ?って、おはようのキスしたんです〜! 拳を握り締め、身振り手振りで話すアメリアは、酒も飲んでないのに酔っているようだった。 そして、巻き込まれたくないとばかりに視線を逸らしているゼルガディスの手をガッシと握り、アメリアは言い募った。 「これって、恋人同士ですよね!」 「・・・アメリア・・・。」 溜め息を付きながら、やんわりとその手を解き、ゼルガディスは席を立った。 「起きたまま夢を見る癖は治した方がいい。」 「本当なんですってば!」 アメリアの声を背に、ひらひらと手を振って階段をあがる。と、その足が止まった。 追いかけて来たアメリアを手で制し、自分も食堂へと戻る。 「・・・疑ってスマン。」 仄かに朱を帯びた目元が、何を見たのか雄弁に語っていた。 「ゼルガディスさんも見たんですね。・・・よ〜し、今夜は絶対聞き出してやるわ! お休みなさい!」 ガッツポーズに鼻息も荒く、アメリアは階段を駆け上がって行った。 ゼルガディスは、もう少し時間を置こうと酒を注文しているところへ、ガウリイがやって来た。 「よう。」 「・・・アメリアが騒いでたぞ。」 「ああ、リナだろ。ようやく『当たり前』になったからな。もう少しさ。」 さらりと言い切るガウリイに、ゼルガディスは大きく溜め息を付いた。 「知能犯だな。・・・保護者はどうした。」 「・・・彼氏だろうが、旦那だろうが、男は何時だって保護者さ。ハラハラしながら、惚れた女の後を追いかけて行くしかないんだからな。」 絶句しているゼルガディスをよそに、ガウリイはグラスを置いて席を立った。 「じゃ、先に休むぜ。お休み。」 次の日の朝。『うっかり』寝過ごしたゼルガディスが朝食に遅れ、人通りの少ない街道で『つい』道に迷い、皆とはぐれたのは『偶然』な事なのかもしれない・・・。
Fin. |