「願いが一つ叶うなら」

作:牛乳パックさん


願いが一つ叶うなら
あたしは何を願うだろうか?


二年ほど前なら、いったい何を願ったろう。

おいしい物を食べること。魔力研究のいい題材が見つかること。それとも胸が大きくなることだったろうか。
あの時なら、そんなたわいのない願い事がありすぎて、結局馬鹿な願い事をしてしまう童話の主人公のようになったかもしれない。と今は思う。

一年ほど前なら、願っただろう事はわかる。

光の剣並の魔力剣が見つかること
光の剣が戻ってくることでもいいけれど、
あの剣の正体を知った今では、少しためらってしまうかもしれない。



もし願いが一つ叶うなら
あたしは、彼がずっとそばにいることを願っただろうか?

たぶんそれは願わなかった。
たとえ、心の底の、自分では見えないところで願う一番の願いだったとしても


そのことは、息をするように自然で
そこにあるものだと・・・根拠もなく、信じていたことだったから


側にいてくれるのが当たり前だと
ただ、そう思っていた。





でも一度だけ、ガウリイといることを
彼との永遠を望んだ日があった。


ミリーナが死んで、ルークが去った夜



やりきれない悲しさに、唇をかんで
這い上がる、自分でもわからない寒さに身を抱きしめた。



たぶん慰めじゃなかった。
あえて言うなら恐怖だったのかもしれない。

当たり前だと思っていた瞬間が崩れる事への



「寒いか?」

寒い、心の中が

「泣いているのか?」

泣いてない。あたしはまだ泣けないから

「そばにいてもいいか?」

そばにいて欲しい。誰よりも側に



もっと近くにいたかった
離れたくなかった
誰よりも側に、解け合うぎりぎりの近くでふれ合いたかった

お互いがここにいると、確かめたかった。




誘われるまでもなく手を伸ばし、
抱きしめられて、吐息を絡め、
肌を重ね、思いを重ね、


優しい死の瞬間をともにした。





引いた熱と気怠い体
落ちる月明かりに青く染まって


ないかもしれない明日ではなく、今が欲しかった
この瞬間を壊したくないと、訳もない切なさに胸を焦がした


あの日の思いが、近く、とても遠い





もし、・・・・・・・今願いが一つ叶うなら・・・・・・・





時を戻して欲しい

あの
二人で過ごした記憶が遠くならない、今日の風景の中に


永遠を望んだあの日の夜に

自分でも止められない切なさに、彼の腕で泣いた日に


ガウリイと出会った、あの瞬間に



もうその血潮すら冷たい、時を止めた彼
支える感覚すら、もう遠い

壊れた胸を抱えて、あたしはどこへ進んでいるのだろう。

笑って前に進むけど、もう何もかもが暗い


永遠なんて、どこにもないけど
それを、訳もなく信じられたあの時に、時を止めたいと初めて願った。




壊れきった思いをつなぎ合わせた夜
もう月も沈んだ。



<了>


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