「名前」

作:ロブさん




『名前』

其のモノを表すもの。
其のモノを指し示すもの。

他人にある特定の人を認識させるもの
呼ばれた者にとっては少なからず気になるもの

その言葉を口にされると、なんだかうれしくなるもの
その言葉をいつも読んでいて欲しいと、いつも願っているもの。



『ガウリイ』

この言葉を彼女が口にすると、オレは心が躍る。
うれしくなる。
勇気が出る。
悦びを感じる。

この言葉を彼女が口にすると、オレは切なくなる。
焦る。
胸が押しつぶされる。
戸惑う。



それでも、オレは呼ばれたい。
彼女だけには、どんな時でも。



「ガウリイ」

何だ?
これはオレの名前。
そっか、オレのことか。
『なんだ?』
そう答える。
『・・・・・・・』
何もかえってこない。


「ガウリイ」

またオレの名が呼ばれる。
『なんだ?』
『・・・・・・・・』
また返事がない。
オレは息苦しさを覚える。
どうして?
オレはここにいるのに。
オレはさっきから返事しているのに。

どうして返事してくれない?
どうして気付いてくれない?

息が出来なくなる。
もう一度オレを呼んでくれよ。
お前が呼んでくれないと、オレは息も出来なくなるんだ。
だからオレの名前を呼んで。

薄い光があたりに広がる。
それまでの息苦しさは一瞬にして吹き飛ぶ。
そして、オレの願いは叶う。

「ガウリイ」
ぼやけてはいるが、そう俺の名を呼んでくれている彼女の顔が見える。
オレを見ている、やわらかく微笑む赤い瞳。
薄い闇のヴェールに覆われた彼女は、なんだかいつもより大人びて見えた。

「・・・ん・・・なんだ?・・・どうした・・リナ・・?」

にっこりと微笑みながらリナはそう答える。
「ううん、なんでもないよ。呼んだだけ。」
そういうリナが、オレにはとてもうれしそうに見えた。

名前が呼ばれる。
なんでもない時に。
それだけでいつも聞きなれた言葉も『特別』な言葉に思える。
オレをうれしくさせる『特別』な言葉になる。

オレはリナの髪を撫でる。
オレはこの行為が堪らなく好きだった。
いつもは文句を言うリナも、今は何も言わずにオレを見つめている。
オレだけを見つめておれの名前を呼んで
うれしい。
心が温かくなる。

「そうか。『呼んだだけ』か。」

オレも呼んでみよう。
いつもとは少し違う感じがしてなんだか照れる。

「リナ」
リナを見る。
「・・・ん、なに?」
首をちょこんとかしげながらリナが答える。
「いや。ただ、呼んだだけ。」
瞳が大きく開く。
とたんに咲き乱れるように笑顔が広がる。

オレはうれしくて笑った。
リナも一緒にくすくす笑った。


こんなことで浮かれるオレって、ほんっと、安あがりだな。


『名前』
彼女を表す言葉。
口にするだけで力を与えてくれる言葉。
彼女が笑ってくれる言葉。
『単なる個体識別の為のモノじゃないか』と言われればそうだけど。
だが、それだけじゃない。
それは、絶対『特別な言葉』なんだ。



<了>

感想はロブさんまで



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