夢想
〜 破壊された世界 〜


水曜日―続いているもの

作:ナーヤさん

『ご命令どおり、連れてまいりました。』
 中にいた男は、軽くうなずいて、すぐ出るように促した。ここまで案内してきた奴は、一礼をして、そ れに従い、部屋には、男と、自分だけが取り残された。
『そなたが、星か?』
 男の問い掛けにうんざりしながら、言葉だけは丁寧に答えた。
『私の名前は星ではありません。周りの連中が勝手にそう呼んでいるだけです。』
『では、他に星と呼ばれているものは?』
『いないでしょうね。』
 他にそう呼ばれている奴がいたら、こっちが見てみたいよ。自分がそう呼ばれるのでなければ指差して 大笑いしたような呼び名だ。何故かおれ相手にそういうことをする奴はいないが。
 この呼び名は好きではない。
『では、そなたの事だろうな。』
 男、いや、失礼にならない程度にまじまじと顔を見直して、気づく。おれらの軍の将軍か。その手に 持っている紙をおれに渡そうとしているから、素直に受け取って読む。読む前から、そうじゃないかとは 思っていたんだが、あまりの内容に、おれは、もう少しで、あいつに対しての文句を端から並べ立てると ころだった。
『降伏条件はそのとおりだ。戦神はそなたを欲しがっている。』
 将軍は、じっとおれを見ている。おれの様子を窺っていた。つまり、降伏するもしないもおれの返答次 第という事か。会ったら、本人に盛大に文句を言ってやるとしよう。大体、この戦を仕掛けてきたのは、 あいつであり、降伏条件がこれという事は、つまり。
 おれは盛大にため息をついた。
『そなたがいやなら、ここから逃げ出してしまえばいい。私の命一つならともかく、私以外のものを犠牲 にしたくはない。戦を終わらせたいのも、これ以上の犠牲を出したくないというのも私の本心だが、それ もまた、本心だ。』
『私は、かまいません。この条件で、降伏なさって下さい。」
 おれのその言葉に、将軍はじっとおれを見た。おれは心中密かに将軍に同情した。よりによってあいつ はおれを縛り付けておくために、将軍を使う気らしい。あいつの戯事に巻き込まれてしまった不運さを理 解してないんだろうな。
『分かった。すまない。』
 最後のすまない、というのは、おれが犠牲になる事の謝罪だろうな。おれにはそんな犠牲精神など、こ れっぽっちも持ち合わせてなどいない。多少罪悪感を感じつつもおれは何も言わずに頭を下げた。

 目を開ける。のどが渇いている。台所に行ってコップに、冷蔵庫から取り出したジュースを入れ、飲み 干す。そのまま、部屋に戻って、また、寝入る。
「いい夢を見れますように。」

『星が、了承した。我らは降伏条件を呑む事とする。』
 将軍は使者を呼び、そう告げた。使者は恭しく一礼した。
『承知いたしました。賢明なる閣下の判断に敬意を表します。』
 将軍はそれをいやみだと思ったのだろう。苦い顔をして黙り込んだ。使者も、自分の失言に気づき、軽 く表情を変える。
 おれは二人のその様子を見て、口を開いた。こいつがこのような時に皮肉を言う性格じゃない事は知っ ている。
『閣下の判断は正しいと思います。気になさる必要はないんです。彼の言葉は単なる儀礼でしかないんで すから。』
『......わしの過剰反応だったのかもしれない。罪悪感が残ってしまうんだ。たった一人を犠牲に して、他の者の命を助けるようなものだからな。』
 実際に犠牲になる一人とは、結局おれではなく将軍ではないのか、そうは思いもしたが、さすがにそれ は口にしなかった。さて、それではおれはここからいなくなるか。とりあえず、後は将軍と使者が話し合 いをつめるだけだ。
『では、私はこれで下がってもよろしいでしょうか。』
 おれのその言葉に将軍はしばらく考えるような表情を見せた後、うなずいた。本人がいない方が良い話 し合いというものはどこにでも存在する。
 部屋を出たところで、先ほどおれをここに案内したやつに出くわした。
『承知したんだな。』
 一瞬何を聞かれているのか分からなかったが、すぐに、降伏の条件の話しだと思い当たった。
『ああ。』
 おれは一言だけ言った。他にどんな返事をすれば良いんだ。おれのために戦が起こったなどと、口が裂 けても言えねえ。っつうか、普通の奴なら起こさないだろうが、あいつは。
『......逃げてもいいんだぞ。お前の人生を束縛されるのがいやならば、逃げるのはお前の権利 だ。」
 勧めてくれるのは嬉しいし、はっきり言っちまえばそうしたい。ただし、
『そんなことをすれば、閣下に迷惑がかかる。』
 そう、戦神の性格は理解している。おれが捕えられなかったら......それをなだめられるのはお れだけだ。
『将軍様のご意志だ。逃げたいなら、逃がしてやれと、言われている。』
 おれは首を竦めた。普通は逆じゃねえのか?もっとも、おれの性格じゃあ、そんな事言われて逃げられ るかよ。いい加減、けりをつけなければならねえ。おれだって、過干渉はもうごめんだ。
『いえ、逃げません。全ては戦神にあって、決めますから。』
 おれの言った事、全てを分かったわけではないだろうが、そいつは軽く頭を下げ、歩き去った。

「あ、れ?いま、どこ?」
 目を開けたとたん、さっきまでとは違う風景に戸惑った。自分のいる場所が把握できない。目を見開い て、頭を動かし、
「ああ、あ――――」
 飛び起きた。うっわ、恥ずかしい。夢と現実の区別がついてなかった。10時。時計は無情にも、時間 を知らせる。ため息一つ。もう、1時限は終わりに近い。2時限の語学は休めない。英語。遅れても良い から出る、ではなく、遅れていくのだろう。とりあえず、寝ぼけてるんじゃないかなあと思うくらい動き がのろい体に苛立ちながらも、着替える。学校へいく支度ではなく、屋内の普段着に。そのまま、部屋を 出て、新聞をとる。読みながら、着替えを済ませ、行く支度。既に、30分に近くなっていていた。ま あ、そうだろう。妙な落ち着きに呆れながら、学校に行く。
 午後、授業ナシ。軽く、生協などを覗いてきたから、多少は遅くなったが、帰宅。
「ねむう。」
 結構、変な夢が続いているせいで、まっとうに眠れた気がしない。とても哀しい。とそんな事言ってる 場合か?今朝畳んでいかなかった布団の上に横になりながら、本を開く。適当にそこらへんにある、読み 終わったやつ。私にとって、本もマンガも扱いは同じだ。
 それでも、多少は起きていた筈だ。気づくと、自分が今、目を覚ました事に気づいた。
「......いつ眠ったんだろ。」
 全く覚えていなかった。本を読んでて、目を閉じて?まあ、いいや。そのまま、眠りに入った。昼間寝 ると、あの夢は見ないらしい。
 目を開けて時計を見る。今日はバイトのある日。こまめに時間を確認しながら、ぎりぎりまで寝て、荷 物を持って、家を飛び出した。
 帰って来た時間は遅い。昼間あれだけ寝てたのに、睡魔は容赦なく来る。それでも、お風呂に入ってか ら、寝入る事となった。







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