夢想
〜 破壊された世界 〜


同様―想ってても、解かってるとは限らない

作:ナーヤさん

「おれの選択を、怒るか?」
 ようやく逢えた嬉しさとともに、自分がやってしまった事についてどう思われているのかがわからず、 恐ろしくて、尋ねる。
「いや、怒らないさ。それに今更。済んでしまった事だろう。」
 その言葉に自分の罪を告白するかのように、おれは言い募る。
「生きて欲しいとお前は言った。生き続けて欲しいと。だがおれは、世界全てを犠牲にして、お前の後を 追った。」
 どこか不安げに、見つめる。こいつに関する事でおれが自信を持って何かをなした事はなかった。いつ も、何か不安に脅えていたような気がする。だが、どこかあきれたように笑われた。声を漏らすほどに。
「くく。」
 その反応、どうして笑われたのかがわからず、きく。
「なんだ?」
「いや。お前に連れ戻された時、戦争をおこしてまで、おれを手に入れようとしたときな、あの時言った だろ。いうとやるのとでは、大違いだと。」
 笑い声をこぼしながら、言われる。その笑顔、久しぶりに見れた笑顔を愛しく見ていた。そして思う。
  .........こいつをおれの傍においておく為になんでもやるということを、おれは自覚していた から。
 だからそう言って、実行した。だけど、その話を何の為に持ち出してきたのか、何を言われるのかがわ からず、問う。
「それで?」
「あの後な、いわれたんだよ、あいつに。」
 尋ねなくても、誰が言ったのかくらいはわかる。ただ、何を言われたのがわからず、それが気に食わな くて、自然おれは不機嫌な表情をしていた。その表情が面白いのか、さらに笑われる。
「この程度ならまだかわいいもんだって。あいつなら、いつかこの世界を犠牲にしてまでも、お前の後を 追うんじゃないか。」
 何も、言えなかった。あまりにも今の状況を指し示しているようで。驚いた後、不機嫌になる。誰だっ て、事実を指摘されるのは、気に食わない。
「だから、おれとお前が敵対できた時、安心した事は確か。お前は国として、部族の頭ではなく、王とし ての判断を、おれに執着するせいで誤る事はなかったと。おれを切り捨てる事ができるのだと。」
 そういって、笑う。何か穏やかな、その笑顔。先ほどのおかしい事を思い出したと笑っているのとは違 う。おれに負担を感じさせない為にしているのだろう。お前ひとりの罪ではないと。それはわかってい た。それでもあまりの言葉に、言わずにはいられず、呟く。どうしてこいつは、おれから離れようとする のだろう。
「......おれがお前を切り捨てる事なんて、できないんだ。」
「知ってるさ。悪かった。本当に。」
 当たり前のように、穏やかに、申し訳なさを含んだ笑顔で言われ、戸惑い、問う。
「何故、謝るんだ?」
「おれが、お前にそういう選択をさせてしまったことをさ。」
 なんて表情をしているのだろうか。どうにかして、何かを言わなければならない、そう思うのに、何を 言うべきかわからず、もどかしい。必死で言葉を捜す。...言葉以外のもので通じればいいのに。どう せここは、もう、存在しないはずの人の世界なのだから。
 ようやく見つけた言葉で、伝える。否、伝えようとする。
「.........選択した事は、後悔していない。後悔しているのは、お前を失ってしまった事だ。 他にもやりようがあったのではないかと、それが気になっていた。」
 今更なのかもしれない。それでも、ずっと感じ続けている後悔。戦の時からしていた。ためらってい た。いつものおれだったらあれだけ兵力差があれば、おれ自身の居場所を戦場にすることもなく、敵を全 滅させていた。死にもの狂いでも、命を捨ててかかってきていたとしても。星の死に目には、遭えていな かったはず。そうだったら何か変わっていたのだろうか。
 だがどうして、本気で、自分の命以上に惚れた女に対して、全力で殺そうとできるものか。命より、大 事だったのに。敵対など、したくはなかった。
 この後悔は死んでもなお、残っている。
「もう、いいさ。」
 ポツリといわれ、真っ直ぐ、見据えられた。もう、済んだ事だからと、その瞳が告げている。
「お前を愛していた。閉じ込められるのも縛られるのも、お前を縛り付けてしまうのもいやだったけど、 愛していた。すごくおれがお前に対して我が侭な事をしていたのも、わかっている。最後に、ひどく辛い 選択を、押し付けてしまった事も。だから、おれはお前の選択を責める事はない。その選択をしたせいで お前が罰を受けるというなら、おれも甘んじて受けてやる。だから、もう.........」
 今まできいた事のない言葉。初めてきいた言葉に、喜びが広がる。そして、唇が重なった。生きていた 時と同じように感じるのは、まだ、体の感覚が残っていたせいなのだろう。それと同時に、かすかなが ら、想いが流れ込んでくる。何か、おれを癒して温める感覚が。ふれあっていた唇がゆっくりと離れて いった。瞑っていた目が開かれて、おれが今まで見てきた中で、最高の笑顔が見えた。
「過去は忘れて、来世で、また逢おう。」
 誓いなのだろう。星なりの。いずれまた、星でもなく、戦神でもない、新しく生まれ変わった先の未来 で。誰か、違う名をもつ、他の者として出会う。同じ世界、同じ時代に生きて、またこいつを求めて。そ れくらいは、許されるだろう。
 その言葉がキーワードででもあったのか、目の前で、扉が開いた。星の為の扉。星は前を向き、歩き出 した。新しく、違う人間としての人生をはじめる為に。おれは、それをじっと見送った。いずれ、おれの 番がきたら、その世界で、その時代で、星に逢う。その人生の中で、一番大事な人として。その事を信じ ながら。







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