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うすぼんやりとした光の中、自分が一人であるということを感じる。なんとなくながら自分が死んでし まっているのだという事を自覚し、かすかに苦笑する。先にいくとしてももっとずっと先だと思っていた のに。意外と呆気なく人は死ぬんだよな。そう思い起こして苦く笑う。ここは死後の世界とやらなのだろ う。何にもない世界なんだな。そんな事をふと思う。こんなとこよっぽど退屈なとこだ。 「あくまで、通過地点にすぎぬ。ここは。お前が想像するようなところは、この先にある。」 虚空から声が響く。依然、おれの周りには人影もなく誰もいない。気配すら存在しないのに。... どっちにしろ、おれの存在していた世界の常識が通じるとは、思えない。そう考えながら、声のした方向 に、顔を向ける。 「死者の世界へようこそ。ここが入口。そして、審判の行われるといわれているところでもあります。」 俗に言う、審判の門。そんなようなところにおれはいるらしい。現状の確認に、笑う。 「名を告げよ。」 きかれたことに、素直に答える、こんな所で意地を張っていてもしょうがない。 「ステイル。」 「ワールド名は、何というのです?」 ワールド名? 「お前達は自分達の世界をなんとよんだ?サンサーラか?」 輪廻なんて呼ばれている世界があるのか。 「サンサーラではない。知らない。」 声は困惑が混じる。 「サンサーラではないとすると、あのステイルではないのですか。」 「単にワールド名を知らないのではないのか?」 「...それはないはずで...」 一人の女性の声が割り込まれる。 「ステイル?シンフォン族の長の娘。ウェイルの想い人。殺された部族の長達の仇のために、戦神に戦を 仕掛けて、敗れて死んでしまったステイル?」 多少、引っかかるところがないわけでもないが、おれは素直にうなずく。それを確認したのだろう。 「同名の、他の世界のもの。ちょっと私はこの人ともう一人に負い目があるの。だから、口添えをしてお きます。よろしく、お願い。」 「わかった。」 「わかりました。」 よくわからない話に、おれは困惑する。一体なんだったんだ? 「素性の確認は済んだ。それでお前は、どうしたい?」 何? 「どうしたいとは?」 「審判の門といわれているけど、ここは裁くところでは、ありません。ここから先は、二つに分かれてい ます。そのまま、ここで好きなようにいる、死堂と、また、新しく人生を行なうための、生路と。どちら を望みますか?」 まさか、そんな事をきかれようとは思っていなかったから、困惑する。どうしろというんだ。 「気にかかっている事はないか?」 何が? 「それを知ればこの先の事が決定できるような事はありませんか。」 それは... 「ここならば、何でもわかる。」 知ってしまって良いのか。死というもので、あの世界とのつながりが切れたのに、あの世界のその先を 知りたいと思う。 「おれのいた世界の未来は?」 戦神は?幸せになれたのか?一瞬、押し黙ったように、反応がなかった。そして、静かに、声は答え る。 「あなたの死後、滅びました。」 ホロンダ? 「何故?どうして?」 天変地異?何が起こった? 「戦神が、そう望んだから。星を失ったから。」 先ほど割り込んできた声が、答えた。おれは、溜息をついた。結局縛り付けてしまったってことか? 「諦めたら?何をそんなにこだわっているのか知らないけど。わかっていたんでしょう?」 どっかでもいわれたような事を言われる。おれはむっとする。何で顔も見えねえ、知りもしねえ奴にそ んな事を言われなきゃならないんだ 「関係ない。」 そういったとたんに、目の前に少女が現われる。歳はおそらく20歳前後と見ながらも、少女と認識し てしまったのは、どこか、幼いため。大人になる事を拒否している雰囲気があるからだ。ただ、表情だけ は、真剣だった。 「関係が、ないわけではない。あなたの死後、あの世界の滅びを許可したのは、私だから。それに、ずっ と見ていた。夢見人と同じように、あの世界を。」 滅びの許可?見ていた? 「何者だ?」 彼女は淡く笑う。 「あなたと一緒。かもしれないよ。自分が死んでも生きていて欲しいと誰かに言ってしまうかもしれな い。だけど、実際にやった事もなかったから。している人を見たのは、初めて。」 何てこと言いやがるんだか。しかし、この状況でけんかを売りたくなるのは、先ほど世界が滅んだとき かされたせいだろう。それが全く、自分のせいであるというのが、一番はらたつが。 だいたい笑顔で言う台詞か? 「殴っても、いいよ。」 いきなりそう来るか。そんな事言われて実際に殴れる奴がいたら、見てみたいところだ。 「どうして?」 「あなたの世界の滅びの元凶の一つであるから。私が破壊神に許可を出した。戦神が世界の滅びを望んだ ら、滅ぼして良いと。わかってる?戦神はあの世界より、他の何よりもあなたの存在の方が大事だった 事。」 「そんな事は...わかってた。」 言葉を遮る。だからこそ、縛り付けたくなくて、逃げていたのに。......それが運命なら ば.........ともにいるしかないなら...私だって、それを望まないわけでは、ないのだか ら。 「また、生きたい。新しく、刻み直したい。あの人とあれで終わるのは、嫌だ。」 「だったら、あの扉を開けて、行きなさい。」 穏やかに響く声に従い、扉を開ける。長い通路が続いている。 「その先に扉がある。そこを開ければ、転生できる。通れるのは、お前だけだ。」 声はそれきりしなくなった。彼女に見送られ、私は長い通路へ、一歩足を踏み出した。 |