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ここは、夢の世界、私がいつも見ている夢。それでも、そこは一つの'世界'として成り立っていて、 人々が存在している。私のいる世界と同じように人々は生きている。その世界が存在するためには私がこ の世界を夢としてみている事が条件となる。そういう状況だったら、夢の中の世界の住人だったら誰で も、自分が存在するために、私を夢の中に閉じ込めておくだろう。それによって願い事がかなうとなら ば、なおさら、そうするだろう。 だけど、私が夢見ていた人は、違っていた。一人は自分が愛する人が存在するために、私を夢の中に閉 じ込めた。もう一人は、自分の信じるままに、私をそこから解放した。自分の愛する人に、そんな事をし て欲しくなかったから。後者の方をエゴイストという人もいるかもしれない。でも、私は知っている。そ の人が、そしてお互いが、どれだけお互いを愛していたか、大事にしていたかを。なのに...... こんな結末は見たくなかった。こんな......... 風景がぼやけているのは、おそらく涙のせいだろう。私が今見ているのは、夢。 戦争。戦。あるいは、乱。手に手に武器をとり、馬に乗り、あるいは徒歩で、敵に近づき、倒してい く。乱戦。もはや、誰もが自分の指導者がどこにいるのかも、把握していないだろう。どうやって敵味方 を判断しているのかも、わからない。ただただ、目の前の人を倒す。やられたものは倒れ、立っているも のは次の敵を、いや、目の前の立っている者をめがけ、襲いかかる。まるで、幻のような、でたらめにも 見えた、でもおそらく、これは現実だ。この世界にとって。 私にとっては夢でしかない。これまでと違って、はっきりと、夢だった。どこか、きちんとシナリオを なぞっているようで、どこかおかしくて、矛盾のないストーリーのように見えるのに、どこか、歪んでい る。そんな、普段見るのと変わらない、夢。 そして、私は見る。あの人が、星、と呼ばれている人が、傷つきながらも、敵を打ち果たしていくの を。おそらく、一方の将であっただろうその風体はもはや、見る影もなかった。敗軍の将。そうなのだ。 この戦の敗者となるのはこの人なのだ。 そして、勝者となるのは、戦神。どのような戦にも決して負けた事がない、常勝の王。これは、内乱。 そして、最後の戦。何かが私にそう教えてくれる。決定的なものとなった戦神と星の亀裂は、そうならさ れたといってもいいのに。星は戦神に反旗を翻さざるをえず、戦神は星を討たなければならない。そう、 こんな状況でもはっきりと分かる。戦神の悲痛な表情。愛するものをうちとる羽目になった自分のこの状 況を憎みたい。でも、どうしょうもないのだと。 身体が傷ついているのは星。ある意味一方的な虐殺でもあったのだ。もともとの兵力に差がありすぎ た。それでも必死に戦って、癒せない傷が体中についた。 戦神が傷ついているのは、精神。心。体は無傷なのに。心が、砕けそうに......伝わってくるの は、痛み。 そして、戦の終わり。抵抗する者、戦う者。敗者の軍は、もはや死に絶え、星は戦神の目の前で、倒れ る。もう、手に武器を持ってはいない。それを確認するより前に、戦神は動いていた。地面に膝をつき、 星を、抱き上げる。 「ステイル、ステイル、ステイル。」 名前を呼ぶ事しかできない。そう、誰が見ても明らかだったから。星は、もう死ぬ。 「ウェイル?...ああ、本当に、......ごめんなさい。でも、.........もうさような ら。...あなたと...」 「さよならなんて許さない。一人でいく事は許さない。お前のいく世界におれもいく。」 戦神は腰につけていた短剣を引き抜く、そのまま一気に自らの身体につきたてる。 がっ 血が、流れ出す、手のひらを、そしてひじを伝って、ぽつんっと地面に落ち、染み込んでいく。 「どうして...どうして?」 うめくような声を出したのは、戦神。止めたのは、星。自らの手を差し出して、短剣を受けた。もう、 そんな体力など、残っているようには思えなかったのに。 「あなたには、生きていて欲しいから。私の、いや、おれの最後のわがままだ、聞いてくれ。お前は生き て欲しい。ここで、おれの後を追う事は許さない。ちゃんと生き続けて欲しい。」 しっかりと、戦神を見据えて、星は言う。戦神はただうなずく。星の手から抜いた短剣を投げ捨て。膝 の上の、力のない体をしっかりと抱きしめながら。 「さようなら。そして、.........愛してる。今まで、...はっきりといったのか自信がない から。......おれは、いや、私は...あなたが好きだった。愛している。だか ら、.........死んで欲しくない。...生きていて欲しい、.........あなた が、...死ぬべき時か、...この世界が滅ぶ、......その日まで。」 不思議なほど、穏やかな表情で、そういって、そのまま、星は口を閉じた。もうものも言わない。そし て、静かに、瞳が、閉じられた。 「ステイル?...ステイル?..ステイル?」 もう、何の反応も示さない。その体は、もう、人ではなく、ただの、物体でしか、なかった。 私はとびおきる。戦神の慟哭と、自らの悲鳴によって。涙は止まらない。止めようもなく、零れ落ち続 けた。 それから後、私が彼らの出てくる夢を見る事はなかった。それはとても、哀しい事。私は今でも、その 痛みをこらえている。忘れてしまえれば、楽になれるのに、忘れる事のできない、傷。 |