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今日はクリスマス。 今日のこの日には奇跡が起こると人は言う。 いつものあたしなら、そんな話は笑い飛ばすんだけど‥ でも今日は。今日だけは、そんなたわいもないお伽噺にすがるかないのよね。 奇跡‥あたしにとっての奇跡。 それはいっつもあたしの事を子供扱いしてるあいつが、あたしを大人の女として見てくれる事。 それが起こる事を信じて‥ あたしは、あいつに告白する決心をした。 だって、いつまでもあいつに子供扱いされるから、ってウジウジするなんて、このあたし、リナ=インバースには似合わないんだもの! あたしは意を決すると、ガウリイの部屋へと向かった。 ドアの前で立ち止まって、一つ大きく深呼吸をして。 さあ、ドアを叩こう、とした時。 「リナか?開いてるぞ」 ドアの中からガウリイが声を掛けてきた。 あ‥相変わらず鋭いわねー。 まあ、おかげで手間が省けるけど‥ あたしがドアを開けると、ガウリイはベッドの上に座って、あたしのほうを見ていた。 「ん?何だ、リナ。何か用なのか?」 いつものように優しい声で話しかけて来る。 そして、声に負けず劣らず、優しい瞳であたしを見つめて来る。 それは、どう考えても年頃の女性を見る目じゃなくって、年下の、被保護者を見る目‥‥ やっぱ、やめよっか‥ 思わず挫折しかけたけど。 しっかりしなさいよ、あたしっ!! 当たって砕けたって、いいって決心したじゃないのっ!! 「あ‥あのね、ガウリイ。話があるんだけど‥」 あたしはそう言いながら、部屋の中に入ると、後ろ手でドアを閉め、鍵を掛けた。 ガウリイは、そんなあたしをキョトンとした顔で見ている。 なんとなくあたしの様子がいつもと違うのには気づいているみたいなんだけど‥ きっと、あたしが何をしにここに来たのか、なんて‥分かってないわよね。 さあ! 勝負よっ!! 「あのね、ガウリイ。あたし‥あたし‥」 ううっ‥‥こんな事言わなきゃいけないなんて‥恥ずかしいよーっ!! でも言わなきゃ始まんないし。 あたしは目をつぶると、大きく息を吸い込んで、前々から言いたかった事を口にした。 「あたし、ガウリイの事が好きなのっ!!」 ‥よし、言ったっ!! 後はガウリイの反応待ちなんだけど。 ‥‥‥あれ? ガウリイったら、何も言わないわよねえ‥ 待ってても、ちっともガウリイからの返事が来ないので、恐る恐る目を開けて、ガウリイの方を見てみたら‥ ガウリイときたら、驚きのあまり、目と口を大きく開けて固まっている。 その様子からは、驚き以外の感情を見る事は出来ない。 ‥‥‥あ〜あ、やっぱダメだったか‥‥ ガウリイに女として見て欲しい、なんてのは‥やっぱり高望みだったかな‥ しょーがない。 ガウリイの側に居られるだけでもよしとすっか。 「‥‥ごめん。変な事言って‥忘れてくれる?」 それだけ言うと、あたしはクルリと回れ右をして、ドアの方に向かって歩き出した。 すると‥いきなり、誰かがあたしを後ろから抱きしめてきた。 いや、誰かったって、あたしとガウリイしかこの部屋には居ないんだけどさ‥ 首を巡らせ、後ろを見てみると。 やはりそこにあったのは、ガウリイの顔だった。 ‥‥‥うっ‥‥‥こんな至近距離でガウリイの顔を見るのは、初めてかもしんない。 しかも、なんだがガウリイのやつ‥ あたしが見た事もないよーなすっごい優しい顔してるし。 ‥‥か、顔が赤くなるぅ〜〜っ!! あたしが顔を真っ赤にしていると。 「リナ‥‥‥」 ガウリイは、それはそれは優しい笑顔を浮かべると、なんとも言えない優しい声で、あたしの名を呼んで来た。 うにゃ〜‥‥そんな顔すんな! そんな声で、あたしを呼ぶなーっ!! あんた、あたしにどないせーっちゅーのよっ!! 「リナ‥オレ、今すっごく嬉しいんだぞ」 ガウリイがあたしの耳元でいきなり囁いてきた。 え?嬉しいって? 驚いて、声のした方を見てみると。 そこには本の目の前にガウリイの顔があって。 あたしがビックリするより先に、ガウリイはあたしの唇に軽くキスしてきた。 「な! な! なななななっ!!」 何するのよ、って言いたいんだけど‥ 言葉になってくんなくって、『な』を連発していると、ガウリイはクスリと笑った。 ‥‥ええい、笑うなーっ!! そう言って、ガウリイの頭をスリッパではたいてやりたいんだけど。 あたしの両手はガウリイによってガッチリと固定されてしまっていて‥ とてもじゃないけどひっぱたく、なんて出来そうにない。 「ぐっぞー‥は〜な〜せ〜〜!」 ジタバタもがくあたしの耳元で。 「リナ‥‥愛してるぞ」 ガウリイが囁くのが聞こえた。 え? 今‥ガウリイ‥‥なんて言ったの? 驚いて振り向くと‥ガウリイはもう一度、あたしの唇にキスをすると、 「リナ‥‥愛してる」 そりゃもう、極上の笑顔でつぶやいた。 愛してる、愛してるって‥‥ガウリイが? あたしを? ‥‥‥カアアァァッ!! ガウリイの言葉をやっと理解したあたしは一気に血が顔に上昇してしまう。 ‥‥‥ううう、あたし今きっと真っ赤な顔してるんだろーなー。 恥ずかしさのあまり、うつむいてしまったあたしの耳元で、もう一度ガウリイは囁いてくれた。 「リナ‥‥愛してる」 その言葉は今度はすぅっとあたしの中に収まった。 ‥‥そっか。ガウリイ‥‥あたしの事を愛してくれてたんだ‥ 後ろからあたしをくるむように包む、ガウリイの体。 ‥‥あったかい。 ずっとこうしていたい。 ううん、ずっとこうしていて‥くれるよね?ガウリイ。 思いを込めて、後ろを見やると。 ガウリイはもう一度、あたしにキスを送ってくれたのだった。 奇跡の夜。 それはやっぱり‥あるのよね。 あたしの願いはこうして叶った。 |