メロディ
〜グラフィティシリーズ〜

作:秋月和至(おうぢ)さん

〜Haruichiパート〜

「お、おい長瀬!!」
俺は、その姿を追おうとした。
ヤバイ、なんか俺が怒らせたのかも。
しかし、こういうときの、長瀬は異常に早かった。
雨の降る校内に出たときには、長瀬の姿は校門の彼方にあった。
「しまったぁ〜。」
右手に握られたチケット。
夏休みにあるライヴのチケット。
練習が休みのヒカルに頼み込んで、TELしてもらってとったチケット。
今日渡そうと思ってた。
なんで、こう上手く行かないもんなのかねぇ。人生!! 「なに、一人世界つくってんねん。ハル。」
この関西弁わぁ!!ヒカル!!
「ひ、ヒカル!!いつからそこにいたんだ?!」
俺は、声の方向に向く。そこには、クツを履き替えるヒカルが立っていた。
「さっきから。」
「ぐっ!」
「はいはい、じゃまじゃま。俺は練習行かなあかんねん。誰かさんみたいに、レギャラーちゃうからねぇ。」
わざと、肩をぶつけて行くヒカル。
こいつが、こーゆーことするのは、単に茶化してる時だ。
「いてぇ〜。肩が外れた〜。これは、トモエに報告しとかんとなぁ〜。」
俺の痛そうに肩を押さえる演技と、下手くそな関西弁。
「下手な関西弁使うないうてるやろうが。トモエは俺のこと信用してるからなぁ。そんなんハルがいう事なんか、気にせーへんわ。」
くそ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!この、余裕はどっから来るんだよ!!
「で、私がどうかしたん?」
下駄箱の向こうから、ひょいと顔を出すトモエ。
こいつ、わざと自分の出番待ってたんじゃなかろうか?
「あかんでぇ、ハルイチ君、あんまりヒカル君のこといじめたら。」
と、ヒカルに歩み寄るトモエ。
「逆だ!!逆!!!」
俺は、ヒカルを見る。
「またまた、そんな嘘いうたってあかんでぇ。」
くそう!!トモエは、根本的に俺の事信用してねぇ〜だけじゃねぇ〜かよぉ!! まぁ、このバカップルは、ほっとこう。しかし、長瀬の事、どうしようか……。
練習あるしなぁ。
「あれ?ハル、なんや、長瀬に振られたんか?せっかく、俺とトモエで取ったチケットやのに。」
ヒカルが、意外そうな目で俺を見る。
「あ、いや、なんつーか、タイミングがだなぁ。悪かったんだよ。振られたわけじゃね〜よ!!」
俺は、慌てて否定しつつ、手を振る。
「ふ〜ん、まぁ、あんじょう頑張りやぁ。じゃぁ、俺ら練習いくから。」
と、ヒカルは、トモエとともに、クラブハウスに向けて歩いて行く。
もうちょい、親友なんだから、かまってくれよ〜。
まぁ、アイツは、自分の事は自分でなんとかしろ。
と言ってるんだろうけどな、きっと。
「さて、どうすうかなぁ。」
頭をかきながら、クラブハウスに足を向けた。
これからの事に思いを馳せながら。





「今日は快晴だぜ!!」
俺は、久々の濡れてないグランドに走り出した。
「お〜こどもが一人。」
「うるせぇ〜!!坂本!!」
「ハルちゃぁ〜ん待ってよ〜。」
「気持ち悪い声だすんじゃねぇ〜。」
「いいじゃん、俺とハルちゃんの仲じゃないかぁ〜。」
「誤解されるよ〜なこと言うんじゃねぇ〜。」
文字通り、俺とタカシは、ジャレながら、グランドを駆ける。
もうすぐ、夏の大会だからな。気合も入るってもんだ。
「山口君、そないに、気合入れとったら、すぐバテるで。」
関西弁が耳に届く。
「ジョーシマ、今日は抜いてやるぜ!!」
俺は、ビシッとジョーシマに指差す。
「あかん、あかん。
そないな事言うとってもなぁ、あんさんじゃ、わいの相手はつとまらへんわぁ。
5キロぐらでバテてるようやったら、まだまだやねぇ。」
俺の見て、フゥと、ため息で、腰に手をやる。
「じゃぁ、賭けるか?」
その言葉に、俺は思わずそう声にする。
「ええけど、何を賭けにするんや。おもんない事やったら、却下やで。」
目が、面白い物を見つけた。と言わんばかりの顔になる、ジョーシマ。
「そうやなぁ、どないしょようかなぁ。そうや、負けた方が好きな相手を白状する。これはどや。」
なっな!!
なんだってぇ?!おいおい、そりゃないだろ。
「おい!じゃぁ、俺の方が不利じゃねぇ〜か。ジョーシマは、最近転校してきたから、好きな奴なんかいるかどーかも怪しいやろ。」
俺のその言葉に。
「………………おるで。好きなオナゴわ。まぁ、知りたいんやったら、わいに勝つことやな。
まぁ、無理やとはおもうけどなぁ。山口君じゃぁなぁ。
あ、それとも、賭けやめとこかぁ?」
くそぉ!そのベタベタば関西弁を、ねじ伏せてやる!!
「じゃぁ勝負だ!!」
「お〜、ハルちゃんやる気だねぇ。じゃぁ俺が計ってやるよ。」
タカシも、面白そうに笑みを浮かべる。
やってやろうじゃねぇ〜か!!

「レディ!GO!!」
で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「同着!!」
と、タカシの声。
なんだよ、そりゃ・・・・・・・・。
ただ、平走してただけだもんなぁ。
「そうかぁ、そら残念やわぁ。」
くそ、まだ、余裕あるじゃねぇ〜か。ジョーシマ!! こっちはへばって寝てるのに。
「あんな、チームの戦術上、運動量は重要視されるねん。で、しかも攻撃的ボランチの運動量はかなり重要やねんやぁ。
でもなぁ、その、ポジションにあんさんがいるっちゅうことわやなぁ、全然機能せーへんちゅうことや。
わかるかぁ。山口君。あんさんのやることは、技術うんぬんやないねん。持久力やねん。」
ジョーシマは、真顔で言った。
あまりに図星の為に、真実を突きつけられ怒るより、ただ肯くしか俺には思いつかなかった。
しかも、俺以上に短い期間で、戦術を理解し、消化してるジョーシマに驚かされていた。
「そうだ、たしかに、俺の運動量が少ない。そのカバーに小手先の業ばっか覚えてた。
それではダメだって、わかってた。」
俺の素直な感想。
「やろ?だから、俺が教えたるよって。あんさんがつよーなれる方法を!!」
て、寝転んでる俺に手を差し伸べるジョーシマ。
「ほんとかよ。」
俺は半信半疑の顔を受けベて、ジョーシマの手を取る。
「わいは、嘘はつかへんねん。」
ジョーシマの笑み。
「期待しとくぜ。」
俺は、それを信用する事にした。
「ビシバシいくから、あんじょーきばってや。キャプテンさんから、許可ももろてるから。
容赦せーへんからなぁ。」
「ぜって〜負けねぇ!!」
この言葉はあと、1時間後に散々後悔する事になる。
そのことは、俺はまだ気づかずにいた。



いてぇ。なんで、こんなに体がいたいんだ。全身筋肉痛だ。
夕暮れが目にしみるぜ。
初日からこれかよぉ。
ひたすら同じ低負荷高回数の、筋トレ。
効果あんのかねぇ。
まぁ、今はジョーシマを信じるしかねぇ。
そう思いながら、夏が近い風を受けて俺は歩き出した。
家の近所の公園に差し掛かったころ、
あ、あれ、長瀬?長瀬じゃないか!?
こんなところで、こんな時間になにしてんだ?
「おい、長瀬。
なにしてんだ?」
ベンチに座る長瀬が顔を上げる。
「練習おわったんだね。」
か細い声。
「あぁ、今帰りなんだけど。」
俺の返事。なんだ、こないだから長瀬の雰囲気がなんか変だ。
「ここにいたら、ハル君に会えるかな?って思ってた。」
またうつむく、長瀬。
あぁ〜なんなんだよ、この空気は!!
「ごめんね。でも、ハル君に会えたら、なんか元気でたよ。」
顔を上げると、何時も見慣れた、笑顔の長瀬がいた。
「そ、そっかぁ。」
照れて、頭をかく俺。
あ、そうだ!!チケット。
「じゃ、元気出たから帰るね。じゃ、また明日。」
「ちょっ、ちょっと、まって。」
俺は思わず、立ち上がった、長瀬の手を掴んだ。
柔らかかった。
「あ、あのさぁ。今度テスト明けにある、TMRのライヴのチケット取れたんだ、いかないか?」
自分では、落ち着いて言えたと思う。
緊張は、外に出なかったと思う。
「え?ほ、ほんとに??いいの?私で。」
きょとんとした顔になる、長瀬。
「もちろん。」
笑顔で応える。
「う、うん、じゃぁ、お呼ばれされます。」
はにかんだ笑顔に、俺の胸が高鳴る。
「おう、じゃぁ、これがチケット、無くすなよ。」
俺は、カバンから、チケットを取り出して、掴んだての中に置く。
「無くさないよぉ!!」
真っ赤にして、失礼な!!という顔で、そう言う長瀬。
それがなんだかおかしくて、 「はははははははは。」
俺の声が、そらに吸い込まれた。
「もう、ハル君のいじわる!!!」
俺の笑い声は、長瀬が呆れるまで続いた。




Fin.


Chihiroパートへ戻る



おうぢさんのコメント

まさかの続きです、今回は、梅雨時期が舞台です。
新キャラも出てきて、ますます騒がしいですが、
それ以上に出番の少ないキャラもフォローできたなぁ。
と思います。
次回はいよいよ夏でございます。
今回出番のすくない、高校球児ヒカル君の出番です!!
ではでは!!




キャライラストとプロフィールを頂きました。
こちらからどうぞ!

貰いモノは嬉し!へ戻る