メロディ
〜グラフィティシリーズ〜

作:秋月和至(おうぢ)さん

〜Chihiroパート〜

雨。
やだなぁ、雨は。
荷物は気になるし、傘はじゃまだし、ほんとヤダなぁ。
あ、もう学校だぁ。今日は、水溜りとか踏まずに済んだ。
あれやっちゃうと、クツの中最悪なのよねぇ。
雨が染み込んだら、靴下ぐちゃぐちゃになっちゃうし。
えっ?サッカー部練習してる?? すごい雨降ってるよ。
風邪引かないといいけど。
あ、山口君・・・・・・・。じゃなかった、ハル君だ。
はぁ、馴れないな、この呼び方も。
どうしても、なんか、緊張っていうか、すぐに言い出せないのよねぇ。
そのうち馴れるよね。多分。
私は、校門を越えたあたりの校舎に続く道で佇んで、ハル君の姿を追っていた。
あれは、去年の体育祭だった。委員長で、忙しい私に、
「おい、委員長。俺が運んどいてうやるよ。次出番だろ?」
今、200メートル走で、走ってきたばかりなのに、笑顔で私に言ってくれたハル君。
そう、あの時の笑顔は、カッコよかった。
多分、私はあの笑顔にひかれたんだと思う。
同じクラスで、目立ってて、それでいて、みんなに優しくて。
私も、全然知らない訳でもなかったし、よく、ハル君が話しかけてくれた。
だから、私もハル君に、話も出来たし、みんなとも仲良くできた。
それまで、地味一辺倒でいた私が変われたのは、きっと、ハル君のおかげなんだよ。
本人は少しも気がついてないと思うんだけどね。
はぁ、クラス変えから三ヶ月目、全然ハル君と、進展してないのよねぇ。
いままで以上にお互い話は出来てるんだけど、なかなか、そこから先には進めない。
二人きりなんてチャンスはなかなかない。
TELすればいいんだけど、ハル君の、携帯のメモリーを見ただけで、勇気が無くなる。
ダメな私。

あ、練習終わりだぁ。
部員がみんな、グラウンドから、引き上げて行く。
雨のなか、ご苦労様。
「あれ?チヒロ、こんなとこでなにボーとしてん。」
この声は………。
「サヤ(莢)ちゃん!!」
私の目の前には、真っ赤な傘をさした、同じ制服を着た女の子、堂本 莢(ドウモト サヤ)ちゃんが立っていた。
「ところで、チヒロちゃんは、何みてたんかなぁ?」
と、サヤちゃんは、私の見ていた視線の先に顔を向ける。
が、そこには、無人のグラウンドだけが広がっていた。
「なんにも無いやん。」
首をかしげる、サヤさちゃん。
その仕草が可愛いから。
「ほら、雨のなか、サッカー部が練習してたから、大変だなぁ。って見てたのよ。」
私はそう、眺めていた理由を話した。
「へぇ〜。大変やねぇ、サッカー部も、まぁ、風邪ひきそうにない奴らばっかだけどね。
あ、でも、東山先輩は、カッコ良いやんねぇ。あの、なんていうか、スマートな物腰。
華麗な、細かいドリブルに、計ったようなパス。こう、下半身がしっかしてるのもあるし、 視野の広さってのも大きいわよね。まぁ、それに合わせる、ハルイチ君も凄いんだろうけど。」
く、詳しいよ。サヤちゃん。
私には、サッカー詳しくないから、良くわかんないけど。
「そ、そうね。」
一応相づちはうっておく。
あれ?でも、ハル君も凄いんだ?
「で、そんなに眺めてるってことは、誰か気になる人でもいたの?」
ドキッ!!
私の、そんなに大きくない胸が、大きく跳ねた。
「どったん、チヒロ。まぁ、東山さんとかに憧れるのは、わかるんやけどねぇ。でも、ライバルは多いで。
なんと言っても、東山先輩なんて、去年バレンタインは、何十個って、貰ってたみたいやよ。
やっぱ、本命ばっかりだったんかなぁ。でも、あれって、お菓子屋の陰謀やんねぇ。
大体、バレンタインちゅうのんわ、海外では、男女共に、好きな相手にプレゼントするもんなんやで、 でも、日本は違うやん。まぁ、その分、ホワイトデーちゅうのんがあるから、お返しはもらえるけどなぁ。」
今日も、いっぱいしゃべるんだね、サヤちゃん。
すごい喋れるのが羨ましいよ。ほんと。
「あれ?東山先輩じゃないん?」
私の顔を覗き込む、サヤちゃん。その体勢じゃ、雨に濡れちゃうよ。
「う。うん」
「…………そっかぁ。じゃぁ誰なん?」
考え込む、サヤちゃん。
「そ、そーゆーのじゃなくてぇ。私はただ、練習頑張ってるなぁ。って見てただけだから。」
私って、嘘上手くないよね。
心で苦笑を浮かべる。
「そっかぁ。まぁ、そらそうやねぇ。こんな酸性雨にちかい雨の中で、練習やってたら、ハゲるで、ほんまに。
それでなくても、こんな雨は、染みソバカスの原因にもなりかねん。オゾン層も減ってるんやし、ほんま体に悪いことばっかやなぁ。」
ため息まじりに、サヤちゃんは言葉を吐き出した。
「う、うん。そだね。」
あたしは、また相づちをうつ。
うう、ボキャブラリィが、貧困だぁ。私。
「おい、何二人して、つっ立ってるんだよ。」
あ、この声は。間違いたりしない声。
「ハ…。」
が、しかし、振り返ろうとした、私よりも早く。
「ハルイチ君!!」
………はやいよ、サヤちゃん。
「どうした、ハルイチ。」
あ、噂の東山先輩だ。ほんと、ピリッと締まった顔立ちよね。
「あ、東山先輩。いや、クラスの女子が、立ってるんで。」
ハル君が話してる。
でも顔が、ハル君の傘で見えない。
「そうか、なら、一緒に行け。」
「えっ?でも、フォーメーションの話が、まだ。」
「それは、放課後ミーティングですれば良いだろう。それより…………」
あれ?東山先輩、顔をハル君に寄せてなにか小声で、ハル君にささやいた。
「!!………わ、わかりました!!そうします!!」
どうしたの、ハル君??
なんか、急に大きな声だして。
動きが堅いよ。
「じゃぁ先輩、放課後に。」
ハル君は、東山先輩に一例する。
「あぁ、もうすぐ予鈴がなるぞ、急げよ。」
そう言うと、東山先輩はスタスタと歩き出した。
ほんと、無駄の無い動き。
ハル君は、それを見送ると、
「じゃぁ、長瀬、堂本、行こうぜ。いつまでもこんなとこ立ってたら、風邪ひくぜ。」
そう言って、歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
私は、ハル君の後を追った。
「私おいとかんといてぇなぁ!!」
サヤちゃんも追いかけてくる、そんなに走ると、泥が跳ねちゃうよ〜。





「じゃぁねぇ〜。」
「あしたなぁ〜。そうそう、明日英語の和訳、私やねん、明日おしえてなぁ〜。」
そんな会話をサヤちゃんと交わして、私は教室をでる。
サヤちゃん、バイトなんで、帰るの早いよね。
なんか、欲しいものあるんだよねぇ。
買ったら教えてくれるみたいなんだけど、何買うんだろう?
サヤちゃんの欲しいもの??さっぱり思いつかないよ………。
「あ、そだ!!」
廊下の端まで歩いていた、サヤちゃんが全速力で、走ってくる。
「そうだ、英語の和訳のお礼の先払いって感じで悪いんやけど。」
といって、カバンから小さなファイルを取り出して、
「こないだ、もらったんやんかぁ。なんか、チヒロ、サッカー部に興味があった見たいやから、 これあげるわ。こないだ、写真部の子から分けてもらってん。なかなかの一枚やで。」
差し出された写真には、東山先輩と、ハル君が写っていた。
どうやら試合中らしい、すごい真剣な眼差しの二人が写ってる。
「あ、ありがとう。」
私は、その写真を大事に手を沿えて受け取った。
「ほな頼むで、ほんま、私、今回の和訳わかれへんねん。お願いやで、約束なぁ。」
「キャぁ。」
いきなり、サヤちゃんが、抱きしめてきた。
うう、相変わらず、すごい、胸の感触だ。う、羨ましい……。
が、その拍子に、サヤちゃんのファイルが、床に落ちる。
ページが捲れた、最後のページ。そこには、ハル君の写真………。
サヤちゃんは、それに気がついて、ハッとなる。
顔を朱に染めて、さっとファイルをカバンに直す。
「あ、あ、私バイトやから、ほなまた明日なぁ!!」
全力ダッシュ!!速いよ、サヤちゃん。
でも、どういう事なんだろう。
サヤちゃんも、ホントはハル君の事が…………。
そうなのかなぁ。そうだったら、どうしよう。
大事なお友達なんだよ、サヤちゃん。
「また、つったんのか?立ってるの好きだなぁ。長瀬。」
こ、こんな時に!!
「そ、そんな事ないわよ!!たまたまなんです!!」
私は、声もひっくり返りそうに、慌ててまくし立てた。
「……………そ、そうか。そりゃ、悪い事言ったな。」
目を見開いた、ハル君が立ち尽くしてる。
あれ?視線が私に向いている事に気がつく。
そりゃ、あんな大声でしたらね。
「ごめん!!」
私は、その場から走り出した。
「お、おい長瀬!!」
私の姿は、この雨見たく泣きたいくらい情けなかったに違いない。

私は逃げ出す様に、学校を走り抜けた。
こんなに、気持ちが落ちつかないのはなぜ。
雨が、痛い。
制服が濡れても、息が続くまで走り抜けた。

ハル君の、右手に握られている物に気がつかないままに。



Fin.


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