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| ― 遥かときを超えて ― |
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「ええーっ、リナちゃんって言うんだぁー」 ランツのハイテンションな声が響く。カウンターからザングルスが奥の席を覗いた。 「すみません。マスター・・・友達なんです」 マルチナが奥を気にしつつ、ザングルスに声を掛けた。 「友達は分ってるけど・・・で、なんであいつなんだ?」 不信そうに呟く。 「友達の一人が前にちょっと・・・多分、ちょっとだけなんですけど、介抱してもらったみたいで・・・」 「えっ?えっ・・ええーっっ??」 ザングルスは目を丸くして、マルチナと奥の客を見比べた。 「?」 「で、どの子?」 「はい?」 意味も分からずマルチナは首を傾げた。 「可愛い名前だよねー」 「どうも・・・今度、この前のハンカチ・・・お返ししますね」 気色悪いなーこの人。近付かないでよ。 と、引き気味でリナの笑顔も引き攣る。その隣に座ってランツ。 「リナちゃんが持ってきてね。でも、あれ僕らのであった記念に持っててくれてもいいんだけどなー・・・」 満面の笑みを浮かべる。しれっと立ち上がるアメリアとミリーナ。縋るようなリナの視線を無視してカウンターのマルチナのところへ。 ひぃぃ〜んっっ。薄情ものぉぉぉ!! リナは視線だけで抗議するが、背を向けられていてはそれも意味を成さない。 「ほっんとに持っててくれてもいいけど・・・あっんなの要らないよね。違うものプレゼントするよ」 嫌ぁぁぁぁ!!近付くなぁぁぁ!!んなもん、要るかー!! 「おい・・・いいのか?嫌がってるぞ」 ザングルスがマルチナを見る。 「嫌なら・・・言うでしょ」 「冷たいなー・・・あいつの性格を知ってるくせに」 「しつこいんですか?」 アメリアが小声で奥を気にしつつ聞いてくる。 「かなり・・・しつこい」 ザングルスが頷く。 「へぇー?」 と、アメリアの瞳が輝く。楽しいものでも見つけたように。 「そろそろかしら?」 ミリーナがカバンにつけた腕時計を見て呟く。 「そろそろね」 マルチナも同意する。 「わぁぁぁっ♪」 指を組み立ち上がるアメリア。 「??」 ザングルスだけが意図が掴めず首を傾げる。その後ろで・・・ すぱぱぱぱぱぁぁぁぁ----------んっっ!! 軽快な音がした。 「へぇー・・・ランツその子にこれで殴られたのか」 と、ガウリイは見事に割れたメニュー表を見、笑った。見事にプラッチックの板が割れ、中の紙のメニュー表が破けている。 「見たかったなー・・」 「そうなんだよ。俺も調度、その瞬間は見逃してさー・・・」 と、上機嫌でモップをかけるランツを見る。 「でも、流石、ランツだよな?めげてないじゃないかぁ〜」 「それどころか、一人春を背負ってるよ」 ガウリイとザングルスが感心する。 「バカな奴だ」 ぽそり、ゼルガディスが呟く。2人はそれに振り返り・・息の合ったタイミングで頷く。 はふっ 溜息が漏れた。手の中の包みに視線を落す。 「何よ、マルチなのケチ」 リナはそう口を尖らせる。 「ついでなんだから・・・持ってってくれたって・・・・」 小さな包みの中にはいつかのハンカチ。 「もう。会いたくないのに」 ブチブチ ―――ついでってさー・・・気持ちも分らなくもないけど・・・あんた、自分が世話になったんでしょ?嫌だからってあたしに預けてどーするのよ。ちゃんと、自分で返しなさいよ――― んなこと・・・分ってるわよ。でも、苦手なんだから仕方ないじゃない・・・ リナの脳裏にランツの笑みが蘇る。背筋がぞぞぉっと寒くなる。 ―――彼、多少変わったところも、確かにあるけど・・・・悪い人間じゃないのよ――― 「・・・言ってることは――分るけど・・・」 はぁ〜〜〜〜っ 生理的に受け付けないのよ。 「あのタイプは」 重い足取りで路地を曲がる。 ドンッ! 「きゃあ!」 「おわたっ!」 曲がった矢先、人にぶつかり尻餅をつく。 「あたたたたぁぁぁ」 「ごめんなさい。すみません。お怪我はありませんでした?」 キレイな透き通る声に声の主を見た。この暑い夏に長袖のスーツに身を包み白い手袋まではめた黒髪の・・・・ 「シルフィールさ・・ん?」 何故だろう?縁の広い帽子をかぶりサングラスでほとんど、その顔も確認できないのにその人だと瞬時に分った。 「え?分りますか?」 小声でサングラスをずらしリナの顔を覗き込む。 「何してるんですか?」 と、聞くと泣きそうな顔で俯いてしまった。今にも泣きそうに・・・ 「どうしたの?」 「なくしてしまったの。とても大切な人に頂いたものを・・・」 「何を?あたしも捜すの手伝ってあげる」 気付いたらそんなセリフが口から零れ落ちていた。 なんで、そんなこと言ってしまったんだろう?分らない。 ただ、泣いて欲しくなかった・・・・ 「いいんですか?急いでたんじゃ・・・」 「いいのよ。たいした用じゃないわ」 そう、ハンカチならいつでも返せるから・・・ 「ありがとうございます・・・・私、私なんて言ったらいいか」 「お礼なら見つけた時にして、で、何を落としたの・・・・」 通りを逸れた路地で2人、落としたものを探す。夕日が路地に差し込み2人のシルエットが長くなる。まるで時が止まったよう・・・・何処までも長く伸びるシルエット。リナはふと、何かを思い出しそうになる。 なんであたしは、この人を放って置けなかったんだろう? 「あっ・・・」 「見つけた?」 「はいっ。これです」 シルフィールの瞳から安堵の涙が溢れる。キレイで切なくなるほどの美しい涙。彼女が必死になって捜していたもの―――ネックレスに通した小さな石のついたリング。 「これ・・・もしかして・・・・」 リナはシルフィールを覗く。 「秘密ですけど・・・・婚約指輪なんです」 それは・・・・・とてもキレイな笑顔で・・・・ 笑顔で・・・・・ 「おめでと・・・・・よかったわね。見付って・・・・」 自分の声が何か違う響きを持って響いた。ただ呆然と。 やだな・・・・なんか・・・・・ここに居たくない・・・・・なんか・・・・・よく分らないけど・・・あたし・・・・・泣きそう・・・ 挨拶もそこそこにリナはシルフィールと別れ歩き出す。何処へ行けばいいのか・・・分らない。いつかぽっかり開いた心の穴が大きく広がったように感じた。 「あっ、リナちゃん。ハンカチ返しにきて・・・リナちゃん・・・どうしたんだよ?」 誰かの声が遠くに響いて・・・それが誰の声なのか確認したかったけど・・・溢れた涙が邪魔して何も見えなくて・・・・・ 見えなくて――――――・・・ |