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| ― 遥かときを超えて ― |
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「綺麗ですよね・・・シルフィールって」 「そうよね。綺麗なストレートで羨ましいわ」 隣の席で雑誌を見ながら、少女たちが吐息を漏らす。見ている雑誌はファッション誌。リナは頬杖ついて窓の外を見ながら呟いた。 「モデルなんだし。美人で当然よ。そんな人工的な美しさよりも見なさいよ・・・綺麗な空よね。とても綺麗な蒼だわ―――」 「あっ・・・あぁ・・ほんとですね。澄んだ青空ですよね」 雑誌から目を離し、アメリアが窓に近付き空を見上げた。 「でしょ」 リナは満足げに微笑んでアメリアに並んで空を仰ぐ。 「あたしね・・・今日みたいに澄んだ青空見るとさ・・・・嬉しくなるんだ。澄んだ蒼にぷかぷか漂ってる純白の雲ってさー・・・なんか・・・・くらげみたいじゃない?」 リナは目を細めた。雑誌をしまいながらミリーナが笑う。 「珍しいわね。リナがそんなこと口にするなんて」 「そぉ?何者にも捕らえられない自由なくらげみたいに見えない?」 リナはミリーナに振り返る。 「見えないわよ」 「ねぇ、これからここを出て公園にでも行きませんか?」 「そうね・・・それもいいかもしれないわね・・・」 リナはすっと窓から離れ、ベットで抱き枕を抱え寝ているマルチナを覗き込む。 「ね、あんたもいい加減起きて、行こうよ」 もぞりと寝返りをうち、 「遠慮するわ。熱い中、出てって染みを作りたくないから」 と、眠そう返事が返ってきた。 「そう・・・?一人は退屈でしょう?」 ミリーナが歩み寄る。 「静かになって調度いいわ。あたしに構わず行ってきなさいよ」 マルチナはそれだけ言うと布団を頭からかぶってしまった。 「仕方、ありませんね・・・たまには外の空気もいいと思うんですけど・・・」 「何?撮影をパスしたいだと?」 ゼルガディスは不機嫌に振り返った。 「気乗りがしない」 ガウリイはサングラスをかけながら言う。ゼルガディスは大きく溜息をついた。 「プロのセリフじゃないな」 「じゃあ、プロじゃないんだろ」 そう言ってカバンを取る。 「困った奴。じゃあ、俺も仕事にならんな。お前以外は使いたくないからな。モデル替えてもらってくる」 そう言ってゼルガディスはスタジオを出でゆく。ガウリイはちらりそれを見送って、カバンを置いてイスに腰掛けた。 しばらくしてゼルガディスが一人の黒髪の女性を連れて帰ってきた。 「ガウリイ。彼女なら文句はあるまい」 「・・・・」 ガウリイはゼルガディスを軽く睨んで視線を逸らす。本人を前にしかも、女性に対して気に入らないなどとはとても言えない。ゼルガディスはそんなガウリイの性格を熟知していた。 「まぁ、こんな奴だがよろしく頼むよ。シルフィール」 「あのぅ・・・よろしくお願いしますね」 シルフィールはそう言って微笑みガウリイに握手を求めてきた。 「・・・・」 ガウリイはズボンのポケットに手を突っ込み立ち上がった。そして、 「おい、ゼル。まだ時間あるだろ?」 「あっ・・あるにはあるけど二時間ほど」 「ちょっと、気晴らししてくるわ」 それだけ言うとガウリイはスタジオを後にした。ゼルガディスはやれやれと首を振り、隣のシルフィールに振り返る。 「シルフィール・・・」 外は光に溢れていた。ガウリイは目を細め蒼く澄んだ空を見上げた。眩しい。 俺は何が気に入らないんだろう? 通りを歩きながらシルフィールが美人だったことを思い出す。けれど、どうしても女性と一緒に写真には写りたくはなかった。シルフィールが結構人気のあるモデルであってもだ。何故だかは分からないが・・・・自分の隣には居てもらいたくはなかった。今頃はゼルガディスが彼女に断ってくれているだろう。彼女を傷つけたかもしれない。それを思うと少し、胸が痛んだ。 俺は何を求めているのだろう? 自分でも理解に苦しんだ。昔から何か物足りなさを感じてきた。何かが自分には欠けている。そんな気さえする。ガウリイは立ち止まった。其処は公園の入り口。 「たまには公園をぶらつくのもいっかな?」 そう独り言を口にしたときだ後ろから肩をたたかれ――――、 「追いついたぞ」 ゼルガディスだった。 「あ」 「あっ・・じゃないぞ。お前。少しは俺のことも気にしてくれよ。女嫌いでもないくせに」 「なんだよ。それは」 ガウリイは苦笑する。 「言ってるそのままの意味だ」 ゼルガディスはぶすっと不機嫌に睨む。 「彼女の何処が気に入らなかったのか分らんよ」 「そうだな。俺にも分らん」 「さらりと言うな!」 あははは・・・ 「で、どうするんだ?仕事」 笑いながらガウリイはゼルガディスを覗き込む。 「相手がおらんのでは撮影にならんだろう」 その声は諦めにも似たものが含まれていた。ガウリイはゼルガディスの肩に腕を乗せ、 「その辺の幼児でもスカウトするか?小さいのとなら文句は言わん・・・・」 と――冗談っぽく笑う。やれやれとゼルガディスは首を振る。その視線の向こう側、三人の少女が居た。その中の黒髪の元気そうな少女が目に留まった。ちらり、相棒に目をやり―――目を伏せ吐息を漏らした。 声を掛けても無駄だろうな・・・ 少女たちは楽しげに会話を弾ませながら信号を渡って直ぐ脇を通り過ぎる。ゼルガディスはそれを横目に見送った。 「いい被写体なんだが・・・」 「ん?」 「いや、なんでもない。戻るぞ」 「え?天気もいいんだしさー・・・公園でも散歩・・・」 其処まで言ってガウリイは続くセリフを飲み込んだ。もの凄く不機嫌な顔のゼルガディスに圧倒されて――― 「昼、お前のおごりな」 「はいはい」 「蟹な」 「え゛・・・」 「ぷっ、冗談だ」 「お・・・い・・・」 |