唇が・・・

作:しようさん♪


 何がきっかけだったのか、覚えてはいない。ううん、明確なそれはなかったのかもしれない。ただ。ガウリイと旅をしているうちに。一緒にいることが当たり前になってしまい。その頃から。

 少し、羨ましいと感じるようになったのだ。

 手を繋ぎ、腕を組み歩く、恋人達の姿を見て。

 昔はすんごく馬鹿にしてたのよね〜〜〜。そう某女魔道士と旅をしていた頃なんかは、ね。はっ!!これじゃあ「アレ」を旅の連れだったと認めてる!?・・・・・ふっ。慣れって恐いわね。思わず立ち止まり、哀愁を感じつつ、遠くを見つめてしまうあたしだった。
 なのに。
「どした?リナ」
急に立ち止まったあたしを振り返り、自称保護者のクラゲ男が声をかけてくる。もうちょっと浸らせて欲しかったのに・・・。対してガウリイはのほほんとした顔。何でこんな悩みのなさそうな顔してんのよ。ふう。軽い溜息を一つ。
「何でもない」
大したことじゃない、という素振りであたしはガウリイを追い越し、その姿を視界の外に追いやった。

 けど。

 その姿が見えなくなると、あたしは寒くなる。寒くて寒くて耐えられない。あたしは寒さに弱いのよ。だから、仕方ないからガウリイを見る。するとあったかくて。寒がりのあたしにとって、ガウリイは必需品なのかもね〜〜〜。

 って、違う。そうじゃない。そんなの言い訳。あたしはもう気づいてしまった。あたしの気持ちに。本当はあまり気づきたくなかったんだけど、ね。あたしが、ガウリイのこと、好きみたいだってことに。

 凄く・・・好き。

 それにしても何でかしらねえ。そりゃ確かに、外見はいいわよ。でも、でもねえ。脳みそ詰まってないのよ?これっぽっちも。これって致命的だと思うのよね。それなのにあたしは。

 視線に気づいて、ガウリイがあたしを見、声をかけてくる。
「ん〜〜〜別に」
お構いなく。あたしはあたしの心を分析しようとしてるだけだから。・・・少し居心地の悪そうなガウリイが、なんだか可愛い。

 う〜ん。やっぱり、ねえ。これって重症だわ、どう考えても。ガウリイに触れたい、だなんて。そりゃあいい男かもしれないわよ。でもねえ。世界で一番いい男ってわけじゃあないのに。

 ガウリイじゃないと駄目。

 触れてみたいな、ガウリイに・・・。

 手を伸ばせば届く距離。でも伸ばせない。だってあたしたちは恋人じゃない。でも、触れてみたい。手なんかじゃなくて。もっとガウリイを感じられる場所で触れたい。

 ・・・唇?

 唇が、あたしの唇が求めてる。ガウリイを求めてる。

 だから。

 天気のいい日だった。ガウリイと同じ色の空の下。
「う〜〜〜ん、困ったもんね」
小首をかしげて足を速めると案の定。ガウリイはあたしを追いかけてきて、肩に手を置いた。そこで狙いをすまして。

 あたしは触れた。

 唇で、ガウリイに。

 うん。やっぱり。他の人なら絶対に嫌だけど、ガウリイなら嫌じゃない。
 
 こりゃあ、認めないわけにはいかないわよね。

 さあて、この先どう動けばいいのかしらね?





おまけ

 最近ガウリイの視線が痛い。
「何よ?」
「ん〜〜〜別に」
にっこりと微笑むその顔は、以前と同じで。同じようだけど、何か違うようで。

 そのうえガウリイはいとも容易くあたしに触れる。・・・前からこうだったっけ?例の一件以来、あたしが意識しすぎているという可能性も否定できない。そんなわけで聞くに聞けないし。

 ある日あたしは、精神的に凄く疲れてしまって。ついこぼしてしまった。
「あんたはいいわよね、悩みなんかなくってさ」
「ああ、男は惚れた相手の前でだけは、悩む姿なんて見せるもんじゃあないらしいから、な」

 ・・・・・悔しいことに。

 あたしは変なことを口走らないように口を噤むだけで精一杯。そんなあたしを見て、嬉しそうに笑うガウリイ。益々悔しくて、でもその目はとても優しかったから。あたしの顔はさらに赤くなったはず。

 悔しいから、気づかなかったことにしておくわよ?しばらく、ね。

 きっとガウリイにはわかってるんだろうけど。

 そのうちあたしだって頑張るんだから。

 だから、覚悟しなさいよ?





おしまい

ガウリイsideはこちらからどうぞ!

貰いモノは嬉し!へ戻る