金魚

作:じゃむさん♪

あたしの横を楽しそうに子供達が走り抜ける
立ち寄った少し大きいこの街は年に一度の祭りが華々しく行われていた
軒先に並ぶ数々の露天、立ち込める芳しい匂い、人々の楽しそうな顔
練り歩く山車、大きな屋根に黒い民族衣装を纏った楽師が大きな太鼓を 打ち鳴らす、重なる笛と鐘の音、聞いたことの無い不思議な音楽が心地よかった。

ふと目に止まった一つの露天、珍しい魚が泳ぎ回る、白、金、黒、そして鮮やかな赤・・・
大きな桶の周りでは子供達が魚に夢中だ
「そこのかわいいおねえちゃん!やってみるかい??」
露天のおっちゃんに言われるまま丸くて小さなすくい紙を片手に大きな桶の前に座り込む
桶の中では魚達が気持ち良さそうに泳ぎ回る
これですくえばいいにね、なんだ簡単、この天才で美少女のリナ・インバースに出来ないことは無い!!
そっと水の中に紙をさし入れる、さし入れた途端周りに居た魚がぱっと居なくなる
なかなかやるな魚!  あ!もうちょっと・・・上に乗って・・・あ!落ちた・・・
くう〜〜〜一匹もすくえない、手ごわいわねっこうなったら眠らせて・・だめだおっちゃん にばれる・・入れ食いの呪文を・・・釣り糸じゃないし・・
泳ぎ回る魚をにらみながらあれやこれやと思いを巡らせて魚をにらみつける。
手のひらの紙はもうよれて今にも破けてしまいそうだ
「おい、リナ〜〜??どうしたんだ?」
後ろで待っていたガウリィがあたしの小さい手桶を覗き込む、もちろん一匹も入っていない
簡単そうに見えてなかなか難しい。
「まだすくえないのか? よし!オレもやってもいいか?」
うれしそうに小さなすくい紙を手にあたしの横に座り込む、
子供みたいに楽しそうだ、小さなすくい紙はガウリィの大きな手にすっぽりと入ってしまう。
いくら超一流の剣士とはいえ別問題だ、

桶の中を睨み付けていたガウリィが素早く水の中に紙を滑らせる
ばしゃりっ  水音と共にガウリィの手桶の中に赤い魚が滑り込む
「うそ!なんでガウリィ!!破けないの!!」
びっくりするあたしに嬉しそうに微笑みながら次々と魚をすくって行く
うみゅ〜何だか面白くない・・・
「あたし先に帰る」
立ち上がってすたすたと宿に向かって歩きだす、あわててガウリィが呼びとめる
「おい!リナ!!」
背中の声を無視しながら行き交う人の中を抜けてぐんぐん歩いて行く
背後から突然腕を掴まれた、聞きなれた低い声、やさしくてまるで駄っ子をなだめるみたいだ
「リナ・・・いきなり帰るなよ・・・ほら」
目の前に差し出された袋の中には鮮やかな紅い魚と輝く金の魚が窮屈だとばかりに泳ぎ回る
「これ・・・」
「リナのために頑張ったんだぜ・・・綺麗だな。」
本当に綺麗だ、二匹の魚は日の光を受けてきらきら輝く
「あ・・・ありがと・・・」
あたしの言葉にガウリィが嬉しそうに微笑む、頬が火照るのが解る
赤い顔を見られたくなくて二匹の魚を覗き込む
小さな袋の中で魚達は出口を求めて逃げ迷う、袋の中じゃ苦しいよね
「ガウリィ・・・逃がしてあげよう・・・連れて行けないし・・・」
大きな手がくしゃりと頭を撫でる、見上げると空色の瞳が笑ってる
「よし、河でも探すか・・・・逃がしてやろう」
ガウリィが手を引っ張る、って手、手を繋ぐの!
「ちょ!ちょっと、ガウリィ!!手離して!一人で歩けるわよ!!」
振り向いたガウリィが楽しそうに微笑む、
「はぐれるといけないからな、 ほら、行くぞ!」
は、恥ずかしいよぉ・・・ガウリィは手を繋いだまま ぐんぐん進んで行く、クラゲにくせにこんな時は強引だ
諦めて手を繋いだまま逃がしてやる河を探す。

街の通りを少し抜け小さな河を見つけた、流れもさほど速くないみたいだ
そっと袋の中から小さな魚を河の中に放してやる、二匹はじゃれあう様に あっというまに見えなくなる。


空が夕暮れに染まる頃、宿へと帰る帰り道、側で歩く自称保護者に聞いてみた
「ガウリィ・・・・あの魚達・・・ずっと一緒にいるのかなぁ?」
ぽんぽんと頭を撫でながら答える
「いるんじゃないか・・・オレ達みたいに・・・」
俺達って・・・火照る頬を誤魔化すように足取りを速める
「ま、ガウリィみたいなクラゲと一緒にいれるのはあたしぐらいかもね」
隣であたしの言葉にガウリィが笑う
そうだね・・・こんな風にずっと、ずっと、一緒に居れるといいね。
赤く染まった顔がガウリィに解らない夕焼けに少しだけ感謝した。


おわり


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