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「そうねぇ・・・・まずは・・・」 そう言ってセリスはいったん短い間をおいたあと 「あいつらに狙われ始めたのは・・・ん〜、ざっと4、5年前からぐらいだったかしらねぇ・・・・」 「そんなに!?」 思わず声を上げるあたし。 ・・・・・いや、まあ。あたしも人のこと言えないような気もするけど。 セリスは薄く苦笑を浮かべ 「でも、リナも結構前から魔族と縁があるんでしょうが。」 あたしが思ったことと同じようなことを言う。 ・・・・・・・・・・はて? 「って、あたしのことをよく知ってるような言い方だけど。」 思わず口をついて出た疑問にセリスは苦笑混じりに 「そりゃあ「あの」リナ=インバースだもん。噂くらいどこでも数え切れないくらい勝手に耳に入ってくるわよ。」 ・・・・・確かにそうかもしんない。 まあ、何気に引っかかる言い方ではあったけれども。 そんなことよりも・・・・ 「で、そもそも狙われて理由は?」 視線と共に答えを促すあたし。 セリスはと言うと――― 何やら眉間にしわを寄せしばらくの間黙り込み、 「実を言うとよくわかんないのよねぇ・・・仲間に引き込みたいのかもしれないし。」 言って軽く肩をすくめる。 「かもしれない」っておい・・・・・・ 「狙われる心当たりとしては・・・・」 そこで一度言葉を切り。 セリスはほんの数瞬の短い沈黙のあとぽつりと言った。 「クレアバイブル・・・・」 『クレアバイブルぅ!?』 ぶぴゅるぅっ! 「わーっ!わーっ!んなにおっきな声出すなって!!! ゼルも紅茶吹くな!もったいない!!!」 あたしとアメリアの上げた声に覆い被せるように慌てて声を張り上げるセリス。 げほげほげほげほげほっ 「ク、ク、ク、クレアバイブルだと!?」 むせて苦しみながらもゼルガディスは何とか言葉を絞り出す。 「だから落ちついてってば・・・」 髪をぐしゃぐしゃとかきむしり低い声で唸るセリス。 ま、まさかクレアバイブルの名が出てくるとわ・・・・ あたしはなんとか動揺する心を落ち着かせようとするがゼルガディスはさらに声を荒らげ 「クレアバイブルがどうしたと言うんだ!?」 「うるさい・・・・!」 ごづっ セリスの低いつぶやきと共に何やら石のようなものに堅いものが打ちつけられたような鈍い音が響いた。 次の瞬間――― ゼルはなぜか机の上に声すら出さずにつっぷした。 ・・・・見るといつの間にやらセリスの右手に1本のダガー。 どうやらちょっとばかし頭にきたセリスがその柄でゼルをどついたらしい。 ・・・・・っておい。すんげぇ痛そうなんだけど。 「セリスさん!何するんですか!?」 「騒がしくするからよ。それとも・・・私が悪いって言うの?」 言ってセリスは据わりまくった目をアメリアに向ける。 「・・・話を続けて下さい。」 「そうさせてもらうわ。」 脂汗だらだら流しつつ無理やり笑みを作ろうとしてるアメリアに笑みを向けつつセリスは懐にダガーをしまい込んだ。 そして紅茶を一口口に含み声のトーンをひそめて 「そう、クレアバイブル・・・・そのクレアバイブルが・・・・その・・・」 言いかけてなにやらもごもごと言いよどむ。 「何なのよ!?」 声が上ずりそうになるのをこらえつつあたしもなるべく声を小さくして問い返す。 セリスは聞き取れるかどうかの声でぼそりと言った。 「持ってるのよ・・・・・」 「は?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・今、なんて言った? 「だから・・・クレアバイブルの写本を持ってるのよ。」 『なっ!?』 見事なくらいあたしとアメリアの声が重なる。 だが。 それまで黙って聞いていたガウリイだけが違う反応を返した。 「なあ、クレアバイブルって・・・」 「クレアバイブルってなんだったっけ?とか言うお茶目な質問はできれば避けて欲しいわ、私。思わず刃の部分がすべっちゃいそうなんですもの♪」 言ってセリスはガウリイに極上の笑みを向ける。 って・・・ 「本当なの!?」 あたしは思わずテーブルの上に身を乗り出し極力声を抑えて聞き返す。 その言葉を聞き、セリスはややむっとした表情になり 「んな嘘つくわけないでしょうが!ったく・・・だから言おうか言うまいか迷ってたんじゃない・・・・」 言って何やらぶつぶつ言い出す。 しかし・・・・ クレアバイブルの写本――― 魔道士ならば誰でも喉から手が出るほど欲しがる究極の魔道書クレアバイブル。 オリジナルは言うまでもなく部分的に書き写された写本でさえもそんじょそこらでは手に入れることが出来ない代物であるはずなのに・・・・・ 「なんでセリスが持ってんのよ!?」 とうとう堪えきれずにあたしの口から素っ頓狂な声が跳び出る。 「そこらで見つけたに決まってるじゃない。」 あたしが大きな声を出したのが気に入らなかったのかやや憮然とした口調で言い放つ。 そ、そこらって・・・・そんなに簡単に手に入るもんなのか、オイ。 思わず頭を抱えてあたしは唸り声を上げる。 あたしだって旅をしながらクレアバイブルを探してみたりするもののたいていが単なる噂であったりと、本物には滅多にお目にかかれたことがないのである。 例え本物を見つけたとしてもたいてい魔族に横取りされたりと・・・ まあ、そんなところで。 自分の手に入れて持っているという事は今までにない。 「って、せ、セリスさん。拾ったってどこでですか!?」 あたしに代わってアメリアがテーブルに身を乗り出し声を上げる。 さすがにさっきのこともあってか少しは声のトーンを落としているようだが。 「ん〜、旅してる間によ。ラムルの洞窟でしょ。カルバットの森のトロルの巣窟に・・・ そんなとこかしら?」 べちっ!! 盛大にテーブルにつっぷするあたしとアメリア。 ・・・・って、おいおいおいおいおい! 指折り数えるほど持ってるんかい!? 「で。まあともかく。その中でやっぱしカルバットでのが悪かったのかしら・・・」 思いっきり動揺しまくるあたし達をさておいて。 セリスは一人で何やら考え込み出す。 な、なんかすごいことになってるんだけど・・・・ ある程度の事を聞く覚悟はしていたものの。 もはや完全にあたしの予想してた以上のことを言ってくれちゃってるよ。こいつは。 「って、カルバットの事って?」 体制を立て直し再び声を低めて問いかけるあたしに 「部屋で話しましょ。」 あっさりセリスは言い放ち席を立つ。 「って、ちょっと待った待った!」 慌ててあたしはセリスを引き止めた。 セリスは首だけこちらに向けて何事かと眉をひそめる。 いや、あの・・・・ 「これ、どうするのかなって・・・」 言ったあたしが指さす先にセリスはちらと視線を向け――― 「も一回どついてみるとか?」 「やめろって・・・・」 何が嬉しいのか嬉々として懐に手を入れ、いまだにテーブルの上につっぷしてのびたままのゼルに近づくセリスに。 あたしは思わずつっこみを入れたのだった。 |