過去の迷宮
― 第7話 ―

作:桐馬さん

あの後、あたし達はセリスからなんとか事情を聞き出そうとしたものの
「ここじゃ、なんだし・・・」
の一点張りでひたすら笑ってごまかすばかり。
ま、いつまでもそうしててもどうしようもないし、あたし達が泊まってた宿屋から少しでも遠くに離れようと言うことであたし達はその場をあとにしたのだった。









「で?」

夜も明けて。
あたし達は森を抜け、どうやらレシティール・シティに入り込んだらしい。
ラルティーグ王国国境付近に位置する町であえて特徴を述べるなら紅茶が特産物だとか。
とりあえずは、と身近なメシ屋で軽く朝食をすましてからのことである。
まずはじめに口を開いたのはゼルだった。
「一体なんなんだあいつらは・・・・」
寝不足のせいもあってか不機嫌そうな口調である。
「あいつら結局追いかけて来なかったわね。」
「単なる挨拶がわりだったとかじゃないの?」
呟いたあたしの言葉にめんどくさそうに答えるセリス。
そしてそのまま頭を抱えて
「私は至極まっとーな人生送ってるつもりなのになんでこうなるんだか・・・・」
「そんなことよりはっきりさせとくことがあるだろう。」
言って鋭い視線を向けるゼルガディス。
その視線の矛先はむろん言うまでもなく――― セリス。
つられてあたしも自然セリスに視線を向ける。
が。
当人はちらりと横目でゼルを見たきり何も言わない。



おそらくゼルの次の言葉を待っているのだろう。
もしくはセリスにはゼルガディスが次に口にするであろう事はある程度予想できていてそれに対する答えを考えているのかもしれないが。
――――あたし達が聞いて道理の通ってそうな言い訳を。

そんなことを考えていたあたしの耳にゼルの次の言葉が入ってきた。
「いろいろ聞きたい事はあるが・・・・あんたは一体何者だ?」
・・・・・・・・・・これまたストレートに。
「いや、だから単なる・・・・」
「ごまかすな。」
わざとらしくへらっと表情をくずして言うセリスの言葉をさえぎり、なおも言いつのる。
「あんたから聞いた話も・・・・・どこまで本当か怪しいものだ。」
「どこが怪しいと思ったわけ?」
「・・・・・・全部だ。」
わずかな間をおいてゼルガディスが言う。
「へえ?」
すっと静かな表情に戻し、おもしろそうに呟くセリス。
そしておもむろにこちらに視線を移し
「リナも怪しいと思った?」
「まあね。」
言って肩をすくめるあたし。
「例えばどの辺りが?」
「だから全部。」
続けてたずねられあたしは問答無用に即答する。
・・・・・・・・・・・いや、だって本当のことだし。
頬をひくつかせてるセリスにあたしは続けて
「だけど・・・・・あえて言うならあんたが魔族に狙われてる理由。
単に実力があるからってそんなにあからさまに魔族に狙われるもんじゃあないと思うのよね。あたしも実際魔族には目をつけられてる方だと思うからそこんとこわかるんだけど。」
「思うじゃなくて事実・・・・・・いや、なんでもない・・・・・・」
・・・・・・・ま、余計な事言おうとしたガウリイはさておき。
「他になにか理由があるとか・・・・・・あと、あいつらがガウリイを狙ってきたってのも気になるところだわ。
ガウリイ本人に用があったのかセリスに関係するので何か目的が・・・・・
そうだとしたらなんでガウリイなのか・・・・とか。
まあ、いろいろ考えられるけどね。とりあえずこんなところかしら。」
「悪くない読みだわ・・・・いや、実にいい読みね。」
話し終えると満足そうにセリスは呟き、
「ま、確かにちゃんと話をしなかったのは悪かったと思うけどね。
私にもいろいろ事情があんのよ。」
言って苦笑した。

「「事情」の一言で流そうとしないでちゃんと説明してほしいんだけど?」
じと目でつっこむあたしの言葉に一瞬セリスは硬直し――――

「ちっ・・・ガウリイ相手なら「そうかぁ」の一言で全て片が付くのに・・・・」
「あたしとガウリイを一緒にしないで。」
悔しそうに嘆くセリスに即座につっこみをいれる。
むろんガウリイの恨みがましい視線は無視!
「ん〜、でも。類はなんとかを呼ぶって言うし・・・・・」
「だあああああああああっ!!!もうっ!ってか、いい加減話そらすの止めて本当のことさっさと話さんかいっ!!」



ひゅんっ



「いや、だからぶどわぁ!?」

ごしぃっ!

コップのすぐ後に声と共に放たれたイスにまともに顔面直撃され、メシ屋の床に沈むセリス。
ふっ・・・・コップはよけてもイスが飛ぶのは予想しなかったみたいね・・・
ちびっとだけ満足感にひたるあたしに
「って、リナさん!伸びちゃったら話きけないんじゃあ・・・」
「イスを投げることないでしょうが!?」
アメリアの声をさえぎり響く声。
あっと言う間に復活し、その場にがばっと身を起こし抗議の声を上げる
セリスにあたしはちっちっちっと人差し指を振りにっこり笑って言った。
「単なる話し合いの延長よ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっそ。」
しばらく間をおき、ため息と共に言葉を吐き出すセリス。
・・・・・・それにしても思ったよりもタフらしい。
不満そうにぶつぶつ言いながらセリスはイスに座り直す。
そして、再び頬杖をつきめんどくさそうな口調で
「ともかく・・・・ある程度なら話すから。それでいい?」
「ま、とりあえずは、ね。」
そんなあたしの反応を見、セリスはゆっくりと口を開いた――――





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