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「あ〜〜〜〜〜、疲れたぁ〜〜〜〜。」 伸びをしながら言いつつあたしはどさりとベッドに横たわる。 「リナさん、年寄り臭いです。」 ベッドに腰掛けてつぶやくアメリア。 夕飯を済ませた後、あたしたちはそれぞれの部屋に入って休むことになったのだが2階の2人部屋が隣同士で2つとつきあたりにある1人部屋が1つというなんとも微妙な部屋割りしかなかったのだ。 そしてやはりあたしの思った通りセリスが1人部屋に進み出た、というわけである。 ガウリイは最後まで「1人で大丈夫か?」と心配していたが結局のところセリスにうまいこと言いくるめられてセリスが1人部屋になることに渋々納得したのだ。 そして今に至る、というわけで。 ベッドに腰掛け、足をぶらぶらさせながらアメリアが言う。 「でも、なんなんでしょーね、セリスさんって・・・・」 「何がよ?」 上体だけ起こしてあたしはめんどくさそうに聞き返した。 「ん、いえ・・・・なんか気になって・・・・・」 そう言ってアメリアは口ごもる。 ・・・・・・・・・・確かに。 アメリアが何を気にしているか分からないけどあたしとしても気になるところがいくつかあるのだ。 魔族に狙われる理由として強いからってだけで狙われるものなのだろうか。 セリスがそれなりの力量を持っていると言う事は分かるが、そうだとしたら魔族があえて目をつけるほどのものだと言うのか。 それか何か別の理由がありそうである・・・・ もっともセリス本人の口から聞き出すのはかなり難しそうだけれども。 それに気になるのがセリスが昼にあたしの名前を聞いたときのあの反応・・・ うまくは言えないのだが、なんか違和感を感じたのだ。 あたしの名前に関する噂と「あたし」という人物とのギャップに驚いたと言うよりむしろ他に・・・・ 「・・・ナさん、リナさんってば!!」 「ふえ?」 けっこぉ考え込んでたらしくあたしはふと我に返り間の抜けた声で返事する。 そんなあたしにアメリアは拗ねたように言った。 「わたしの話・・・・ちゃんと聞いてました?」 「え?あ、ああ!ちゃんと聞いてたわよ。セリスのことが気になるって話でしょ?」 慌てて答えたあたしにアメリアはじと目を向けて 「違います。ゼルガディスさん達の部屋に行ってみませんかと言ったんです。」 と言うわけで、ガウリイ達の部屋に来てみたのだが 「へ?ガウリイいないの?」 「ああ。」 そこにはゼルガディスの姿しか見受けられずガウリイはどこかに行ってしまったというのだ。 「すぐ戻ってくると言っていたから、心配はいらんだろう。」 付け足すようにゼルが言った。 ん〜みゅ・・・・ガウリイにちょっと聞きたい事があったんだけども・・・・・ でも、この部屋にいないとすると・・・・ 「セリスさんの部屋に行ってるんじゃないですか?」 あたしの思ったことと同じことをアメリアは口にした。 そして更に続けてぐぐぅっと握りこぶしを固め 「きっとそうに決まってます!!さあ、リナさん!ゼルガディスさん!! 行きますよ!!」 「え゛」 「俺もか!?」 熱い口調のアメリアにゼルガディスは引きつった顔つきで2,3歩後ろに退く。 アメリアはそんなゼルに詰め寄りなおも声を荒げる。 「当たり前ですっ!!昼のガウリイさん達の様子からして何か2人の間に隠し事があるというのは明確!!仲間であるわたし達をのけ者にして2人でこそこそ企むなんて、そんなの正義じゃありません! 正義の名の下になんとかして情報を得るんです!!」 「や、それって平たく言うと『ガウリイとセリスが隠し事してるっぽいのが気になるから手っ取り早く盗聴しましょ♪』って言ってるのと同じなんじゃ・・・」 「行きますよ、リナさん!!」 あたしの声を遮りゼルのマントを引っ張りながらつきあたりのセリスの部屋にずかずかと進んでいく。 そして1番奥から2番目の部屋の前に立ちぼそりとアメリアは言った。 「アンロック」 「って、こら・・・・そりゃ犯罪でしょ!アメリア!!」 「正義のためにはこれくらいの犠牲はつきものです。」 きっぱり言い切り迷わず部屋の中に突き進むアメリア。 こ、この娘の正義って・・・・ あたしがこめかみに人差し指を当てて溜息をついていると、アメリアは何やら懐から取り出し・・・・ って・・・・・・・・・・・コップ? そして取り出したそれを壁に当てた。 「あんた止めなさいって!」 あたしは小声でアメリアに静止をかける。が、アメリアはしっっと人差し指を口にあてコップに耳を当てる。 って、ちゃっかりゼルも聞き耳を立ててたりする・・・おいおいおいおい。 「やっぱりガウリイさん、セリスさんの部屋に来てるみたいです。 ・・・・・・ん〜、でもよく聞こえませんねぇ。」 不満そうに言い、コップから耳を離し 「リナさんも聞いてみて下さい。」 あたしにそれを差し出す。 うっ・・・・・や、聞いてみたい気もするけど・・・・・・・・・でも・・・・・・ いやしかし・・・・・・・・ちょっとだけ・・・・・ 好奇心に負け、さっきアメリアがやってたのと同じようにコップに耳を当てる。 『・・・・でお・・・・・なんだ・・・・・・・・っ・・・・・だか・・・・・・理由は・・・・・と・・・・』 『・・・な・・・・・・・・・・必要はっ・・・・・・・ら・・・・・・かく・・・た・・・・・・・誰にも・・・・・ ・・・・・か・・・・・わないで・・・・・・っ・・・・・』 本当だ。ガウリイとセリスの話し声がところどころ聞き取れる。 何やら微妙に会話の内容が分かりそうで分からない。 よほど夢中になって話しているのだろうか、もしくはあたし達をこの部屋の客だと思い込んだのか定かではないが、今のところあたし達に気付いた様子はなさそうである。 あたしは内心安堵の溜息をついた・・・ 「おいっ!!何をしている!?」 突如横手から聞こえた怒鳴り声。 って、しまったぁあぁああああああああああ!!!!!!!! 声のした方にゆっくりと目を向けるとどこにでもいるような旅人風の男がドアの前に一人。どうやらこの部屋の泊まり客が戻ってきたらしい。 「いや、わたし達は怪しい者じゃなく、ただ・・・・」 しどろもどろにアメリアが言う。 まずい・・・・・非常にまずいっ こうなると言い訳は苦しい。客の男からすればもう夜であるというのに自分の部屋にいるはずもない見知らぬ連中が自分の部屋に忍び込み、なおかつ全員が壁につけたコップに耳をつけてるか壁にそのまま耳をつけて聞き耳を立てているかである。 これで怪しくないなどと思うやつはそれこそバカである。 ともかくコップをアメリアの手に返し、あたしがどうしようかと考えていると 「どうしたの!?」 「何の騒ぎだ!?」 騒ぎを聞きつけて隣の部屋からガウリイ達が駆けつけてきたのである。 と、とてつもなくやばひかも・・・・・ 「いや、こいつらがな・・・」 ガウリイ達に説明するように男は冷や汗だらだら流して固まったままのあたし達を指さす。 「あ・・・いや・・・どぉも、ガウリイさん。セリスさん。 へ、へやを間違っちゃったみたいで・・・あは、あはははははははは・・・・」 誰が聞いてもばればれのセリフを冷や汗びっしりで言うアメリア。 その後ろでゼルは頭を抱えて何やら唸っている。 ガウリイ達はと言うと・・・ 一瞬は目を見開いて見ていたものの、セリスはすぐに厳しい顔つきになる。 しかし、セリスはまた表情を変えこの部屋の客の方へ向き直り 「ごめんなさい・・・・・きっと、この人達は私たちのことが心配でこんなことを・・・」 そう言うとセリスは申し訳なさそうに視線を床に落として続けた。 「私たち・・・ずっと一緒に旅をしてるんですけど・・・・・私とこのガウリイは喧嘩ばかりで・・・・今日、2人で話し合う機会をもうけたんですけど・・・・」 セリスはそう言いつつ言葉を詰める。 ・・・・・・・・・・・冷静になって分析すると「何のこっちゃ。」と思うかもしれないがもはやこの男の目にはセリスは 『いろいろと訳ありで、仲間ともうまくいかない可哀想な女の子』 としかうつってないだろう。 「きっと、私たち2人のことが気になったんでしょう・・・・ 本当はこんなことする人たちじゃないのに・・・・・」 またまた意味不明なことを言って両手で顔を覆うセリス。 そんなセリスを見てこの部屋の主は慌てる。 「あ・・・・そうだったのか・・・・そんなことが・・・・・」 「うっ・・・・まさかこんなことになるなんて・・・・・」 セリスは顔を手で覆ったまま床に崩れ落ちとぎれとぎれに言葉をつむぐ。 その様子を見ているこの部屋の主はと言うと。 ・・・・・うあっ、こりゃ完っぺきに信じきってる顔だわ。 そんなあたしの心中知らずに男は 「すまん・・・・変な事言わせちまって・・・・・」 気の毒そうにセリスの肩をたたいて謝り始めたりする。 そして 「おまえさん・・・しっかりしてやれよ・・・・」 などと、ガウリイに激励の言葉をかける。ガウリイは何も言わない・・・・ もっともそれはただ単に状況を理解してないだけだろうが。 しかし男は、そんなガウリイの沈黙を肯定と受け取ったのか今度はあたし達に視線を向けて言う。 「悪気がなかったんなら仕方がない・・・もう部屋に戻っていい・・・・ それから、この女の子のこと頼んだぞ・・・」 ・・・・・何を頼むのかは知らないが。一応あたしも合わせて神妙そうにうつむく。 そうして「がんばれよ、お嬢ちゃん達。」とかなんとか言って、その男はあたし達がガウリイ達の部屋に入るまで見届けていた。 ・・・・・・・た、単純なヤツ・・・・・・・・・・ 「ふんっ・・・・ちょろいもんね・・・・・・」 部屋に入るなり顔を覆っていた手を外し低い声で笑った。 もちろんあたしの思った通り泣いてた様子などみじんも見あたらない。 「鬼か、おまえは・・・・」 ガウリイがあきれた口調で言う。 しかしそんなガウリイにすました顔でセリスは 「なに言ってんのよ?さっきはああした方が1番はやく片が付くと思ったのよ。 それにあの男からしたら『俺は可憐なはっこーの美少女を励ますことができた』 って今頃自己満足にひたってるはずよ? そんないい夢みさせてやったんだからいいじゃない! これだからバカって好きよ、私・・・・コントロールしやすいから・・・・・・」 くすりと笑って言った。 あんた、そりゃまるっきし悪役のセリフじゃあ・・・・・ 根本的に何か間違ってるような気がするが、あえてつっこまないでおくとする。 しかし彼女・・・あそこでとっさにあんなことができるとわ・・・・・ けっこぉ言い訳慣れしてるっぽい・・・・・ それにちゃんと相手の同情心くすぐる言動のポイントおさえてるとわ。 ・・・・・・・・・・・・お、おそるべしっっ ちなみにゼルは「俺は騙されてないぞっ」などとぶつぶつ一人でつぶやいてたりする。・・・・・・・もしかしてちょっぴし騙されてたとか? するとセリスは1度目を伏せ、再びさっきの厳しいまなざしに変えて静かな口調で言った。 |