過去の迷宮
― 第2話 ―

作:桐馬さん

「知らないなんてそりゃあんまりだろ?なんでまたそんな事言うんだ?」
って、おや?いつの間にやら復活してるガウリイ君。
・・・・顔面にブーツの後がきっちし残ってるけど。
むっとした口調でいうガウリイに視線を戻しさっきより強い口調で言った。
「と・も・か・く、知っているとしても知らないの!それにあんたは関係ない話なんだから!」
知っているとしても知らないって・・・
つっこんでみたい気もしたがあえて黙っておく。
話の内容からしてけっこぉ深刻な以上があるらしい。
更にそのセリスと呼ばれた少女は続ける。
「だから・・・・・・・ブラムブレイザー!!」
「へっ?」

ばしゅっ!

いきなりの呪文がちょうどさっきアメリアが出て来た辺りの茂みに炸裂した。
「ちっ・・・」
舌打ちをするとセリスはそのまま素早い動きでバスターソードを構え茂みに向かってつっこもうとした。
しかし、それより先に茂みの中から宙に1つの影が姿を現す。
って、あれも魔族!?
魔族は悠然と宙に浮かびつつ少女の方に視線を向けどこかおかしそうに言った。
「人間とは全く愚かなものだ・・・・
そうは思わないか?セリス=レイフォードよ・・・・・・」
どーやら本当にこの少女はセリスという名前らしい。
更に続けてそれは言う。
「自分のことより他人の事の方が大切だとは・・・全く愚かなものだ・・・」
ぎりっ
セリスはバスターソードを構えたまま奥歯を噛み締める。
そんなセリスの姿を見て魔族は満足そうに目を細め誘うようにゆっくりと言葉をつむぐ。
「それゆえにお前が自分の身を滅ぼすことになぜ気づかない?
・・・・気づかないほど、お前の頭は悪くないだろう・・・・・・・?
さあ・・・もう一度言おう・・・お前に選択の余地など無いのだ・・・・
・・・・・・次に会うときまでにいい返事を期待している。」

しゅんっ

その言葉を残し、その姿が静かに闇に消えた。

「ふぅ・・・・・」
バスターソードを背中の鞘にゆっくりと戻しながら、セリスは深い溜息をついた。
そしてくるりとあたし達の方、いや、ガウリイの方に向き直って歩み寄り
目の前で立ち止まる。
「セリス・・・・」
どこか気遣うようにセリスの頭にあたしにいつもするように、ぽんっと優しく手をおいた。セリスはうつむいたままである。
ガウリイは優しく髪をなでながら再びセリスの名前を呼ぶ。
「セリス・・・・」

ちくんっ

あれ?・・・・なんか今、胸の奥が痛んだよぉな・・・・・・・
あたしは小さく首を振り、変な感情をとりはらって再びセリスの方を見た。
よく見るとセリスは小刻みに震えている。
泣いているのだろうか・・・・・?
あたしがそう思いかけた瞬間、うつむいていたセリスがばっと顔を上げ
ガウリイの方に向かって足をのばし、そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
って・・・・・・・え?・・・・・・・・・・・あし?

どごぐめきゃぁあぁああああっっっ!!!

あたしが違和感を感じたと同時に、勢いつけまくったセリスの回し蹴りがぱぁふぇくとこぉすでガウリイの側頭部に直撃した。
何やら怒りの形相で・・・いや、こちらから表情は見えないのだが。
後ろ姿を見ただけでその表情は想像できるというか・・・・
大声で怒鳴りつつ近くにあった木までもろに吹っ飛ばしたガウリイの元に信じられない速さで飛んで行き、ガウリイが完っぺきにのびてるのなんかお構いなしになおも言いつのる。
「何回も何回も何回も何回も『いかにも知り合いです』みたく、名前を呼ばなくたっていいじゃない!!大体、いつもいつも・・・・・・って!?
ちょっと!?聞いてんの!?あんた!?」
更に首をぎうぎう絞める力を強めながらガウリイに怒鳴り散らす。
ふ、ふるえてたのは怒りのあまりかい!?
呆気にとられたあたしの耳にぽつりともらしたアメリアの一言が耳に入った。
「なんか・・・リナさんが2人いるみたい・・・・」
「・・・・どぉゆぅ意味よ?」
「り、りなさん目が怖いです・・・・・」

ともかくあの後、あたし達は詳しい事情を聞くべく、ひたすらわめきつつガウリイをタコ殴りにしてるセリスが落ち着くまで待って体中傷だらけで完全にのびてるガウリイを引きずり・・・
なんとかして森を抜け、宿屋へと向かったのだった。

「じゃ、まずは自己紹介としましょうか・・・・」
セリスは紅茶を一口、口に含み、まだ微妙に引きつった顔つきでなんとか作り笑いをしながらあたし達に言った。
「私は、さっきあれが言ってたようにセリス=レイフォード。
極々普通の旅人ね。」
普通の旅人が魔族と関わり持つもんだろーか・・・・・?
・・・・まだ機嫌も悪そうだし黙っておくとしよう。
それよりも・・・・

「ガウリイさんとはどういう関係なんですか?」

こくんっ
もう1口紅茶をのどに通しながらセリスは「やっぱりね・・・」と言った風にアメリアを一瞥した。
「ん?別に対した間柄じゃあないわよ?
ちょっとね・・・昔、一緒に仕事をしたことがあるのよ。」
まるでその質問に対して答えを用意してたように何気ない口調で言った。
「んで?あなた達は?」
どうやらそれについてはこれ以上話すつもりはないらしく、右手で頬杖をつき視線と共にあたし達に話をふった。
自己紹介しろってことね・・・・
「あー、んじゃまずあたしから。あたしはリナ、リナ=インバースよ。」

がたんっ!

って、お?
あたしが名乗ると共にセリスは驚いた顔つきでイスがこけるのもお構いなしに勢いよく立ち上がった。
そして、そのまま少しずつ後ろに下がりながら堅い声で言った。
「あなたが、あの・・・・・・?」
おぃ、そんなにオーバーリアクションせんでも・・・・
そしてそのまま続ける。
「あの・・・・『盗賊殺し』『ドラまた』『友達にしたくないやつ常に上位キープの魔道士』とかその他諸々。悪名高いあのリナ=インバース!?」
「やかましいっ!」
反射的にあたしは持ってた空のカップを投げつける。
ちっ・・・・よけてやんの・・・・・・・
セリスは顔面蒼白にし、よろよろとテーブルに片手を着き、もう片方のあいた手を握りしめつつテーブルにたたきつけ血を吐くように叫んだ。
「思いっきし悪人面を想像してたのにっ!!!」
「するなっ!!!」
思わずあたしも怒鳴り返す。
や、まあ。ちょーっとばかし変な噂も立ってるみたいで実物のあたしはこんっな愛らしい顔立ちで華奢だから?
少しはびっくりされることもあるけど・・・・・・・・・・・・・・・こほんっ
セリスは下を向いて震えていた顔を上げ目に涙すら浮かべこちらをびしぃっっと指さし、さっきよりも更に大きな声で叫んだ。
「よくも騙したわね!?」
ずがしゃぁあぁあああっ!!
まともにイスごとひっくり返るあたし。
周りの他の客も何の騒ぎかとこちらに注目している。
だ、だ、だ、だましたって、おい!?
あたしが抗議の声をあげようとしたがセリスはそんなのお構いなしに
「嘘よ!?」「あんまりだわ!!」「これで100歳越えてるって!?」
「現実って何!?」「なんでなのぉおぉおおおお!!!」
など、端から見ても支離滅裂なことを頭を抱えてなにやら絶叫している。
や、そこまで言われると・・・なんかそこはかとなく腹立つぞ、おい・・・・・
あたしがこめかみをぴくぴくさせてふと見ると。
あたし達のテーブルにはいつの間にかあたしとまだわめき続けているセリスしか姿がなく。
隣のテーブルでガウリイ達があさっての方向をむいて紅茶をすすっていた。
お、おまいら他人のふりかい・・・・!?

「こほんっ・・・・・んで、改めて言うと正真正銘あたしがリナ=インバースよ。」
暴れるセリスを穏便に黙らせ、再びあたしは名乗った。
・・・・なにやらセリスが後頭部を押さえつつ恨みがましい目であたしを見てるのはさておき。
「んでこっちが正義かぶれのアメリアで。こっちのいかにも怪しげな兄ちゃんがゼルガディスよ。」
「一言余計です!」
「だな。」
なぜかあたしの説明を聞き、不満げに言うゼルとアメリア。
ひとしきり自己紹介が終わったのを見計らいガウリイが口を開いた。
「なあ、セリス。なんだってお前魔族に狙われてるんだ?」

ぶっっ

い、いきなりその話題にはいるか!?
セリスも思いっきりむせてるし・・・・・
こほこほと咳をしつつ、セリスはぱたぱたと手を振り
「ん〜、べつにたいした理由じゃないわ。単に私の天才的な強さに魔族が目を付けたってだけで。よくある話よ。」
なんかところどころ引っかかる物言いする人だわ、この人・・・・
でも魔族に狙われてへーぜんと「よくある話」と軽く言っちゃうあたりけっこぉ大物なのかも知れない。
・・・・単なる無神経かもしれないけど。
あたしがそんなことを思っているとガウリイは少しの間、躊躇し、セリスの瞳を真っ向から見つめ珍しく厳しい顔つきで言った。
「お前、一人で旅をしてるのか?」
またかなり話がとんだもんだ。
ん・・・・でも、何やら意味ありげな言い方である。セリスはと言うと・・・
「そうだけど、なんで?」
不思議そうにぱちぱちと瞬きをして逆にガウリイに聞き返した。
「いや・・・」
言葉を濁し、何やら考え込むガウリイ。
をお!?ガウリイが珍しく頭使ってる!?
あたしは思わず口に出しそうになるのをなんとかしてこらえる。
そんな空気を取り繕うように黙って紅茶を飲んでいたゼルガディスがセリスに尋ねた。
「魔族に狙われていると言ったが・・・あんた、どれほどのもんなんだ?」
「へぇ?じゃあ、試してみる?」
セリスは挑戦的な笑みを浮かべた。
「・・・・・・ああ。」
「って、やめとけゼルっ!」
セリスと同じく挑むように答えたゼルにガウリイが慌てて待ったをかけた。
しかしゼルはむしろ不敵な笑みを浮かべて言った。
「ああ、こいつの腕が立つというのはさっきのを見てて少しは分かってる。
だからあえてお手合わせ願いたいと思ってな。」
剣を振るう者としての性と言ったところだろうか・・・
あたしにはよく分からないのだが、ともかくゼルにはセリスの剣の腕前が気になるらしい。
・・・ま、実際あんな言ってみたら華奢な少女がぶんぶんバスターソードを振り回してるって時点で気になると言えば気になるだろうが。
「じゃ、外に出ましょう。なるべく人がいない方がいいかもね。
あ、言っておくけど手加減してあげるから♪」
うあっ・・・・セリスもゼルのことすごいなめてる・・・・・・
立ち上がりながら喜々として言うセリスにガウリイはちらっと視線をむけた。
そして小さく溜息をつき、同じく立ち上がるゼルガディスの肩にぽんっと手をおき絶望的な声色でつぶやいた。
「『お手合わせ』なんて可愛いもんじゃないと思うぞ、オレは。」




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