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たんっ・・・たったったたたたたたたたた!! 昼でも薄暗く静寂が支配する森の中、1つの影が動き靴音が高らかに響き渡る。 「ったく、しつこいにも程があんのよ!あのバカどもは!!」 靴音に重なりその音の根元がいらただしげに誰へともなく毒づいた。 声からすると女性−いや、まだ少女と言ったところであろうか。 とりあえずその少女はただただ走っていた−まるで誰かから逃げるように。 いや、実際追われているのであろう。もっとも少女のすぐ後ろにはそれらしい気配は見あたらないが。 「やっぱしここは・・・一発派手にどかーんと!こぉ、なんていうかさぁ・・・」 何やら声に似合わず物騒なことをつぶやきつつ怖い笑みを浮かべた。 そして再び今度は何か思い詰めたように、しかしはっきりとした口調でつぶやいた。 「私には・・・まだやるべきことがあるのよ・・・」 そのつぶやきは誰に届くこともなく彼女自身の靴音にかき消された。 「やー、人間ってあんまし平和だとちょっとした冒険みたいなもんがしたくなると思うのよね、うん。」 どこか遠くに視線を向けてさり気ない口調であたしは言った。 「じゃあ、『なんかこの辺で盗賊が出るらしいって噂を聞いたから森ん中に入ったけど盗賊所か人っ子一人いなくて実は迷子になっちゃった』ってのも冒険の内だと言うんですか?」 ぴくっ ぼそりと恨みがましい目を向けていったアメリアの一言に少しばかりほおを引きつらせながらもあたしは続けた。 「それに何事にもアクシデントは付き物っていうか・・・それを乗り越えてこそ!」 「なんなんだ?」 これまたアメリア同様不機嫌そうにガウリイがつぶやいた。 一筋の汗があたしのほおを伝う。 「んだぁあああああ!!!!悪かったわよ!!あたしが悪かったって!!! これでいいでしょ!?」 「ぐ、ぐるじい・・・・」 ガウリイの首をぎうぎうと絞めながらわめくあたしの声が響き渡り 「ふぅ・・・・」 ただ一人何も言わずにいたゼルガディスがこっそり溜息をついた。 事の成り行きはいつものことで。 立ち寄った街でたまたま「盗賊が出るらしいから街道を外れて行ってはいけない」と忠告され、思いっきし無視してお宝目指して−もとい、世の中の悪を撲滅させるためどんどん森の中に入っていった結果がこれである。 あたし以外の三人の不機嫌さもさながら・・・あたしが1番機嫌が悪かったりする。 せっかくこんなうっとうしい森の中をわざわざ街道離れて突き進んできたのに、お宝はないわ道に迷うわ・・・大人なあたしはなんとか少しは押さえていたのだがアメリア達の一言で限界に達したらしい。 「どこにあたしのお宝があるって言うのよ!?これじゃ単なるくたびれもうけじゃない!?ああああああ!!もう!!噂なんて当てになんないじゃないの!!」 首を絞めてたガウリイをぽいっと地面に投げ捨て、あらん限りの声で空に向けて怒鳴った。わざわざ忠告されてまで森の中を通ろうとする者はあたし達の他にいないらしく周りに人影らしきものも見あたらない。 「いや、その噂につられるのもどうかとオレはおぶふぅっ!?」 とりあえずいらん茶々を入れようとしたガウリイを八つ当たりついでに踏みつけてだまらせとくとして。 「こうなりゃ一発ドラグスレイブかなんかで森の1つや2つ吹き飛ばしたってそう罪には・・・」 「や、やめてください!リナさん!そんなの正義じゃありません!!」 ちょっぴし不吉な事を口走るあたしを慌ててアメリアが押しとどめようとする。 ったく冗談だってのに・・・・・半分くらいわ。 「えぇいっ!!こうなったら・・・」 ごがぁっ! あたしの言葉にかぶって、やや離れた場所から爆発音が聞こえた。 「何だ!?」 「ともかく行くわよ!!」 そろって駆け出すあたし達の前に・・・ ざっ 地に着くブーツの音と共に1つの影が躍り出た。 「ちっ・・・・」 その影はあたし達に目を留めるとわずかに目を見開きあたし達を後ろにかばうように防御呪文をつむぐ。 ごうんっっ! いきなりの衝撃と石や土や無数のつぶてが大小さまざまごちゃ混ぜに結界に向かってとんできて激しい揺れが見舞う。 「衝撃が止んだら逃げるのよ!そうじゃないと責任持てないから!!」 防御呪文で結界を制御しつつあたし達に振り向きもせず言い放った。 声を聴きその人物が少女であると初めて分かった。 その少女は少女自身には割と大きめの薄汚れた白いマントを羽織り、顔はマントについたフードで隠しているため声を聴かないと少女だと見抜けなかったのも無理はない。 しかしそれよりぱっと見てすぐ目に付いたのは背中に背負っている鞘に収まっている何やら大ぶりのバスターソード。 小柄ではなさそうだがこの少女にはどう考えても不似合いである。 果たしてこの少女にこんな大きなものが扱えるのだろうか? と言う疑問があたしの頭をかすめた。 ま、あたしの知り合いにも1人バスターソードを片手で軽々とぶんぶん振り回す女性が思い当たったと言う事はさておきとして。 って、今はそんな事考えてる暇はないわね・・・ あたしは心の中でつぶやき、ともかくその少女に問いかけた。 「何なの!?一体!!」 しかし少女はそれには答えず衝撃波が止むともう1度、今度は威圧するように 「逃げないと命の保証はしないわよ!」 そう叫ぶと地を蹴った。 するとその少女が飛んだ方向にまた何かの衝撃が襲う、が・・・ ばぢぃっ! いつの間にか抜きはなったバスターソードでそれをはじく。 をい!?本当にバスターソードぶん回してる!? あたしは内心驚愕した。その間に 「うっとぉしいことこの上ないわねぇ・・・」 何やら不満げな声を上げレビテーションで少女は浮かび上がった。 「おい!リナ、どうする!?」 ん〜、ちょっとなんかやばそうだけどここで恩を売って礼金とか貰えちゃったら・・・ それは口に出さずに苦笑して 「ほっとくわけにもいかないでしょ?」 「だな。」 「って何のんびりしてんの!?そこのあんた達!?死にたいわけ!?」 さすがにじれったく思ったのか初めてあたし達の方に顔を向けせかすように怒鳴った。 その時フードの中から見事に赤い2つの瞳と水色の水晶のイヤリングがのぞいた。 突如黙ったままじっとその少女を見つめていたガウリイがつぶやいた。 「セリス・・・?」 「え?」 あたしははじかれたようにガウリイを見た。同じようにゼルガディスも見ている。 その瞬間少女もわずかに動揺し隙が生まれた。 しゅんっ! 「あ・・・・」 鋭い刃物のようなものが少女のフードをかすった。 はらりとフードがぎりぎりマントにひっついている状態になり少女の顔があらわになった。年の頃ならあたしと同じくらいと言ったところであろう。 長い黒髪を後ろで1つに束ねているらしく美人と言うよりむしろ可愛いという感じだ。それに加えて・・・先程も見た赤い目。 意志の強そうな真紅の目だ。あたしの目も赤ではあるが少女のものはそれ以上に深い正に真紅という表現が相応しいといった色である。 そんな彼女に向かい茂みの中から飛び出す一つの影。 魔族!? しかし彼女のバスターソードがそれをなぐ方が早かった。 彼女、なかなかの使い手らしい・・・って、そんなことよりも! 「エルメキア・ランス!」 とどめを刺すように少女は力を解き放つ。あっけなくも片を付けこちらに背を向け少女は地面に緩やかに降りてきた。 それを見計らったように少女にじっと視線を向けたままガウリイは繰り返した。 「セリスだろ・・・?」 セリスと呼ばれた少女は無言で背を向けたまま微妙にひっついた状態のフードを地面にちぎり捨てた。 でもセリスって?ガウリイの知り合い・・・・? その少女は背を向けたまま動かない。 でも、あたしはその後ろ姿からどこか少女が戸惑っているというのを感じた。 やはり知り合いなのだろうか? 気まずい雰囲気が支配する中。 がさがさがさぁっ! 突如茂みに何かが落ちたような音がした。って、あ・・・・ 「リナさん!ひどいじゃないですか〜」 そ、そぉいえばアメリアのことすっかり忘れてたよぉな・・・・ 「せっかく登ったのにすぐ倒しちゃうなんて・・・まだ決めゼリフすら言ってないのに」 「そ、そんなあたしを恨みがましい目でみられても! そ、それに倒したのはあたしじゃないわよ!あの人よ!」 そう言ってぴっと親指で未だにこちらに背を向けたままの少女を指さす。 「ってことはあなた悪ね!?」 「なんでそうなる!?こらっ!?」 うあっ・・・・・・・・・・・振り向いちゃったよ、おい・・・・・・・・ せっかくのシリアスな空気が・・・アメリアのたった一言で・・・・ ・・・・なんか、すんごい悲しいんだけど。 あ、振り向いたまま止まってる。 少女はしばらく振り向いたままの状態で再び背を向け、片手をあげつつ軽い口調でさらっと言った。 「じゃっ、そゆことで」 って、逃げるか!? あたしが待ったをかけようとしたとき、いつもののほほんとした口調でガウリイが一人うんうんうなづきつつ言った。 「やっぱりセリスじゃないか、うん。」 あ、またあの人止まってる・・・しかも器用なことにこの場から去ろうと1歩踏み出したところで止まったらしい。 しかし、そんなのおかまいなしにガウリイは続ける。 「覚えてるだろ?ほら、オレだって。ガウリイだ。 まさか忘れるわけないよなぁ、オレでも覚えてるんだし。」 をい、ガウリイ・・・・自分で言ってて悲しくないのか・・・・・・ 「それにお前は俺の・・・」 どげしゃぐしゃぁっっ! 「あれ?何か靴の裏に当たったかしら?」 何やら言いかけるガウリイの言葉を遮り、いつの間に移動したのやらそのセリスとか呼ばれた少女の蹴りが見事すぎるくらいガウリイの顔面に直撃した。 で、できる!? ・・・・しかもやたらとブーツの底でぐりぐりしてるし・・・・・・ それからわざとらしい口調でセリスと言われた少女は言った。 「こりは大変。大丈夫!?通りすがりの人!!」 そしてそのまま自分のブーツの下敷きにしてたガウリイの首根っこをがっと掴んで引きずり起こし、自分の元に引き寄せた。 ん・・・・?今・・・・・・ あたしが感じた疑問を口に出す前に、すぐにガウリイを地面にほおりだし再び立ち上がった。そして、こほんっとわざとらしい咳払い1つ。 あたし達の方に向き直り 「んじゃ、通りすがりの者なんで!忘れてね!あは、あはははははははは〜」 ぱたぱたと手を振りながらわざとらしいくらい明るい、むしろ乾いた笑いをしながら後ろに下がっていく。 あたしは我に返って慌てて言った。 「ちょ、ちょっと待った!!あんた、ガウリイの知り合いじゃないの!?」 「違うわ。」 妙にまじめな顔に戻ってはっきりきっぱり言ってのける。 ・・・・嘘つけっ あたしがそうつっこむ前に 「じゃ、知らない人にいきなり蹴りを入れるなんて・・・やっぱりあなた悪ね!?」 「だから何で、悪!?」 これまたいいタイミングでびしぃっと指さして言うアメリアに反応して思いっきし抗議の声を上げる。 ・・・・・けっこぉノリのいい人らしい・・・・・・ |