Je te veux
―3―


作:マックさん♪


 現実感のない人って、たまに居る。
一緒に居たときは楽しいし、存在感もあるのに、いざ『バイバイ』と別れると、 途端に『本当に一緒に居たのかな』と思う人。
そして安積さんは、あたしにとって『そんな人』だった。
おまけに、展開が早いし、安積さん自身もあたし好みだったりするから、 これはあたしの妄想ってやつじゃないかと思ってしまう。

 7時を5分程過ぎて駐車場へ降りたあたしは、柱の奥に立っている安積さんを見付けた。
「遅くなって、ごめんなさい。」
「いや。」
笑いながら、助手席のドアを開けてくれる。
あたしはタイトスカートに気を付けながら乗り込んだ。
「今からだと、ファミレスくらいしかないけど、いい?」
「あ、はい。」
男の人と二人きりで居ることが居心地悪くて、つい、返事が素っ気なくなってしまう。
「・・・林さん。付き合った人とかいないの?」
「居たには居たんですけど・・・。
 あたしと居るとつまらないって・・・。」
オドオドして、あまり喋らなくて、一緒に居るだけで息が詰まると言われた。
学校ではそれなりだったのに、二人きりになった途端、つまらなくなった、と。
そう言ったら、安積さんは急に笑い出した。
「一回会ったくらいで決めるなんて、そいつの方こそつまらない奴だな。
 林さんは、居心地のいいポジション探してるだけなのにね。」
・・・ビックリした。
そんな事言ってもらえるとは思わなかった。

 車はファミレスに滑り込み、それなりに賑わっている店内へ案内された。
「ところで。
 来てくれたって事は、俺と付き合ってもいいって事?」
席に着くなり、突然切り出されて、返事に困る。
でも、この人と付き合ったら、楽しいかもしれない。
会社では分からない、以外な面がたくさんあって、驚かされてばかりだし・・・。
「・・・こんなつまらないあたしで良ければ、こちらこそお願いします。」
「ありがとう。
・・・それからもうひとつ、誤解のないように言っておくけど、 俺、まだ誰とも結婚する気はないんだ。」
「誰とも・・・?」
 その一言で分かってしまった。今までの言動が。
あたしなんかはとても平凡で、彼女がたくさんいる安積さんには、 どう言えばあたしが興味を持つか、よく分かっていたんだ。
「俺は相手には不自由しない。
 でも、林さんとも付き合ってみたいんだ。」
この人が望んでいるのは、そーゆー関係有りの高校生みたいな付き合い方。
先の事は考えないで、今を楽しむだけの付き合い。
「でも、会っているときは、その人の事だけしか考えないよ。
・・・どう? 林さん。」

 あたしは目の前にいる人を見た。
外見は格好いいと思う。好みだ。
自信過剰気味な物言いも、あたしとは正反対で新鮮だし、 女子高だったから、軽い恋愛もしたことがない。
少しは男の人に慣れた方がいいのかもしれない。
何より、これは夢かもしれない。
だったら、飛び込んでみよう。

「夏波(かなみ)って、名前で呼んで下さい。
 苗字で呼ばれるの、あまり好きじゃないの。」
「分かった。会社以外ではそう呼ぶよ。
・・・皆には内緒で、ね。」

お手洗いの鏡の中には、夢の中のあたしがいた。
いつもの真面目なだけのあたしじゃなく、小さい子供が悪戯してるときみたいな顔してる。
 これは夢。
だから何があっても進んでみよう。






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