「精神の崩壊する音を聞いた事はあるかい?」
 漆黒の瞳が真っ直ぐにあたしを見据えている。躊躇いや戸惑いなんて感じた事があるのだろうか、と疑問に感じるような眼差しだった。
「彼の精神は崩壊していると思うかい?」
「………さぁ? 見当もつかないわ」 
「僕はね、もし彼の精神が崩れようとしているならば、その音を聞きたいと思っているんだよ。リナ=インバース」 
 爬虫類が口を利けるとすれば、きっとこんな口調になるんじゃないだろうか。
 それほどに目の前の男は人間味から遠く懸け離れた印象なのだ。
「あ、そ。じゃああんたが早く捕まえれば? アルヴァート=クリスン」
「僕は生来から荒事には向かない性質でね」
「じゃあどこか安全なところで高みの見物でもしてなさいよ、大人しくね」
 アルヴァートは切れ長の瞳を細めた。笑ったのだと理解するのに時間を要した。
「だから、それはできないのだと言ったじゃないか。彼と向かい合いたいんだよ、僕は。邪魔はしないと誓おう。君たちと同行させて欲しい。そして彼を見つけた時に、彼の精神の崩れる音を聞きたい。希代の殺戮者、ジャック・ザ・リパーの精神の崩れる音を」
 紅を塗っているわけでもないのに異様に赤いその唇が、歪む。
 笑みの形を取った唇からさえも、そこに感情の欠片を見出せない。
 あたしは、気分の悪さを拭いきれなかった。



 
―静寂と孤独の狭間を彷徨う夜―
(第一話)

作:あごんさん



「リナ=インバース様、でいらっしゃいますね?」
「違います」
 静かな魔道士協会の図書閲覧室で、かけられた声をあたしはにべもなく一蹴してやった。が、敵もさるもの。
「リナ=インバース様ですね」
 再びかけられた声は、質問というよりも確認の色が濃いものだった。しかしこのあたしを舐めてもらっちゃあ困る。この手の問答には慣れているのだ。場数が違う――ってこんな事に慣れているって事実はちょっとイヤかもしんない。
「しつこいわね。違うって言ってるでしょーが」
「先ほど受け付けにて記帳されてますよね? 係の者にも確認致しました」
 まったく。しつこい食べ物としつこい男ほど苛立たしいものはない。
「ここは図書閲覧室でしょ。本を読む以外なら出ていきなさいよ。あたしは本を読んでるの。邪魔よ邪魔」
「ルードン・シティの市長秘書を務めておりますルワードと申します。是非市長がお目通り願いたいと申されております。ご同行願えますか?」
 補足しておこう。融通のきかない男は苛立ちを超えて呆れさえも覚えるものらしい。
「ご用件につきましては市長邸にて………」
 決して少なくない人数がいるこの閲覧室の真ん中で、人々の視線を集中させていることに気付いているのかいないのか。ルワードは声を潜めることもなくそう言葉を続ける。
 ちっ!しょーがないか。
「見当はついてるわ。切り裂きジャックの事件について、でしょ」
 ざわざわざわっ。
 あたしの声に反応を示すざわめきがこの広い部屋を満たすのに一瞬の時間もいらなかった。
「いいでしょ。市長に伝えてちょーだい。リナ=インバースが出向くってね。夕食は豪華にお願いするわ。連れも同行するけど、ま、十人前もあれば何とか足りるでしょ」
 言うだけ言ってあたしは再び手元の書物に視線を落とした。
 いまだざわめきが消えない図書閲覧室を、ルワードは来たとき同様に音もなく退室した。
 あたしはそれきり彼にもこの部屋のざわめきにも興味を失い、読書へと没頭したのだった。

 あたしがルードン・シティ魔道士協会図書閲覧室を出る頃には、陽は既に傾いていた。う〜みゅ。午前中からこっち詰めっぱなしで腰と肩が重いぞっ!
 さて、と。宿屋で待ってるガウリイもお腹の虫にさぞかし食事の催促をされていることだろう。
 とりあえず一旦宿屋に戻ってガウリイと合流しないことにはしょうがない。それから市長宅へと向かえばいいだろう。
 やれやれ。メンドくさい事件にまーた関わりそうだなぁ。
 あたしは憂鬱なため息を一つ落として帰路を急いだのだった。



 そもそもあたしとガウリイがこのルードン・シティに来た目的は、世界一の蔵書を誇ると言われている図書閲覧室だった。古文書から妖しげな宗教書。料理のレシピ本から子供向け妖怪百科。ありとあらゆる本が所狭しと並べられているこの閲覧室――通称博物館に、ちょっとした調べモノがしたいがために寄ったのだ。ルードン・シティに足を踏み入れてから早や十日が経過している。その間あたしはここと宿屋を往復しているだけの生活を送っている。ガウリイはどーやらかなりヒマを持て余しているらしいのだが。
 そしてこの七日間の間に事件は起こった。
 娼婦連続殺人事件といわれるそれは、通称切り裂きジャック事件とも言われている。
 深夜、この七日の間に娼婦が既に三人も殺害されているのだ。殺された三人は全て腹部を切り裂かれており、しかも内臓の一部を持ち去られているらしいのだ。
 十中八九、精神異常者による犯行だろうといわれている。
 あたしもその考えに異存はない。
 ここルードン・シティはつい先日に、タウンからシティへと変わったばかりだ。
 ルードン・シティの前身であるルードン・タウンは、僅か五年の間に爆発的に人口が増えた。どこの国でもそうだが、タウンの人口は一万から三万人で、それ以上の人口を超えるとシティへと名称もその質も変わるのだ。
 質で変わるといえばまずは治安である。
 例えば町の有志で結成された自警団が、市になると領主に雇われた役人へと変わる。いや、大抵の村や町でも役人はいるのだが、あくまでそれは出張という形なのだ。市になるとそこに役所が出来、役人がそこに勤めるようになる。
 そして税金も変わってくる。その町や市や村の規模に比例するのだが、やはり市というところは課税が多い。人口が多いとそれだけあらゆる事業や行事や治安にお金がかかるのだ。
 何にしてもそうだと思うが、何かが何かに変貌する際には必ずトラブルが発生するものである。例えば友人から恋人へ、とか。或いは恋人から夫婦へ、とか。
 ルードン・タウンはシティへと変わることによって幾つかの発展と混沌をその胸に抱え込んだのだろう。
 この事件はその混沌が表に出たものだろうと思う。
 などとつらつらと考えながら歩いているうちに、あたしは宿屋に到着していた。ま、どうせ博物館と宿屋に往復しかしないだろーからってことで、博物館に一番近い宿屋を選んでいたのだからすぐ着いちゃうんだけど。
 あたしはわざとぱたぱたと足音を立てて、二階へと昇り奥から二番目の部屋の前でぴたりと足を止めた。こんこんと軽くノックをして、ちょっと甘えた声で部屋の中で不貞腐れているであろうガウリイを呼ぶ。
「がーうりっ♪ ご飯食べに行こっかv」
 しかし、あたしの声に応える声は無い。
 む。
「ガウリーーイ。ただいまって言ってんのよ。開けるわよ」
 言ってノブに手をかけた時に初めてあたしは気付いた。
 扉の向こうからガウリイの気配が伝わってこない事に。
 がちゃりと音を立てて開けた先には、やはりガウリイの姿は無かった。
 ふむ?
 一体どこへ行ったのやら………あたしを置いて先にご飯を食べる根性はガウリイには無いし。
 行き先に心当たりは約二箇所。
 はてさて、彼か彼女か。どちらの元へ行ったのやら。
 あたしは右に一回首を捻ってから、うし、と頷いてから今昇ってきたばかりの階段を降りたのだった。
 とりあえず近い方から当たってみるか。



「おーリナ。よくここがわかったなぁ」
 毎度のことだが、ガウリイがのほほんと手を振りながらこっちに近付いてくる。
「そりゃわかるわよ。あんたの行く所なんかこの街じゃあ限られすぎてんだから」
 あたしはちょっとだけ肩を竦めてみせた。
 ここはあたし達の陣取ってる宿屋から通りを三つ挟んだ所になる小さな花屋さんである。ガウリイの横にいる小さな――とは言ってもあたしよりは身長はあるんだけど――人影に視線を移す。その人影は華奢な身体の線を持っている。
「ごめんね。ニーナ。ガウリイが迷惑かけなかった?」
「そんな事! 本当に助かってますよ」
「本当に? 正直に言っちゃっていいのよ」
「いえっ! 初めて会った時から助けてもらいっぱなしで申し訳ないくらいです!」
 ニーナは大袈裟なほどに顔の前で手を左右にぶんぶか振っている。
 う〜〜みゅ。可愛い女性よね、本当に。
 彼女と会ったのはあたし達がこの街に到着したその日の午後のことだった。午後とはいえどちらかといえば夕刻に近い時間帯、彼女ニーナはなんとも柄のよろしくない連中に絡まれていたのだった。それを偶然通りかかったあたしとガウリイでぐーの音を出ない位にブチのめし、感謝した彼女はその日、あたし達を夕食に誘ってくれた。
 その手料理のおいしかったこと!
 すっかり感激したあたし達がニーナを褒めぶっちギると、ニーナもいたく感動したらしく、気が付けばあたし達は夜がとっぷり暮れるまでニーナの家の食堂で話し込んでいた。
 ニーナはあたしと一つ違いの十九歳。なんでもまだこの街に越してきたばかりで友人もそんなにいないとか。日頃の寂しさも手伝ったのだろう、ニーナは辞去しようとしたあたし達にこう言った。
 ―――お暇な時があればでいいんですけど、また是非遊びにいらしてくださいね。
 内気そうな彼女にとっては最大限の勇気を振り絞った言葉だっただろう。小さい顔は真っ赤になって、しどろもどろな口調はとても可愛らしいものだった。
 それ以来、あたしに全くもって相手にしてもらえなくなったガウリイは、しょっちゅうここへ足を運んでいる次第というわけである。う〜みゅ。自主性の無い男だなぁ。
 あたしはきょろりと辺りに視線を巡らせてから、ニーナに顔を向けた。
「今日は来てないの? ハロルドのやつ」
 ハロルドと聞いて、ニーナは瞬時に真っ赤になった。
「ハッハッハリーは今日は来てないんですっ」
「ハッハッハリー? 本名より愛称が長くてどーするのよ」
 あたしがにまりと笑ってニーナの顔を覗き込むと、ニーナはますます顔を赤くした。う〜〜ん、小さい男の子がよくやる可愛い女の子をからかう気持ちってのがわかるわぁ。
 ハリーことハロルドは、ニーナの恋人――とまではいかないが、まぁそーゆー微妙な関係にある男のことだったりする。あたしの見る限りではハロルドもニーナもお互いのコトが好きみたいなんだけど、どうもなかなかそういう関係に踏み込めないらしい。
 あたしからすればハリーの甲斐性なしとしか言えないんだけど。
 先ほどあたしが思いつくと言っていたガウリイの行き先の残り一つである。
「あ、でも今日はニーナのお兄さんが来てたよな」
 ガウリイがぽむりと手を叩く。
「あ、お兄さんが来てたの?」
「ええ。心配して見に来てくれました」
 ニーナが嬉しそうに微笑んだ。今となってはこの世でただ一人、自分を案じてくれる家族なのだから、それは嬉しいだろう。あたしはまだ見たことがないんだけどね。
 ニーナは初めて会った夜に色々と話してくれた。
 自分は私生児であること。
 それまでたった一人の家族だった母親が急死したこと。
 そしてたった一人で葬式を出して、たった一人で小さな町で泣いて夜を明かしたこと。
 その時に手を差し伸べてくれたのがこのルードン・シティに住む異母兄だったこと。
 哀しいことなんだけど、やっぱし未だに世間は私生児に対しての視線が冷たい。不義の子だと言っては人は石を投げる世の中なのだ。生まれた子供に不義も何も無いのに。
 ニーナの父親はこの街の有力者であるらしい。ニーナは未だに父親に会ったコトがないらしいが、兄が家と金を用意するから、この街に来てくれとそう誘ってくれたのは去年の今頃の、ちょうど初夏。
 父親も大層自分を気に掛けてくれているらしいが、それでも妻の目もあって会える可能性は無い。その異母兄さんとやらは母親にも父親にも内緒でニーナをルードン・シティに呼んでくれた。忙しい仕事の合間を縫って時折様子を伺ってくるらしい。
 小さいながらも花屋を営んでいけるのは兄さんのお陰です、と少し酔ったニーナはあの夜に儚く、でも嬉しそうにそうぽつりと零した。
「あ、リナさん。ガウリイさんに御用だったんじゃないんですか?」
 ニーナが大きな藍色の瞳をくるりとこちらに向けた。
「あー、そうだったわね。まぁ、もうちょっと後ででもいいし。とにかく暑いからちょっとあそこに入ってもいい?」
 あたしが上目遣いでニーナを見上げるとニーナは眉を下げた。
 ありゃ。
「すみません、リナさん。ちょっと昨日の入荷が多くて、入れそうもないんです………」
 実に申し訳なそうなその声にあたしは手を振って笑った。
「あはは! いーわよ、仕事なんだからさ。謝ることじゃないでしょー」
 あそこ、というのは花を保管、管理しておくための保冷庫のことである。以前アトラスの町で知り合いが温室とゆーそりゃもう高価な草花の保温庫を使っていたのだが、それの冷蔵版のことだ。夏季の暑さに参らないようにと石で囲まれた庫内に花を入れて、そこに大きな氷塊を二・三個ほど入れておく。そうすると庫内が冷やされて花の保ちが良くなるのだ。
 あたしはうだりそうな時にそこに入れてもらって、一時的に暑さを遣りすごしてたりする。
「そうだぞ、ニーナ。リナの我侭を全部聞いてたらそりゃあ大変なんだからな」
 にこやかに笑いながらいつものよーにあたしの頭に上に手を置いて、ガウリイは二・三回ぽんぽんと軽く叩く。
「やかましいわね。いーつあたしが我侭言ったってゆーのよ!」
「大体毎日」
「炸陣裂っ!!」

 ちゅどぼむっ!!

 派手な音と光と煙を出して、今日もガウリイはよく飛んだのだった。
「あぁ………ガウリイさん………」
 出会ってまだ十日しか経ってないけど、見慣れてしまったこの光景にニーナはおろおろとあたしと全身くまなくまっ黒コゲになったガウリイとを見比べていた。
「気にするこたないわよ、ニーナ」
「はぁ………。いつも思うんですけど、リナさん達って羨ましいです」
 前半は戸惑い気味に、後半は瞳を潤ませてニーナはしんみりとそう言った。おや、とあたしは眉を上げる。どことなく沈んだその口調が気になったのだ。
「何がよ?」
「本当に全て信頼してあってるんだなぁって思います」
 ? いきなし何を言い出すのか。
 あたしは肩をひとつ竦める。
「ハロルドとニーナだって信頼しあってるじゃない」
 あたしのその言葉にニーナは「そうでしょうか」と力無く微笑った。
 何か、悩んでいるのだろーか。そうあたしが切り出そうとした時だった。

 がたがたどだばっ!

 騒々しい音が店先から聞こえた。あたしは大きく嘆息する。振り向く必要もなくその音の原因とその音を出した相手がわかるからだ。
「あによ、ハロルド。いちいちあたしがいるからって大袈裟な音出してんじゃないわよ! 毎回毎回!」
 半ば呆れ、半ばむかつきながらあたしは振り返ることなく後方に声を投げ放った。
「ああああああああああああっ! すみませんっリナ=インバース様っ! お気に障りましたでしょうかっ!?」
「障るわいっ! 思いっきしっっ!!」
 叫びつつあたしは懐から出した伝家の宝刀(みたいなモンだろーと思う)のスリッパを振り返りながらハロルドに投げつけた!

 すぱこぉぉぉんっ!  

 景気の良い音を出してスリッパがハロルドの顔面にぶち当たり、ハロルドはそのままふんぞりコケた。赤茶けた髪がひるがえる。
「ああっ! ハリーっ」
 ニーナが小走りでハロルドに駆けていく。
 まったく心配性なんだから。男の子は生まれた時からスリッパで女の子に殴られまくるとゆー運命にある生き物だとゆーのに。
 あたしは横目で二人を見てから鼻で息を吐き出した。
 この男、ハロルド=マクラクランは出会った時からこうだった。
 ニーナに出会い夕食に招待されたことは前述しているがその後のこと。ハロルドは宵の口にニーナの家にやってきた。そしてあたしの顔を見るなり物凄い勢いで後退さると、完全に腰がひけまくった状態で顔面を白くして、あたしに震える指を差して、
『あああああああなたはひょっとしてっリナ=インバースさんじゃっ!?』
 そう確信のこもった質問をしてきた。勿論あたしは、そうよ、と軽く頷いたのだが。その瞬間。
『ひぃぃぇぇえぇぇぇえぇぁぁあぇぁっ!!??』
 奇声を発してその場にうずくまると事もあろうに、
『ああああっ有り金は全て差し上げますからっニーナだけは助けてくださいいいいいっっ!』 
 とのたまったのだった。
 あたしはかなりカチンときたし、ニーナは戸惑いと動揺を隠し切れずオロオロとして、ガウリイは相変わらずのほりとしていたのだった。あたしは本脳に任せるままにハロルドを踏んづけて、できるだけ友好的に首根っこを捕まえて事情を問いただした。
 すると、どうやら以前どこぞの町であたしがちょっとした運動(話を聞く限りではチンピラとゴタゴタしてたらしい)をしていた時にその場に居合わせ、なぜかただ運動をしていただけのあたしのとばっちりを受けて軽症(ハロルドが軟弱なのか二ヶ月ほど寝込んだらしいが)を負ったらしい。
『いや、あれ以来栗色の髪の女性を見ただけで拒絶反応が………』
 そう言いかけたハロルドはあたしの睨みひとつで小さくなったのだが。とにかくそーゆー経緯でハロルドはあたしを見る度にこういった過剰な反応を示しているのだ。
 うっとしーことこの上ない男である。
 さて、と。これ以上あたし達がここにいたらハロルドもニーナも話しにくいだろうし、そろそろ市長の家にでも行きますか。
「じゃね。ニーナ。あたし達はちょっと野暮用があるから行くわ」
 あたしは軽くウィンクひとつしてニーナに手を振った。ニーナも優しく笑って手を振る。
「はい。それじゃまたです。リナさん、ガウリイさん。今日は手伝ってもらえて本当に助かりました」
 ガウリイに向かってペコリと頭を下げるニーナを見て、あたしは苦笑した。
「こんなんで役に立つならいつでも使ってあげて」
「そんなっ! 本当に助かったんですよ、リナさん!」
 懸命にガウリイを弁護するニーナにあたしはまた笑った。
 わかってる。ガウリイが何にでも一生懸命なのはあたしが一番知ってるから。
 そう心の中で呟いて。
「ほら、ガウリイ! いつまで寝てんのよ! 行くわよ!」
 あたしが急かせるとガウリイは「いてて」と後頭部をさすりながら起き上がった。
 そしてあたしとガウリイはニーナの家を後にして、街に中心にある市長宅へと向かったのだった。
 一度だけ振り返った時に見た二人は、仲睦まじく肩を寄せ合い微笑んであたし達の背中を見送っていた。
 この時のあたしに、これ以降この二人が仲良く並んでいるところを見ることがないなんて、わかるはずもなかった。





貰いモノは嬉し!へ戻る