|
〜Haruichiパート〜
「ヘックション!!」 朝の秋風が冷たくなってきやがったぜ。 残念ながら、俺達の夏の選手権は、あっさりと終わった。 決勝まで上り詰めたが、東山先輩の怪我で、途中退場。 ジョーシマのおかげで、体力もついて、80分間運動量のおちない体になった。 PKまでいったんだが、5人目が外して、俺の夏の選手権は終わった。 いまは、冬の選手権に向けてがんばってるんだ。 もうすぐ、秋季大会も始まるからな。 東山先輩との最後の大会だ。かならず、国立までいってやる。 「ハルちゃん、一周おくれだよぉ〜。」 後ろから、タカシの声。 マジかよ!! 「くっそ〜〜〜!!考えすぎたぁ〜〜〜!!」 おれは、スピードUPして、5キロを走り抜けた。 「まぁ〜だ、バテてんのかいなぁ。山口君わぁ。」 頭の上を通り過ぎるジョーシマの声。 もう、何度目だ、このシチュエーション。 「悪かったなぁ。ペース配分むちゃくちゃでぇ。」 俺が、いつものように悪態をつく。 そのまま、地面に倒れこんだ。 「ええかげんにせいや!!」 ジョーシマの切れた声。 初めて聞いたぞ。 「ハルイチ!!ええ加減にせいや、おのれ!!」 ジョーシマは、俺のジャージの胸ぐらを掴んだ。 「なんぼ言うたら、わかるんや!おのれは、チームの中核なんやぞ!!えーかげんな事すんなや!! そんくらい自覚持てや!!!」 初めてみた、ジョーシマの怒りの表情。 「………………。」 怒られた事が、ショックだった。 ジョーシマを信頼してた、自分がいた事に。 まだ、あの雨季の約束から、数ヶ月しか経ってないのに。 なにやってんだよ、俺。 全然わかってねぇ〜じゃねえか。 ジョーシマが怒って当然だよ。 「悪かったよ。ジョーシマ。」 絞り出したような俺の声。 「わかったら、ええねん。」 ジョーシマは掴んでいた手をゆっくりと離した。 そして、その場を去る。 「ハルちゃん。」 心配そうに、タカシが手を伸ばしてくる。 俺の顔は、今そんなになさけないんだろうか。 俺は、その手を取らずに自分で立ち上がった。 「ジョーシマ!!」 俺は、腹の底から叫んだ。 「なんや、ハルイチ君。」 グラウンドに佇むジョーシマが、めんどくさそうに、振り返る。 「俺は、絶対に巧くなってやるからな!!覚えとけよ!!」 俺は、そう宣言する。 ジョーシマは、ニヤッと笑って。 「やれるんかぁ?わいの力無しに。」 「絶対なってやる!!」 俺は怒りも露にそう叫んだ。 くっそぉ〜見てろよ!! 俺は、そう思うと同時に、走り出した。 「お、おい、ハルちゃん!!」 タカシの制止の声を振り切って、俺はどんどん走っていく。 「お〜い、ジョーシマ。」 タカシのジョーシマに駆けて行く姿が視界に入りながら、 俺は、黙々とただ、自分の吐く息の音を聞きながら走り続けた。 「ハルちゃん。大丈夫かぁ?」 タカシの声。 「あぁ、大丈夫だぜ!!」 俺はそう返す。 正直めちゃめちゃ辛い。 だが、弱音は吐いてはいられない。 もう、あれから一週間。 ジョーシマは、ただ黙って自分の練習をしながら俺を見ていた。 その視線がある限り、絶対に俺は弱音ははかねぇ。 その気持ちで、毎日トレーニングを繰り返す。 練習の為の練習ではなく、試合に生きる練習を続ける。 その意味をかみ締めながら。 休憩するために、グランドの端に座り込んだ。 「ちょっとは、ジョーシマに相談したらどうだい?」 タカシが俺の前に立つ。 「タカシ。」 タカシの意外な提案に驚く。 「無理しすぎだよ。ハルちゃん。ジョーシマだってハルちゃんが嫌いなんじゃないんだからさぁ。」 「すまん、タカシ。それは、俺にはできねぇ〜んだ。」 俺は、立ち上がり、ジャージに付いた砂を払い落とす。 「なんで、そこまで意地になってるんだいハルちゃん。キャプテンだって、心配してるよ。」 立ち上がった俺の肩を掴むタカシ。 「意地かぁ。そうかもしれない、でも今は俺が出来る事、全部やっておきたいんだ。もう、後悔したくねぇから。」 「たくぅ、ジョーシマも、ハルちゃんもお気楽そうに見えて、マジメなんだからねぇ。」 頭をかくタカシ。 「じゃぁ、次あるから、行くよ。」 俺はそう言うと、東山先輩の方に歩き出した。 「ったうぅ。融通がきかないねぇ。昔から。」 タカシの苦笑い。 あぁ、へんなところで融通がきかねぇよ。俺は。 そう思いながら、東山先輩の元へ走りだした。 「そこが、ハルちゃんの良いとこでもあるんだけどねぇ。」 その、タカシの呟きに俺は、気がついても振り返ることは無かった。 「ハルイチ。ジョーシマと、組んで練習していないが、どうしてだ?」 東山先輩は、一年の練習を見ながらそう言った。 「すみません。自分が我が侭を言ったばっかりに、ジョーシマに愛想つかれました。」 俺は、胸を張る。 事実だ。怒られてもしかたがない。 「そうか。なら、お前の気が済んだら、謝っておけ。」 先輩はただ、そう言葉を告げる。 「へっ?」 俺は思わずほうける。 「友人で、チームメイトなんだぞ。そういう相手は大事にしておけ。 つまらんケンカで、仲たがいして、棒に振るのもおかしいだろう? まぁ、ジョーシマの奴はもう、気がついてるみたいだがな。」 と、無駄の無い動きで、視線を一年から、ボール回しをしている、 2年のなかで、一人たたずんで、こちらを見ているジョーシマがいた。 「ほらな。」 東山先輩の視線に気がついたジョーシマは、跳ねるように動き出した。 「そうですね。」 俺は笑みを浮かべた。 「そういう、相手の事を気遣う事は、サッカーにも、人間関係にも大事な事だ。 よく覚えておけ。」 東山先輩は、珍しく笑顔だった。 「はい!」 俺は、ジョーシマの方に向かって走りだした!! 「俺も練習混ぜてくれ!!」 「はよこな、いれたらへんでぇ〜!」 ジョーシマの声。 「今行くぜ!!」 秋空に声が吸い込まれて行く。 |