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FINAL. 瞳を閉じて 2020年、4月。 弓月は、長年暮らした家を見た。 2年前に妻・美那子が死に、子ども達は独立した。 歳三は妹の後を追うように美那子の死の一ヶ月後に心臓発作で亡くなった。 そして義理の両親も亡くなった。 かつて賑やかだった渡辺家には、今や総司だけとなった。 (俺ももう、45か・・・) 日に日に年老いてゆく身体に弓月はため息をついた。 晴明は時折弓月を訪ねてきては、世間話をして帰っていった。 昔は無理矢理コスプレさせられたが、今はもう、コスプレには興味が無くなったようだ。 かわりにHIPHOPダンスに目覚めたらしく、65にもなるというのに、毎日ダンススタジオに通っているという。 「いい天気ですねえ。」 総司は昔を懐かしむように言った。 弓月は静かに頷いた。 その2日後、総司は静かに息を引き取った。 弓月は、遂に1人だけとなってしまった。 ある日、弓月は病院へ行き、末期の胃癌だとわかった。 死ぬことを、もう恐れていなかった。 2020年7月、弓月は危篤状態となった。 「父さん、しっかりして!」 娘達と孫が病室に駆けつけた。 「もう・・いい・・母さんの元へ・・逝かせてくれ・・」 そう言うと弓月は瞳を閉じた。 いつの間にか弓月は渡辺家の玄関に立っていた。 『弓月、そんなところに突っ立ってないで、来なさいよ。』 美那子が微笑んで、弓月の手を引っ張って、リビングへと向かった。 そこには、花月と、渡辺家の面々が微笑んで弓月を待っていた。 『ちょっと遅かったですねえ。』 総司はニコリと弓月に微笑んだ。 歳三が弓月を強く抱きしめた。 『会いたかったぜ。』 歳三を押しのけ、花月が弓月が窒息しそうなほど抱きしめた。 『弓月、会いたかったぞ、我が弟よ!!』 『兄者、苦しい・・』 『弓月』 美那子が弓月に手を差し出した。 『おかえりなさい。』 弓月は美那子の手に自分の手を重ねた。 『ただいま』 2020年、7月7日。 弓月は胃癌で死去した。 享年45歳。 |