Desire

作:千菊丸さん



Part6.謎の人物(いよいよ「あの人」が登場)

弓月と美那子の情事(下品!)の写真が2人のクラスにばらまかれてから、数日が経った。
あいからわらずクラスメイトが2人を見る視線は冷たい。さなえと遮那王を除いては。
美那子へのいじめは並大抵のものではなかった。頭から水をぶっかけられ、通りすがりに罵られた。
唯一クラスメートが誰1人としていない水泳部が心の拠り所であり、癒される場所であった。
部活の先輩達は美那子を何かと励ましてくれた。
また家でも総司や敬助達が美那子を慰め、励ましてくれた。
兄妹っていいな。
美那子はそう思った。
一方弓月は、常日頃弓月に反感を抱いている男子達に対する嫌がらせを受けていたが、当の本人は
あんまり気にしていないようだった。剣道部でも弓月に何かとケチをつける輩がいるが、弓月が毅然とした態度を取っているのでその内飽きてしまったらしく、弓月へのいじめはピタリと止んだ。
と同時に、美那子のそれも、ある日突然なくなった。
原因は、わからない。
あの時は、一体何だったのか・・。
翌日、美那子達の担任が急病で入院し、代わりに若くてハンサムな男の先生がやって来た。
「野村康秀」
と、彼は黒板にそう書いた。
野村がこの学校にやって来てから、不思議な出来事が起こった。蛍光灯が突然割れたり、さなえが所属しているテニスクラブで練習中、ネットが炎上したり・・しばし学校は、大騒ぎとなった。校長は、騒ぎが収まるまで休校にするという措置を取った。
美那子は、野村を怪しんだ。美那子へのいじめが止んだのも、2つの怪事件が起きたのも、全て野村の仕業だと美那子は思っていた。早速美那子は、野村を近くの公園に呼びだした。
野村は驚いた様子であったが、やがて静かに語り始めた。
「確かに、全て私がやった事だ・・美那子よ。」
美那子は驚いた。
「何故、私の名前を知っているのです?」
「忘れたか、私の顔を。」
美那子は野村の顔をふいに思い出した。
「晴明・・様・・?」
「そうだよ、美那子。」
今美那子の目の前にいる人物は、美那子に鬼退治を命じた陰陽師・安倍晴明である。因みに野村というのは偽名である。
晴明は、美那子に言った。
「美那子よ、あの少年はどうした。」
「・・・・・弓月を知っているのですね。」
美那子は正直驚いた。まだ会ってもいない弓月を晴明は知っていた。
晴明には生まれつき、人の心を読んだり、失せ物を探し当てたりする能力を持っていた。
平安の京都で、一躍有名となった男である。
晴明は平安時代に一度死んだが、神々のお力を授かり現代に蘇った。彼は、この世にはびこっている「鬼」達を退治するように美那子に命じた。晴明は、弓月の事を言った。
「あの少年は・・・鬼と人との混血だ・・今の所変化する気配はないが・・やがて、お前に災難をもたらすだろう・・。」
「そんな先の事など、判りません・・弓月がもしそんな風になったとしても晴明様・・私は・・」
美那子は腹に力を込めて言った。
「私が止めて見せます。たとえ私の声が彼に届かなかったとしても・・人を傷つけて喰らったとしても・・彼の心の奥底にある「人」の心を取り戻させてみせます。たとえ、私の命と引き替えでも・・」
「その言葉、忘れまいぞ。」
晴明はそう言うと、流れ星の様に消え去った。
美那子は制服の胸ポケットを探った。
小さな写真入れには、美那子と弓月のツーショット写真が入っていた。桜の木の下で、微笑む2人。
物語は、新たな展開を迎える。



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