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Part.57 夏休み 彰子は夏休みの宿題を終え、妹の世話を積極的にした。 妹の理恵は生まれてまだ8日経ったばかりだが、彰子の呼びかけに反応してキャッキャッと笑う。 彰子はそんな妹を愛おしく思うのだった。 炎天下に弓月の診療所に花月がやって来た。 花月はニューヨーク出張の前に2人の姪の顔を見に来たのだ。 「おや、彰子ではないかえ。」 花月は彰子の姿を見るなり、彰子を抱き上げてキスした。 ついでに理恵を抱き上げ、頭を撫でた。 そして花月は弟の元へと行った。 「久しいのう、我が弟。」 「お久しぶりです、兄者。」 「元気そうでなによりじゃ。」 花月はタバコを吸いながら言った。 「兄者は最近顔色が悪いですね。無理なダイエットでもしてるんですか?」 弓月は花月の青白い顔を見た。 「このスレンダーな体型を維持する為なら、絶食しても平気じゃ。」 そう言うと花月は2本目のタバコを吸い始めた。 「無理なダイエットは体に毒ですよ。骨がスカスカになりますし、肌が荒れます。タバコもそうです。」 肌が荒れる、という言葉に花月は敏感に反応した。すぐにタバコを灰皿に押しつけた。 何せ花月は毎日泥パックをつけ、美肌効果のある化粧品をかたっぱしから買いあさっている程肌に人一倍気を遣っているのだから。 そんな兄の心を知ってか知らずか、弓月はさらりとこう言った。 「ま、体に悪いことはしないでくださいね。」 (立場が逆転してしまった) 久しぶりに会ったと思ったら1枚上手になった弟に、花月はぐうの音も出なかった。 花月が成田へと出発した後、弓月はため息をついた。 3ヶ月ぶりに会ったものの、いまだに無理なダイエットを繰り返す兄に、弓月は呆れていた。 過去に花月は重度の貧血でブッ倒れている。 それに栄養失調で点滴を受けたこともある。 自分の美に執着するあまりに健康をそこなっている。 医者である弓月は兄の行動をそう判断した。 なんとかやめさせなければならない。 一筋縄ではいかない性格だ。どう言えばやめてもらえるだろうか。 弓月はまたため息をついた。 |