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Part.47 望み 美那子の妊娠は順調に進んだ。 弓月と総司は出産を心待ちにしていた。 そんな、ある日。 何の連絡もせず歳三がマンションにやって来た。 以前の様な覇気は感じられず、心なしかやつれたような気がした。 「美那子・・助けてくれ。」 美那子は驚いた。兄はプライドが高く、他人に救いを求めることもなかった。 話を聞くと、歳三は無実の罪を着せられ、窮地に立たされいるとかつて上層部に君臨していた警察署に、囚人としてこき使われ、昔の仲間にそしられる悲しさ。 「兄さんはこの4ヶ月間、体重が12キロも減ったんですよ。」 総司は悲しそうに言った。総司は歳三のことを誇りに思っていたのだ。 「こんなにやつれた兄さんは初めてですよ。」 総司は泣きだし、暗い雰囲気が部屋に充満した。 弓月にある考えが浮かんだ。 「話とは何だ、可愛い弟よ。」 お前の望みなら何でも叶えてあげよう、と言うような口振りだった。 計算通りだ。 家を飛び出し、音信不通になる状態を作らせた理由もただ一つ。 濡れ衣を着せられ、死刑にされようとしている歳三を救うためだ。 歳三と弓月の仲はあまり良くなかったが、一度弓月が無実の罪を着せられた時、歳三の取り計らいで釈放されたのだった。 だから今度は警察に顔を利かせている花月に望みをかけたのだ。 「兄者、歳三義兄上のことだが。」 「あの地ビールを愛する男か。」 「助けて欲しい。兄者の力で・・。」 一瞬花月は微笑んだかのように見えた。 弓月はその笑みを信じた。 それから2時間後、総司から電話があった。 「兄さんが釈放されましたよ。」 弓月は、花月に初めて感謝した。 |