Desire

作:千菊丸さん



Part.41 兄の心、妹知らず

「駄目よ。」
美那子は弓月を押しのけた。
初めて拒絶された弓月は、ショックを隠せなかった。
「どうして?俺のこと嫌いなの?」
「違うわ。」
美那子は弓月を見つめた。
「違うわ。ただ、そういう事をするのはまだ先ってこと。」
「・・・・」
それから気まずい空気が流れた。
美那子は自分の部屋に戻ろうとした。
「どこへ行く?」
「宿題残ってるからやらないと。」
「どれくらい?」
「読書感想文3枚。あと数行で終わりなんだけど・・」
「そう。」
それ以上弓月は何も言わなかった。
弓月は嗚咽した。
その時。
ガチャリ
リビングの扉が開き、歳三が入ってきた。彼は美那子の事が心配で一足先に長崎から帰ってきたのだ。
「!」
弓月は咄嗟に身を隠そうとしたが、見つかってしまった。
歳三は怒りで身を震わせた。
彼はまだ美那子との交際を認めていない。
弓月は歳三に事の成り行きを話した。
「ほぉ。それで?」
「妹さんを俺に下さい。」
歳三は弓月を張り飛ばした。
「うっ」
弓月は壁にぶつかった。
「いいか、お前みたいな男には妹は渡さねぇ!よく覚えとけ!」
「どうしたの?」
上で騒ぎを聞きつけた美那子が駆けつけてきた。
歳三は美那子に向き直った。
「美那子、あいつと結婚することは許さねぇ。」
「・・ちょっと怪我してるわね。さあこっちに・・」
「ほっとけ、横になれば治る!」
歳三の怒りは頂点に達した。
「大体なぁ、勝手に人の家に上がり込んでおいて・・」
「あたしが入れたのよ!」
「口答えするんじゃねぇ!」
「するわよ!」
美那子は歳三を睨み付けた。
「どうして弓月を目の敵にするの?彼、行くところがないのよ。少しだけ家に置いてやってもいいじゃない!」
「嫌だめだ!俺の留守中にいかがわしいことでもをするんだろう!」
美那子は歳三に平手を喰らわせた。
「痛ってぇ・・」
「違う!弓月はそんな事しない!兄貴のバカッ!」
美那子は部屋を飛び出した。
弓月は後を追った。
1人残された歳三は悔し紛れに部屋の隅に置いてあったテーブルを叩いた。
「くそっ」
あんな事を言うつもりはなかった。
ただ、美那子の事が心配だったからだ。
いままで美那子は生まれてから歳三の傍を離れた事はなかった。
どこへ行くときでも、いつも一緒だった。
ずっと一緒だと思った。
美那子に彼氏ができるとは思わなかった。
だから正直言って弓月に嫉妬した。
「美那子、俺はただお前の事が心配なんだよ。」
歳三は小さく呟いた。
妹の身を案じる兄と、兄に反発する妹。
兄と弟もややこしいが、兄と妹もややこしい。


Part.40へ戻る / 貰いモノは嬉し!へ戻る