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Part.33 後悔してない 「源そこ!もっと感情を入れて!」 晴明の怒鳴り声が今日もホールに響く。 ここは慶永高校の演劇部の練習室。 弓月はここ数日、芝居の稽古に汗を流していた。 晴明の指導は厳しかった。 弓月のちょっとしたミスでも、怒鳴り散らした。 弓月は始め反発したが、次第に晴明の忠告をおとなしく聞くようになった。 そして最後の稽古の日が来た。 弓月は精一杯の力を振り絞った。 そして稽古は終わった。 明日は、本番だ。 自宅に戻った弓月は、自分のベッドに倒れ込んだ。 (ああ・・練習はきつかった・・でも・・) 翌朝、弓月と花月は公民館へと急いだ。 「みんな、ベストを尽くせ!たとえ失敗しても、後悔するな!」 「はいっ!」 そして幕が上がった。 セルジュ役の遮那王とジルベール役の弓月とのコンビネーションは最高で、まるで本物が舞台の上にいるようだった。 ジルベールが馬車に轢かれるシーンでは、観客が息を呑んだ。 こうして、3時間にもわたる芝居は無事に幕を下ろした。 「いやぁ最高でしたな。」 「来てよかったわ。」 「本当によいお芝居でしたわ。」 賛辞の言葉が雨の様に降ってくる。 弓月は満足した。 前にフランスの全寮制の学校にいた時の事を思い出した。 憎しみ、嫉妬、蔑み。 毎日が苦しかった。 劇に出た時は後悔した。 でも今は。 「後悔してない。」 |