Desire

作:千菊丸さん



Part3.仁義なき戦い―花月VS歳三―

4月15日。
今日は花月が美那子と弓月が通う学校へ弓月の兄・花月が視察に来る日。
「どう総司兄ちゃん、髪変じゃない?」
「いいですよ〜、ラメのヘアピンが似合ってますよ。」
美那子はこの日、身だしなみに気を使っていた。
何てたって弓月のお兄様に会う日なのだ。
制服には昨夜アイロンを念入りにかけた。
第一印象は身だしなみで決まる。
(おっしゃあ!やったるぜい!)
美那子は気合い十分に学校へと向かった。
学校の門前で待っているのは、渡辺家の7男の一と、次男の敬助である。
2人は「生活指導」の緑の腕章をつけている。この2人と剣術師範の歳三はこの学校の教師である。
「スカート丈、異常なし。」
一は美那子に敬礼した。美那子は一瞬、退いた。
(おいおい、兄妹に敬礼って・・どうかと思うよ)
キーンコーンカンコーン
チャイムと共に、美那子の熱くそして長い闘いが始まった(注:この日は水曜で授業は4時間である)
HRが終わり、1時間目は古典。美那子達のクラス(1−B)は漢詩である。花月率いる視察団がやって来る時間である。
「江は緑にしていよいよ白く、山は青く花は燃えんと欲す・・」
敬助に当てられた美那子は先日予習しておいた漢詩を高らかに読み上げた。
「よろしい。渡辺。」
美那子はちらっと花月を見た。花月は表情一つ変えずに座っている。
弓月は何だか調子が悪そうであった。顔色が悪く、脂汗が出ていた。
(弓月、大丈夫かなぁ・・次体育なのに・・。)
「起立、礼、着席。ありがとうございました!」
1時間目が終わり、2時間目の体育の為に美那子は更衣室へと急いだ。
その時、人にぶつかった。
「あっ、すいません。」
美那子は頭を下げ、顔を上げたときー
その瞬間、美那子は凍り付いた。
なんとぶつかった相手は、花月だったのである。
アルマーニのスーツを着て、腕にはロレックスの時計をしている。
弓月と同じ、美しい顔。その顔から発せられたのはー
「痛いではないかえ。」
顔とは不釣り合いの、冷たい声。瞳には、憎しみがこもっている。
「す、すいません。」
「まあよい。ふんっ!」
花月が立ち去った後、美那子は更衣室で着替えていても、震えがしばらく止まらなかった。
この日の体育は男女混合の剣道であった。
美那子は幼い頃から歳三に剣術で鍛えられ、和歌山にいた頃には剣道部で1番強かった。
小学校4年生の時、全国大会の個人戦で優勝した事もある。
だから、腕には自信があった。
「小手ー!」
美那子は秋山若王丸に向かっていった。若王丸は花月が経営している会社の取締役で、自分では何もできないのに親の権力を逆手に取って威張り散らす愚か者である。剣の腕は犬畜生にも劣る。
若王丸は美那子に常日頃から敵意を抱いており、1本も取らせまいと意気込んでいるが彼は美那子から3本の内2本も取られた。
若王丸は美那子の胴に狙いを定め、突進したが、美那子にあっさりかわされ、小手を取られてしまった。
「いい気になんなよ!女のくせに!」
「そう言うのを負け犬の遠吠えっていうのよ。口ばっかり動かさないで身体も動かしたら?」
美那子は毒づく若王丸に一瞥を与え、去っていった。若王丸は唇を噛んだ。
弓月は若王丸の取り巻きで、美那子ラヴの村瀬麗一と立ち会った。小柄で、りすの様な瞳、そして小悪魔的な性格。
「えーいっ!」
声は小学1年生生の女子の様に高い。弓月は麗一の面をすかさずに打った。
「やぁーん、手加減してくれてもいいのにぃ。」
「勝負に情はない。」
麗一は頬を膨らませた。
(こいつ、バカだ本当に。)
「弓月君なんかに渡辺さんは渡さないよーだっ!」
(ああ・・頭が痛い・・)
その頃遮那王の相手は遮那王に敵意を抱いている学級委員の兼山りんである。
「このっこのこのー!!」
むなしく空振りするりんの竹刀。
「スキあり!」
すかさずりんに突きを打ち込んだ。
りんは悔し紛れに遮那王にアカンベーをした。子供じみた女である。
美那子の兄で剣術師範の歳三は、花月と立ち会っていた。
「いえやぁぁぁぁぁぁ!」
「てぇぇぇいー!」
しばらく激しい打ち合いが続いた。花月が勝つか、歳三が勝つかでこの学校の未来がかかっている。この学校を運営し、校長の裏で糸をひいているのは実は花月なのである。
つまり、歳三が負ければ廃校。
花月に勝てば存続。
美那子と他の生徒達は、息をのみながらその対決を見守っている。
(こいつ・・息ひとつ乱れていない!くっそ・・このままじゃ・・)
歳三は花月の胴にねらいを定めた。花月は打ち込んでこない。
チャンスは今しかない。
花月は歳三に向かってきた。
(今だ!)
歳三は花月の胴にに竹刀を振りかざし、打ち込もうとした。
しかし。
花月は歳三の横にすり抜け、振り返りざまに面を打とうとした。歳三は花月に小手を喰らわせた。   
「おのれぇ・・」
歳三は勝った。顔は汗だくで、頬は紅潮していた。花月は不服らしく、こう言った。
「まだまだじゃ。今度は・・」
「今度は?」
「パラパラで勝負じゃ。」
「パラパラぁ?」
全員が拍子抜けし、コケた。
パラパラ対決は、授業が終わったので放課後に講堂で行われることになった。曲目はミッキーマウスマーチの、ユーロビートバージョンである・・歳三、パラパラ歴0年。



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