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Part.28 過去の恋人(後編) 「うぐっ」 天狼は弓月の耳元に囁いた。 「お前を抱きたい。」 弓月は天狼を投げ飛ばし、改札口へと向かった。 「待て!話を聞いてくれ!」 「離せ!」 天狼の右頬に弓月は平手を喰らわせた。 天狼は弓月にしがみついた。 「俺は・・お前ともう一度・・」 「離せよ馬鹿!」 弓月は天狼を振り払った。 「あっ」 天狼は駅の柱に頭をぶつけた。 弓月はそれを見ずに改札口へと向かった。 電車を待っている間、弓月は天狼の事が頭を浮かんだ。 (あいつ、せつない目をしてた・・) だが、我に返り (駄目だ。あいつの事なんか考えちゃ。あいつはもう関係ない!) だが電車に揺られている間も、授業中も天狼のことばかり考えていた。 (何故だ?何故なんだ?どうしてなんだ?) 4時間目の体育は、テニスだった。だが弓月は乗り気ではなかった。弓月は決して体育が嫌いなわけではない。弓月は武術はもちろん球技や水泳、乗馬は得意中の得意である。 だが今日の弓月はいつもと様子が違う。 弓月は天狼の事で頭がいっぱいだった。 あいつは俺と無関係なんだ。もう関係ない。 弓月は迷いを振り払うかのように打った。 その内に天狼と別れた理由が思い出してきた。 ある日弓月は正体を隠して市に出た。だが見つかり袋叩きにされてしまった。 あの時天狼が傍にいた。彼は弓月を捨てて逃げた。 (許さない・・一生呪ってやる・・) だがもう昔のことだ。過ぎたことをいつまで怨んでいて何になるというのだ? 弓月は、天狼の事を許せるような気がした。 |