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Part18.edge 大人達が脱衣所に駆けつけると、そこには泣きわめく子供と、困り果てた弓月がいた。 「おーっぱいーっ!」 「だーかーらー!」 あ然とする大人達。すると1人の女性が弓月の前に進み出た。 喪服を着たその女性は、身重だった。見た限り、9ヶ月らしい。 (この子の母親か・・) 弓月は文句を言おうと、口を開きかけた。 「どうもうちの子が迷惑かけまして、すいません。」 ペコリと弓月は頭を下げた。 弓月は怒りが鎮まった。 「この子は、長い間1人っ子だったんです。でも赤ちゃんができて・・この子はもう荒れて荒れて。何度も堕ろせ、堕ろせって言って。しまいには親子の縁を切るっていうんです。私と主人はもううろたえてうろたえて。それから私は必死にこの子を毎日説得して。母親学級にも無理矢理参加させたりして。でも結局、この子は判ってくれませんでした。だから、あなたを見つけて、わざと困らせたんですね。」 「そういう事だったんですか・・」 女性は続けた。 「1つの命が誕生する瞬間を、この子に見せてあげたいんです。自分がどのようにしてこの世に生を受けたかを、目の前で見せて上げたい。そして生命の大切さを、大人になっても忘れないで欲しいんです。」 弓月はふとかずみの事が頭に浮かんだ。 かずみは本当は、自分の子を産みたかったんじゃないか。俺との間の子を・・。 でも俺には彼女がいて、結局迷惑をかけまいと、彼女は1人重い十字架を背負って苦しんで、結局は死んでしまった。 「俺が殺した・・たった1人の命を・・いや2人分の命を奪った・・。」 弓月は女性にこれまでのいきさつを全て話した。女性や、周りの大人は静かに聞いていた。 女性は弓月の話を聞いた女性は、こういった。 「そう、そんなに苦しんでいたの。でも、あなたはもう1人じゃないわ。もう苦しまないで。肩の力を抜いて。 もう泣かないで。」 そして女性は我が子を引き連れ、去っていった。 弓月は、その女性に何故か母の面影を感じた。 |