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7「願望」 気付くと、あたしはベッドに横たわっていた。 夢……?さっきまでのことは、夢? ぼんやりとした頭で必死に考える。 「リナ!気がついたのか!?」 だ……れ……? 傍で誰かの声がした。顔だけ、そちらに向ける。 重い。体全部が。 金髪の男があたしの手をぎゅっ、と握る。 ぼんやりした頭で浮かんだ名前は一つだった。 「ガウ……リイ…?」 「心配…したんだぞ」 優しい……優しい声。 「ん……。ありがと…」 「泣いてたのか?」 「え?」 「涙の跡がある…」 ガウリイは、あたしの目の端に浮かんでいた雫をそっと払った。 涙。 どうして、あたしは泣いていたんだろう。 あの…レナという子。そんな子、知らないはずなのに。 あの子がいなくなったら、悲しくて、やるせなさだけが残って。 無力な自分が悔しかった。 何もできずに見てるだけの自分が悔しかった。 失いたくなかったのに。 傍にいてほしかったのに。 笑っていてほしかったのに。 失ってしまった── わからない。 考えても、何もわからない。 記憶がないって、嫌なことも忘れられるから良いと想ってた。 でも── 大切な誰か、や大切なこと、も一緒に忘れてしまう。 そう。わかっていた── わかってたはずなのに…。 本当に記憶を取り戻したい、と想った時はあっただろうか。 答えはノー。 一度だって、なかった。口先だけの軽い気持ちだった。 「リナ……?」 「ガウリイ。ゼロス、呼んできて」 「……わかった」 ガウリイは立ち上がり、部屋から出て行った。 弱いままなんて、嫌だ。強く……強くなりたい。 大切な人を守れるような強い人間になりたい。 そのためには。 知らなくてはだめなのだ。 全てを── しばらくして、ドアをノックする音が聞こえた。 「開いてるわよ」 かちゃり。 控えめな音で、ドアは開かれた。 そこに立っているのはゼロス一人だけ。 彼はあたしのベッドの傍にゆったりとした足取りで、近寄りながら問い掛けた。 「リナさん、体の方は大丈夫なんですか?」 「まあね」 「では、僕に用とは何ですか?」 「自分について、知りたいのよ」 「……」 ゼロスはベッドの横にあった椅子に座る。 あたしは上半身だけ起こし、ゼロスをじっと見る。 少し頭が痛かったが、何とか我慢できそうだ。 「あんた、知ってるんでしょ?あたしのこと」 「まぁ……知り合いですから…」 「なら、教えて。あたしの過去に何があったのか、を」 「……教えるのは結構ですけど……ガウリイさんも呼んだ方がいいと思いますよ」 ガウリイも……? やっぱり、あたしとガウリイは知り合いだったってこと? そうなると、ゼロスがガウリイを見て、驚いたのはなぜ?あたしとガウリイが一緒にいることが意外だったから? でも、あたしもガウリイもお互いに前から知っていた感覚を覚えたのは……? 疑問は絶え間なく浮かび、どれも答えを得ることはできなかった。 「どうして?」 「彼にも知っていただくことがありますから」 「ふぅん…。でも、ガウリイにはあたしから話しておくわ」 「──まぁ、いいでしょう。──では、お話します」 ゼロスはあたしをじっと見て、言葉を続ける。 あたしもその目を見つめ返す。 「あなたの失われた過去、を──」 それは、半年前の昼時── 食堂で全メニューを制覇したリナとガウリイは、その街を後にした。 二人は森の中の街道を進む。 途中、野盗と数回出くわし、リナが全て呪文で吹き飛ばしたことがあったことも全ては日常であった。 しかし── このまま、終わるかとみえたその日の午後。 二人は一人の少女と出会った。 少女の名を──レナ、と言った。 |