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2「予知」 「火炎球(ファイアー・ボール)」 ちゅどぉぉぉぉぉんっ! 『う、うわあぁぁっ!』 まとめて、野盗その一、そのニが吹っ飛ぶ。 ─これは……? しかし、それでもまだ、野盗はしつこく女魔道士を追いかける。 女魔道士はまだ十三、四歳くらいである。辺りに人影が見えないので、どうやら一人旅らしいことはわかった。 彼女は両手でズタ袋を抱え、走っていた。 「くそぅ……!早く捕まえろーっ!!」 野盗の親分がシミターを少女に向けて、仲間に向かって叫ぶ。 『おぉっ!!』 何十人ものの野盗たちがあたしに向かって、走って来る。 ─ちょ、ちょっとぉ!……えぇい!こうなったら、魔法で……! あたしはちゃかちゃか呪文を唱える。 野盗たちは勢いをなくさずに、ものすごい勢いで、あたしの後ろにいる少女に向かって走る。 あたしがいることなど、おかまいなしである。 ─火炎球(ファイアー・ボール) 走り寄ってくる野盗たちに目掛けて、魔法を解き放つ。 しかし、術は発動しなかった……。 ─へ?どうして? あたしは両手の手をひらをじぃーっ、と見る。 そうこうしてる間に野盗たちはあたしに走って来る! ─わっ!ちょ、ちょっとぉ!わひゃあ! 思わず、その場に伏せる。 しかし、あたしの身体をすり抜けるように野盗たちは少女に向かって走って行く。 ─……? え? あたしはこの時、はじめて気がついた。 自分の身体が、うっすらと透けていることに。 ─どうして?これは……夢? 「───っ!」 誰かが何かを叫んだ。 金髪碧眼で長身。ロングソードくらいの剣を片手にした男が野盗たちに何かを言っている。 声は聞こえない。今まで聞こえていた野盗たちの声も聞こえなくなっていた。 ─なんか……パントマイムみたいね…… あたしは思わず、そう思った。 野盗との決着はすぐに着き、男は少女を助けた。 少女は男に何かを言うと、その場を立ち去った。その後を、慌てて男が追った。 少女の顔も男の顔も見ることはできなかった。 何となく……少女も男も知ってるような気がした。この夢を見たことがあるような気もした。 既視感……? ──違う。これは──… そこで──ぷっつりとあたしの意識はなくなった。 「殺されたくなかったら、さっさと置いてくもん、置いて行きやがれ!」 はふ……。 あたしは思わず、ため息をついた。 「な、なんだっ!?そのため息はっ!?」 「あきちゃったのよ……いい加減。近道しようと思って、裏道を入ったらぽっこぽこ盗賊が出て来るもんだから… 今日、覚えてる限りであんた達が二組目よ…」 ホントはもっと、出くわしたかも知れないが……そんなのいちいち覚えてられない。 あたしがいっくら潰しても、盗賊ってもんはいなくならないのよね……。一つの謎よね。これも。 「はん!前のやつらに渡しちまったんで、持ってねぇとでもぬかすのかっ!?」 おひおひ……。 お宝を貰ったのはこっちなんだけど……。 「やっちまえ!」 『おぉ!』 一気に盗賊どもが押し寄せてくる。 あたしはつとめて冷静に呪文を唱え── すこーんっ! 盗賊の一人に何かが当たった。 「へ?」 「一人の女性相手に大勢で斬りかかるなんておだやかじゃないな…」 金髪碧眼で美形。長身。年の頃、二十代前半から半ば。 ロングソードを片手に彼は言った。 「て、てめぇ!一体、何者だっ!?」 「お前らに名乗る名などない!」 「野郎ども!こいつも一緒にやっちまえ!」 『おう!』 かくて、通りすがりの男と盗賊たちの戦いは始まった。 あたしはその頃、実際……いるもんだなぁ、と場違いな考えごとをしていた。 しかし……なんだか前にもこんなことがあったような……? ずきんっ。 ダメだ……。頭が痛くて思い出せない。 でも……思い違いではないはずだ。 ──そうだ。前にもこんな風に助けられたことがあった。 あたしの考えがまとまった頃には、男が一人立っているだけで、盗賊たちは地に伏せていた。 「大丈夫か?」 「ありがとうございますぅvおかげで助かりました」 あたしはにこにこ笑って、男に言った。 んん?なんだか……この人、見たことあるような、ないような。 「あ。……いや」 男の方もじぃーっ、とあたしの顔を見る。 「あの……何か?」 「いや……。なんだか、お嬢ちゃんの顔を見たことがあるような気がして…。お嬢ちゃん、名前は?」 むこうもあたしのことを知ってる……? その前にお嬢ちゃんはやめて……。あたしはそんなに子供じゃないわよ。 「……わかりません」 「は?」 「記憶喪失なんです。あたし」 「なんだ……。お嬢ちゃんもか」 あっけらかんと男は答えた。 この兄ちゃん。実は、結構ボケてたりしない……? 「実は、俺もなんだよ」 男は笑って、言った。 おひ……。それって、全然笑いごとじゃないだろ……。 やっぱし、この兄ちゃん。ボケはいってる……。 「はぁ……。そうなんですか?」 「名前はわかったんだが……」 困ったような笑いを浮かべて、兄ちゃんは言った。 「名前は?あたしは多分、リナよ」 「俺はガウリイ。旅の傭兵だ。ところで、リナはどこに行くつもりなんだ?」 あ……。 なつかしい感じがする。前にもこうやって呼ばれてた気がする。 もしかして……この人ってあたしの知ってる人なのかな?向こうもあたしのことを知ってるっぽいし。 「リナ?どうした?」 「あ。いや……なんでもない」 「……やっぱ、俺……リナのことを知ってるような気がするんだが……リナはどうだ?」 「実は、あたしも……」 この半年間。あたしは自分について知ってる人には会わなかった。 しかし、この人はあたしのことを知っているような気がする、と言っている。 もしかしたら、この人が何かを思い出せば、あたしは自分のことを知ることができるかもしれない。 逆を言えば、あたしが何かを思い出せば、彼のは自分について知ることができるかもしれない。 をぉっ!なんってお得なのかしらv それに、いきなり初対面で会ったにも関わらず、あたしは彼の名前をフツーに言っている。 さっきまで、敬語でいた方がなんだか変な感じがした。こうやって話してるほうがしっくりとくる。 あたしは確信した。あたしたちはお互いを知っていることを。 「ねぇ……一緒に旅しない?」 「え?」 「だって、あたしもガウリイも記憶喪失でお互いを知ってるかもしれないのよ?ちょうどイイと思わない?」 「……それもそうだな。よろしく、リナ」 「よろしくね、ガウリイ」 あたしは彼と握手をした。 |