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リナが泣いている。 声を出さず。 ただ。泣いている。 半魔族の、赤だ青だか分からない色の血に手を染めて、 体を染めて、リナが泣いている。 恐いのだ。 慣れる事が。 意味のない殺戮ではない。 けれど、普段、足元を通る蟻にも足を上げて除けるリナにとって どういう理由であれ、無造作に命を奪う事は、 拷問にも等しい事を、俺は前から気付いていた。 弱い物には、とことん優しいリナ。 強い物にだって、大きな心で、問いかける強さを持つリナ。 心が悲鳴を上げている。 サイラーグの一件が、終わってから、 目に見えてリナは、心を細らせていた。その姿そのままに 心が傾いでいた。 「ゼフィーリアに行こう。」 その姿を支え続けたくて、 俺が言った一言に、リナは真っ赤になった。 照れ隠しに飛んでくるスリッパも、罵詈雑言も、 リナが元気になるならそれだけで嬉しかった。 けれど、状況は許してくれない。 ゼフィーリアに向う途中にも、 騒動はいつだって、いくつだって起きた。 魔族は、手を変え品を変え、事変をおこす。 それに、いつだって、まきこまれた。 挙句が、このざまだ。 リナが、泣いている。 細い肩を振わせたくなくて、俺はそっと抱き締める。 抱き締めて、もっと泣かせてしまった。 振える白い手を取ると、俺は歩き始めた。 ただ、前を向いて。 ずんずんと歩いた。 勢いに涙も引っ込んだのか、 リナが怪訝そうな顔をして俺を見上げる。 ウインクをひとつ送ると、とたんに染まる愛らしい顔。 リナが辛くない速度で、俺は歩き続けた。 しばらく行くと、足元に秋の花を見つけた。 一輪手折って、リナに差し出すと、とたんにほころぶ顔。 「でもね、ガウリイ。もう、だめよ。 一輪で、充分。ありがとう。」 近くの小川で、俺達は染み付いて落ちない穢れを落した。 リナは、何処からか細い木切れを拾ってくると それを器用に彫って、一輪挿しを作った。 もう、野宿をする季節も終わろうとしている。 焚き火の傍に、二人寄り添って、まどろむ。 火から少し遠ざけた秋の花が、 月の灯りを浴びて、別の美しさを見せている。 そうか。 俺はリナの小さい顔を、そっと両手で挟むと、 臆せず見つめ返す瞳を楽しんだ。 「だから、お前は綺麗なんだな。リナ。」 照れて怒ったリナのスリッパが炸裂する前に、 俺はしっかり抱き締めた。 お前はそこにそのままいるから美しいのだと、 最後まで言いたかったが、 もっと暴れそうな気がしたので俺は、ただ、笑った。 早く、ゼフィーリアに着きたいと、 心から、思った。 |