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千鶴子と業平のいじめは、日に日に激しくなった。 千寿丸はその度に阿じゃ梨様の遺影を抱いて、頭から布団を被って大声で泣いた。 (諸兄様に会いたい。諸兄様と暮らしたい。) 千寿丸は荷物をまとめ、家の者が寝静まっている真夜中に、家を抜け出した。 諸兄のマンションの前に、トランクと旅行鞄を手に待っていた。 今夜は残業となるから、帰宅は遅いだろうーだが帰っているかもしれない。 震える手で、千寿丸は諸兄の部屋のチャイムを押した。 「はい?」 諸兄の声が、インターフォン越しに聞こえた。 「諸兄様、千寿です。」 諸兄はマンションのドアを開けた。 「千寿、なぜ?」 諸兄は荷物を抱えている千寿丸を部屋に入れ、何故戻ってきたのかを千寿丸に言った。 千寿丸はポツリポツリと語り始めた。千鶴子と業平に暴力を振るわれていること。 そして、自分はあの家に居場所がないということ。 「そうか・・辛かったのだな。」 諸兄は千寿丸の話を聞き終えると、涙を流しながら千寿丸を抱き寄せた。 「またここで暮らせばいい。いままでと同じように。」 千寿丸は諸兄の胸に抱かれながら目を閉じた。 (この人の傍にいたい。) 「疲れただろう、ゆっくり眠れ。」 諸兄の優しい声が、子守唄のように聞こえた。 いじめに耐えかね、諸兄の元へと帰る千寿丸。 千寿丸と一緒に暮らすことを決意した諸兄。 でも千鶴子が黙っちゃいませんね。 |