紅い華

第43章:家出


作:千菊丸さん
 千鶴子と業平のいじめは、日に日に激しくなった。
 千寿丸はその度に阿じゃ梨様の遺影を抱いて、頭から布団を被って大声で泣いた。
(諸兄様に会いたい。諸兄様と暮らしたい。)
 千寿丸は荷物をまとめ、家の者が寝静まっている真夜中に、家を抜け出した。
 諸兄のマンションの前に、トランクと旅行鞄を手に待っていた。
 今夜は残業となるから、帰宅は遅いだろうーだが帰っているかもしれない。
 震える手で、千寿丸は諸兄の部屋のチャイムを押した。
「はい?」
 諸兄の声が、インターフォン越しに聞こえた。
「諸兄様、千寿です。」
 諸兄はマンションのドアを開けた。
「千寿、なぜ?」
 諸兄は荷物を抱えている千寿丸を部屋に入れ、何故戻ってきたのかを千寿丸に言った。
 千寿丸はポツリポツリと語り始めた。千鶴子と業平に暴力を振るわれていること。
 そして、自分はあの家に居場所がないということ。
「そうか・・辛かったのだな。」
 諸兄は千寿丸の話を聞き終えると、涙を流しながら千寿丸を抱き寄せた。
「またここで暮らせばいい。いままでと同じように。」
 千寿丸は諸兄の胸に抱かれながら目を閉じた。
(この人の傍にいたい。)
「疲れただろう、ゆっくり眠れ。」
 諸兄の優しい声が、子守唄のように聞こえた。







いじめに耐えかね、諸兄の元へと帰る千寿丸。
千寿丸と一緒に暮らすことを決意した諸兄。
でも千鶴子が黙っちゃいませんね。


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