紅い華

第4章:人情


作:千菊丸さん
「大丈夫か?」
 諸兄は、千寿丸の手を取って言った。
「ええ、大丈夫です。」
 千寿丸は頬を紅く染めながら言った。
「千寿、知り合いなのかい!」
 養母が険しい表情で諸兄と千寿丸を見ていた。
 千寿丸は自分の手を諸兄の手から離した。
「では、仕事がありますので。」
「お前、名前は?」
「千寿丸です。」
 千寿丸はそう言うと、食堂「山猫」の裏口へと走っていった。
「千寿丸、か・・」
 諸兄は住民の怒号で騒然としている商店街を後にした。
 社に向かうベンツの中で、諸兄は千寿丸のことばかり考えていた。
「・・・え様・・諸兄様!」
 諸兄は秘書の声でハッと我に返った。
 千寿丸のことばかり考えていたので、上の空だったのだ。
「今晩8時からは藤岡総統の就任パーティーがございます。場所はマリオットホテルのスカイノーツでございます。」
「藤岡様に出席の旨を伝えてくれ。」
(千寿・・お前は今、何してる?)


 諸兄が千寿丸のことを想っている頃、千寿丸は養父母から激しく詰問されていた。
「お前、あの若様の知り合いなのかい?千寿丸、ちゃんと答えな!!」
「いえ、彼とは昨日会ったばかりで・・」
「じゃあ若様がなんでお前に対してあんなに優しいのさ?もしかしてお前、若様に取り入ったんじゃないかい?」
「そんな、違います。」
「嘘をつくんじゃないよ!」
 興奮した養母は千寿丸を箒で激しく叩いた。
「お前、うちの店を潰すつもりだろ。家に世話になっているくせに・・この疫病神が!」
「全く、とんでもない野郎だ!この薄汚いガキ!!」
 酒が入った養父は養母を止めるどころか、折檻に加わる。
 千寿丸の髪をひっつかみ、窓へと投げ飛ばした。


 ガッシャァァーンッ!!


 窓ガラスが大きな音を立てて割れ、千寿丸は頭に大きな切り傷を負った。
 養父母は千寿丸の怪我などお構いなしに折檻を続ける。
 両親が千寿丸に折檻を加えているのを尻目に2人の子どもたちは平然と食事をしていた。


 千寿丸は頭から流れてくる血を手で強く押さえながら数学の宿題をやっていた。


 こんな家、いつか出ていくんだ。
 なんとしてでもあの高校に合格するんだ・・。


 頭が鉛のように重い。
 千寿丸は傷口を押さえながら布団から這い出て、制服に着替えた。
 リュックを背負いながら、食堂の裏口を出た。
 学校に行く途中、頭がフラフラして、気分が悪い。
 商店街を出る前に、千寿丸は倒れた。



 諸兄はまた今日も商店街の視察に行った。
 住民の人々の視線は棘がある。
 諸兄は居たたまれなかったが、進められたプロジェクトはもう止まることが出来ない。
 諸兄は庶民的な商店街が好きだが、一族の長・道長はなぜだかわからないが、商店街を忌み嫌っていた。
「庶民の臭いがする商店街など、リゾートには相応しゅうないわ。」
 諸兄はこの商店街を守りたいと思っているのだが、御曹司と言えど藤原一族で一番弱い立場にいる諸兄の意見などが道長に通るはずがない。
(なんとかならないものか・・)
 諸兄が商店街を残す方法を考えていると、魚屋の脇のゴミ箱に黒いものが見えた。
 諸兄が近づいていくと、その黒いものは中学校の制服のズボンだった。
 半透明の大きなゴミ袋をどかすと、少年が倒れていることがわかった。
 頭には大きな切り傷があって、顔が真っ青だ。
 よく見ると、その少年は食堂「山猫」で働いている、千寿丸ではないか。
「おい、大丈夫か?おい、しっかりしろ!」
 諸兄が千寿丸の頬を叩いても千寿丸は全く動かない。
「一体どうしたんだ?何騒いでやがる?」
 外の騒ぎに気づいた魚屋の主人が表に出てきた。
「すぐに救急車を!人が死にそうなんだ!」
 すぐさま千寿丸は病院に運ばれ、一命を取り留めた。


「全く、ひでぇ傷だ。これじゃあ一生残るな。松浦さんも酷でぇことしやがる。」
 魚屋の主人が薬で眠っている千寿丸の頬を優しく撫でながら言った。
「松浦?あの食堂を営んでいる夫婦ですか?」
 諸兄は昨日の「山猫」の女将の自分に向けられた鋭い視線を思い出した。
 魚屋の主人がぽつりぽつりと語った。
「ああ、松浦さんとこぁ、俺の親父の代から食堂をやっててな。千寿丸が俺らの商店街に来たのは7年前だ。なんでも前の里親が死んで、松浦の野郎が引き取ったってな。」
 魚屋の主人はそう言うと、茶をすすった。
「松浦は、千寿が来るなりあの子を食堂でこき使った。やっこさんは家族と豪遊三昧、かみさんはいっつも着飾って、2人の餓鬼共はピアノだヴァイオリンだとお稽古で、いっつも綺麗なべべ着てよ・・それに比べて千寿は可哀想に、いっつも汚れた松浦の餓鬼の着古しのボロ着て、体中痣だらけでよう・・俺ぁ、千寿を引き取ってやろうと思ったぜ。」
 諸兄はすうすうと寝息を立てている千寿丸の穏やかな寝顔を見た。
 こんなに安心しきって眠っている千寿丸には、辛い過去があったのだ。
 いつも養父母や義理の姉弟にいじめられ、食堂でこき使われる日々。
 千寿丸には心から安らげる居場所はどこにもなかったのだ。
 諸兄は次第にこの少年が不憫に思えてきた。
「この頭の傷も、松浦の野郎にやられたんだろう。俺の堪忍袋の緒が切れるのは時間の問題だ。千寿に酷でぇことしやがって。もう我慢ならねぇ!千寿は俺が引き取る。鬼の棲み家から救い出してやる。」
 諸兄は、魚屋の主人にいたく感銘した。
(この人は、なんて心の広い方だろう。)
「ご主人、私からも一言申し上げたいのですが、私がこの子の面倒を見るというのはどうでしょうか?」
「そうか。それはありがてぇ。でもその前に、あいつらと話をつけねぇと。」
「ええ。」
 諸兄は病室の窓の外を見た。
 透き通った、夏の青空が広がっていた。
(千寿、お前をあの鬼の棲み家から救ってみせる。)








意味不明な文を書いてしまった。
養父母に激しく折檻された千寿丸を引き取ることを決めた諸兄。
魚屋の主人は千寿丸の味方です。
きっと幼い頃から養父母に虐げられている千寿丸を哀れに思ったのでしょう。
諸兄も魚屋のご主人の話を聞いて、千寿丸を引き取ることを決意した・・ということで。
文章書くのって労力がいりますね。
頭では考えているのに、いざ文章にする時にはどう表現したらよいのかわからない。
奥が深いのですね、小説って。

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