紅い華

第39章:千鶴子の本心


作:千菊丸さん
 諸兄は、昼休みに業平を喫茶店に呼び出した。
「お前は・・千寿を傷つけた。」
 低く押し殺した声で、諸兄は言った。
「それがどうした。俺は千寿に会った時から千寿のことが好きだった。だがお前に千寿を取られた。」
「それで・・」
 諸兄の声が一段と低くなる。拳がパキパキと鳴っている。
「それで千寿をあんな風にしたのか?お前、知らないだろう?千寿は夜中に泣き叫んだのを!」
 そう言うと、諸兄は業平を殴って店を出た。
 諸兄は業平を許せなかった。
 昨日、刃物を振り回し、半狂乱になっていた千寿丸。
 彼をあんな風にしたのは業平だ。
 絶対に、業平を許さない。

 翌日、在原邸で、千鶴子のパリ1号店の開店記念パーティーが行われた。
 諸兄と千寿丸は弔事があって出席しないと告げたのだが、千鶴子が一方的に2人の出席を決めてしまった。
「あら諸兄さん、久しぶりね。会いたかったわ。」
 真っ赤なドレスに身を包んだ千鶴子はそう言うと、笑った。
 千鶴子はあの女が産み落とした不義の子を、観察した。
(何から何まであの女そっくり・・)
「千寿丸君ね?業平から話は聞いてるわ。阿じゃ梨様、お気の毒でしたわね。」
「はい・・」
 上辺だけの千鶴子の弔辞に、千寿丸は唇を噛んで答えた。
「まあ千鶴子さん、この可愛い坊ちゃんはどなたなの?」
 招待客の1人が千寿丸に気づいた。
 千鶴子は千寿丸の腕を引っ張り、中央のステージに立った。
「みなさん、紹介しますわ。来月から私の息子となる、千寿丸君です。」
 周囲がざわめいた。
「なんだって?!そんな話は全く・・」
「今思いついたのよ、諸兄さん。」
 千鶴子は諸兄を一瞥して言った。そしてマイクを握って、招待客の方に向き直った。
「この子は、わたくしの主人が若い頃に初恋の人との間に出来た子ですの。この子のお母様はガンで亡くなって、その上親代わりの方も亡くなられましたの。頼りになる身内といったら主人だけ・・そこでわたくし、この子を正式に在原家の子にしたいんですの。主人もきっと喜ぶと思いますわ。」
 何も知らない招待客は拍手した。
 千鶴子の傍で業平が意味深長な笑みを浮かべていた。
 パーティーが終わり、諸兄は千鶴子に詰め寄った。
「どういうことです!全く聞いてないですよ!」
 フン、と千鶴子は鼻で笑って言った。
「あたしがとっさに思いついたことさ。千寿丸はあたしがいただくわ。諸兄さん、あなたは千寿に夜遅くまでマンションで寂しい思いをさせようというの?それじゃあ千寿が可哀想だわ。千寿には温かい家庭が必要なのよ。優しい両親と、弟を愛する兄がいる家庭がね。」
 そう言うと千鶴子はさっさと邸の中へと入っていった。
「母上、本気なのですか?千寿丸を養子に・・」
「本気に決まってるじゃないか。千寿を諸兄と引き離すためなら、千寿がお父様の子ですと白状して、家で引き取るほかないだろう?」








千鶴子さん、とうとうおっぱじめましたね。
諸兄と千寿丸を引き離すため、千鶴子は千寿丸を養子に。
次回、諸兄と千寿丸の悲しい別れ・・。


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