紅い華

第36章:涙そうそう


作:千菊丸さん
 レイプ事件から一週間、千寿丸は精神的に深い傷を未だに負っており、夜中になると泣き叫んだ。
「いやぁー、やめて!お願い、やめてぇー!」
 諸兄は仕事で忙しいのにもかかわらず、一週間も千寿丸に付き添っていた。千寿丸が夜中に泣き叫ぶと、泣きやむまで抱いていた。だが、千寿丸は諸兄の腕を引っ掻いたりして暴れた。千寿丸は、事件の影響で極端に体を触れられることを嫌がった。
「放せ!放せよ!」
 すっかり変わってしまった千寿丸を抱きながら、諸兄は声を押し殺して泣いた。
 阿じゃ梨様も、傷ついた千寿丸の姿を見て、涙ぐんでいた。
 我が子同然に愛情を注いだ千寿丸が深く傷ついている姿を、かわってやりたいと思った。
 阿じゃ梨様は、千寿丸が早く元気になってくれるようにと、寺に朝早くから夜遅くまで詣でた。
 千寿丸は、阿じゃ梨様の姿を見ると、心が安らぐようで、時折微笑んでいた。徐々に回復していった。
(儂がこの子を一生守る)
 阿じゃ梨様は千寿丸の寝顔を見ながら心に誓った。

 ある日、阿じゃ梨様は体調の異変に気づいた。
 最近、息苦しくなる。
 病院で診察を受けると、持病の心臓病が悪化していることがわかった。
 如意輪園の運営などで忙しい日々を送り、無理をしていたせいだ。
 だが阿じゃ梨様は、千寿丸に持病の悪化を言わなかった。
 千寿丸は全快し退院し、諸兄と阿じゃ梨様と一緒にピクニックに行った。千寿丸は朝早くに起きて、阿じゃ梨様の大好物の海苔巻きを作った。
「お前ももう大きゅうなったな。膝の上に乗せて絵本を読んでやったのが昨日のことのようじゃ。」
 阿じゃ梨様は優しく微笑みながら千寿丸の頭を撫でた。
 諸兄のマンションに戻り、一緒に団らんの時を過ごした。
 その時、阿じゃ梨様が胸を押さえて床に蹲った。
「阿じゃ梨様!」
 阿じゃ梨様は救急車で病院に運ばれた。
「心臓がかなり弱っています。もう長くてもあと1週間の命でしょう。」
「そんな・・」
 千寿丸はショックを受けた。
 病室のベッドで、阿じゃ梨様は千寿丸に優しく微笑んだ。
「阿じゃ梨様、どうして教えてくれなかったんですか?どうして・・」
「お前を心配させたくなかったんじゃ。」
「ごめんなさい、心配かけて、ごめんなさい。」
「いいんじゃよ、お前は儂の子じゃ。謝らなくてもいいんじゃ・・」
 千寿丸は毎日、阿じゃ梨様のお見舞いに行った。阿じゃ梨様は千寿丸が来ると、いつも優しく微笑んでくれた。
 阿じゃ梨様はその後回復し、自宅療養できるようになった。
 千寿丸は、阿じゃ梨様と暮らすことでレイプ事件で傷ついた心が、次第に癒されていった。

 別れは突然、訪れた。
 阿じゃ梨様は、アルバムを取り出し、幼い頃の千寿丸の写真を撫でた。
 その時、胸に激痛が走った。
 阿じゃ梨様は、床に蹲った。
(千寿、千寿・・)
「阿じゃ梨様!」
「千寿、お前はどんな困難も乗り越えてゆける・・・儂はそう・・信じてる。」
 阿じゃ梨様は病院に運ばれたが、その日のうちに息を引き取った。








阿じゃ梨様、お亡くなりになる。
ホントチョイ役扱いで、申し訳ございません。阿じゃ梨様ファンの方、本当に申し訳ございません。
レイプ事件の傷から癒えた千寿丸。しかし永遠の別れが・・
阿じゃ梨様との突然の別れに、千寿丸の悲しみは深く・・。
明日から試験です・・頑張ります。

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