紅い華

第34章:欲望


作:千菊丸さん
 業平は人気のないオフィスで企画書を仕上げていた。
 昼に諸兄と交わした会話が、頭からこびりついて離れない。
あれから2日経つが、諸兄から何の連絡もない。
(もうあいつとは終わったのか。)
 諸兄とは物心ついてからの親友だった。
 親友がいない辛さが、今になって身にしみてきたが、覆水盆に返らずだ。
 企画書を完成させ、夜10時に帰宅した。
 玄関に入ると、母が不機嫌な顔をして腰に手をあてて立っていた。
「業平さん、こんな時間までどこいってらしたの。今夜はあなたの好きなクラムチャウダーを作ってさしあげていたのに。」
 高岳の妻・千鶴子(ちずこ)は、今年で65歳だ。悋気が強く、父の初恋の人・美岬を殺そうとしたことがある。権力に対する執着もすざまじく、在原家の繁栄のためならどんなにあくどいことでもする。
「それじゃあいただきます。」
 千鶴子は元華族の出身で、結婚前は有名なファッションデザイナーとして活躍していた。だが業平を妊娠してから仕事はやめ、高岳と結婚したのだ。千鶴子は業平を目の上のたんこぶのように扱った。
 仕事一筋だった千鶴子は、専業主婦として生きることを最もいやがった。
 高岳が家庭を顧みなくなると、仕事を再開し、現在彼女が手がけるブランドはパリコレで高い評価を得ている。
「明日から私、パリに行って来るわ。ブティックの開店準備があってね。」
 千鶴子は葉巻を吸って言った。
「私向こうで暮らそうと思うのよ。お父様との仲はもう終わったし。それに、この家での私の役目はもう終わったしね。」
 そう言うと彼女は寝室へと上がった。

 翌朝、朝食の席で高岳は千寿丸のことを千鶴子に話した。
「あの女は死んでも私を苦しめるのね。」
 そう言い捨てて、彼女はパリへと向かった。

 諸兄と業平との関係は昼の一件以来、ギクシャクしていた。社内であっても目線を合わさず、挨拶もしない。
 少年時代からの2人の関係はもう終わった。

 業平は聖光学院に足を運んだ。
 千寿丸を学院内のカフェに呼び出し、昨夜の一件を詫びた。
 そして業平は千寿丸とドライブに出かけ、ホテルに泊まった。
「もうそろそろ帰りませんと。諸兄様が心配しますから。」
「そうか。」
 そう言うと業平は千寿丸を押し倒した。







業平さんが壊れてしまった。
業平の母・千鶴子さんが登場。悪役キャラです。拓尊とまともに勝負できそうな人です。諸兄さんと千寿丸の人生を狂わせるのも、この人です。
色々な意味でキーパーソンとなる人です。
イメージとしては、夏木マリさんです。
阿じゃ梨様を全然出していません・・彼もキーパーソンなのに・・次回からはドンドン出していきますので。


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