紅い華

第33章:亀裂


作:千菊丸さん
 諸兄は会議室に入る前に、業平と話をした。
「昨夜、千寿が俺に泣きながら帰ってきた。お前が、疫病神と罵ったと。」
「そうか。」
 業平はポーカーフェイスで言った。
「何故そんなひどいことを言った?」
「あいつと俺は腹違いの兄弟なんだ。千寿の母親は・・父の初恋の人だ。」
「知っている。阿じゃ梨様から聞いた。」
「そうか、ならいい。」
 そう言うと、業平は会議室へと入っていった。
 昼休み、イタリアンレストランで、業平は諸兄に胸の内を語った。
「俺は父を憎んでいた。家庭を顧みず、仕事とあの女のことばかりを気にかけている父が・・。」
「高岳さまはお前のことを随分と気にかけている。」
「それは最近のことだろう。彼にとって私は大事な『跡継ぎ』だからな。」
「いいや、昔も今もだ。」
「何も知らないくせに・・わかったようなことを言うな!!」
 業平は拳でテーブルを強く叩いた。
 客が驚いて諸兄達のテーブルを振り返った。
「あの女のせいで・・家の中はギスギスして、冷たかった。母は父の浮気を知ると、人が変わってしまった。以前は優しくて明るかったのに・・。やがて父はあの女の元に入り浸った。母は堪った苛立ちを俺にぶつけた。暴力は虐待へとエスカレートした。俺が虐待されいる間、父はあの女とベッドで楽しんでいたんだ。」
 諸兄は目を丸くした。
「千寿が、父と共に家の玄関に現れ、父が・・千寿が父とあの女との息子だと聞いたとき・・俺は父に対する激しい憎しみと、虐待された記憶が走馬燈のように頭の中を巡った・・」
「お前は千寿を憎んでいるのか?」
「いや、俺は・・千寿を愛している。」
「俺もだ。」
「もうお前とは、これまでだな。」
「残念だな、幼い頃からの友を亡くすとはな。」
「では俺は片付なければならない仕事があるのでな。」
 業平が店を出ていったあと、諸兄は食事を終えても席から動けなかった。








千寿丸を巡って、諸兄と業平との関係にヒビが・・。
次回、ドロドロの愛憎劇が幕を開けます。
業平さんのお母様が登場します。


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